ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

リンチに加わるのか

2020-11-19 08:29:03 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「責任の取り方」11月13日
 『「不倫をリンチ」の世に一石』という見出しの記事が掲載されました。『共に衆院議員だった夫の宮崎健介さん(39)の不倫騒動を振り返った著書「許す力」(集英社)を出したコメンテーターの金子恵美さん(42)』へのインタビューを中心に構成された記事です。
 記事の中で金子氏は、『不倫は家族と相手方の問題で、第三者が介入すべきではないと考えます。でも、現実的には不倫が明るみに出た人は犯罪者のような扱いを受けている』と述べ、ています。考えさせられる指摘です。つまり、社会的に責任載るのある立場(?)にあるものは、清く正しく生きる責任があるという考え方は正しいのかという問題です。
 私は以前このブログで、クラブでバイトをしていた女性がそのことを理由にアナウンサーの内定を取り消されそうになった問題を取り上げ、教員の場合はどうなのかと問題提起をしました。その職に求められる清廉性という言葉が使われていましたが、今回の記事でも、東大教授瀬地山角氏がこの問題を取り上げ、『職業差別の一種』と指摘なされています。当時の私はそこまでの言及はしていなかったのですが、今回、改めてこの問題について考えたいと思います。
 私は教委勤務時代に、数多くの教員の「不倫」に遭遇してきました。校長とPTA役員が泊りがけの旅行に行って一時行方不明になったこと、女性教員が同じ学校の事務職員と男女の仲になり離島に異動になったこと、管理職が同時に2人の部下の教員と不倫をしていたこと、共に配偶者のいる男女の教員が双方が異動した後も5年間以上も関係を続けていたこと、全て書けばまだ数ページが必要になります。
 一方で私は、教員の不祥事による処分に関わる仕事をしていた時期もありました。そこでは、体罰、わいせつ行為、公金横領、交通事故など多くの「非行」の処分や研修に関与しましたが、「不倫」は1件もありませんでした。つまり、「不倫」は、公になることはなく、金子氏の指摘通り「家族と相手方の問題」止まりだったということです。しかしそれから10年以上の年月が経ちました。今はどうなのでしょうか。
 昔も、異性関係について「噂」が流されるということはありました。不倫などではなく、婚約中の女性教員が相手を自分のアパートに入れた、というようなことも、保護者の間で話題になり、校長が注意したというようなケースがあったのです。中には、田舎から出てきた弟と歩いていただけで、あまり好意的でない「噂」を立てられた女性教員もいました。でもそうしたケースは稀でした。「噂」を拡散する手立てが乏しかったからです。
 しかし今は、誰でもSNSを使い、「噂」の拡散が簡単に、しかも匿名でできるようになっています。その破壊力は格段に強くなっているのです。もし、ある教員について、不倫現場の写真が拡散されたとしたら、校長は、教委はどのように対応すべきなのか、少なくとも都道府県教委レベルでは統一見解をまとめ、区市町村教委や校長に周知しておくようにすべきです。
 教職に求められる「清廉性」、プライバシー保護という人権上の配慮、そして金子氏が語るように『今の社会はあらゆる事象に対して不寛容。失敗を許さない社会でいいのでしょうか』という問いかけに寛容の精神を訴える教育の場としてどう応えるかという視点、公務員として求められる信用失墜行為の禁止との兼ね合い、整理すべきことはたくさんあります。個人的には、教委が不倫リンチに加わることは避けるべきだと考えますが、どうでしょうか。

 

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