「訴えがあったら」4月22日
『香害 私だけ…じゃない』という見出しの記事が掲載されました。『柔軟剤などに含まれる化学物質由来の人工香料が原因で体調を崩す「香害」の対策が遅れている』ことを伝える記事です。
記事では、『近隣住民の洗濯物の香りが気になり、頭痛や倦怠感に悩まされるようになった』38歳女性、『外出や買い物もままならない。「香害を訴えても『あなたが敏感なだけ』と言われる」』66歳女性、などの事例が紹介されていました。
さらに、「香害をなくす連絡会」が国に規制を要望するも、『国は「現時点ではメカニズムに未解明な部分が多い」として規制には慎重』、企業も『製品配合成分については世界から広く安全性に関わる情報を収集し、安全性の確認を行っている』と自主規制等の動きはないことも報じられています。
さて、もしあなたが教員で、教え子から「みんなの持ち物からする柔軟剤に臭いがきつくて、気分が悪い。頭痛や吐き気がするときもあって、学校に来るのが大変。何とかしてください」と言われたら、どのように対処しますか。この記事を読んで、私の頭の中に浮かんだのは、このような問いでした。
記事の中には、『香りの強さの感じ方は個人差が大きい』『柔軟剤などの香りは好む人も多く、使用を控えるように頼んでも理解が得にくい』という状況も紹介されています。つまり、教員であるあなたが、「○○さんは、柔軟剤の臭いで体調を崩しているから、家出柔軟剤を使わないようにしてください」と言っても、反発を受ける可能性が高いのです。それどころか、「柔軟剤と健康被害の関係は科学的に証明されていないのに」と、根拠のない主張をしている、一方的に○○産の言い分を正しいとしている依怙贔屓だ、などとあなた自身が批判の対象にされてしまうかもしれないのです。
さらに、事が大きくなれば、不当な営業妨害だとして、企業から訴えられたり、校長や教委からも、政府の見解が明らかになっていないことで独断で行動し学校への信頼を損なった、などと攻められる可能性も否定しきれないのです。
だからと言って、○○さんの訴えを放置し、「気にするな」となだめてみたり、「マスクをしてきたらどうか」などと悪いのは過敏すぎる○○さんというような態度をとれば、絶望した○○さんは、不登校に陥ったり、学級内で「おかしな言いがかりをつける子」としていじめの対象にされたりするかもしれないのです。
困りますね。正直、私にも「正解」は分かりません。ただ、いくつかできることとしては、まず自分自身が「香害」についてきちんと学び、保護者や子供に説明できるようにすること、校長や(校長を通して)教委に苦しんでいる子供がいる現状をきちんと伝えること、日本消費者連盟などの機関で「香害」問題に対応している担当者や被害者の会などの方を講師に呼び校内で研修会を開くよう動くことなどに取り組む、などが挙げられると思います。こうした行動をとることで、○○さんの孤立と疎外感を防ぎ、精神的な面での支援に繋がると思うからです。
それにしても難しい問題です。