「何法の何条に」9月24日
高井瞳記者による『違う「理由」を知る』という表題のコラムが掲載されました。その中で高井氏は、日本語初期支援校を取材したときに耳にした『ブラジル人は雨が降ると学校を休む』というエピソードについて触れています。
『生徒が休む度に家に電話をして理由を聞いた。すると、ある保護者が「ブラジルでは一定程度出席すればいい」と教えてくれた。サボっているのではなく、日本の学校のルールを知らなかったのだ』と言うのです。私が気になったのはこの「日本の学校のルール」という表現でした。
日本の学校には、出席についてどのようなルールがあるのでしょうか。『日本では理由なく休んではいけない』と教員は説明したそうですが。私が不勉強なだけかもしれませんが、「理由なく休んではいけない」というルールを目にしたことも耳にしたこともありません。関係のありそうな法規といえば、就学義務に関することが考えられますが、それはあくまでも義務教育書学校に子供を就学させることを保護者に課すという規定であり、しかも就学=出席ではありません。
また、細かいことに拘るようですが、「休んではいけない」という表現は、子供を念頭にされた表現です。保護者を対象にしたのであれば「休ませてはいけない」となるはずですから。そして、子供に関しては、法規上、就学や出席について一切の義務はありません。
さらに、「理由なく」という表現がなされていますが、「理由」について定めた規程等ももありません。「雨が降ったから」という理由が認められず、「咳が出るから」という理由が認められるという根拠はどこにもないのです。
要するに、「理由なく学校を休んではいけない」というのはルールではなく、何となく多くの人が思い込んでいることであるというにすぎないのです。しかも、実際には崩壊しています。小中学生の芸能人が撮影のために休んだり、スポーツの全国大会や国際大会で休んだりしても、誰も問題にしません。そんな特殊事例でなくても、小学校6年生の子供が、中学受験を控え、1月の後半学校を休み風邪を引くのを防ぐなどという行動も珍しくありません。
学校での人間関係の悩んで休むという行為は、いじめ問題が深刻化し自殺に至る悲劇を防ぐという趣旨において言えば、むしろ推奨されているといってもよい状況です。例えその状況が子供の過剰な思い込みや誤解に基づいているとしても、です。
高井氏のコラムは、ブラジルと日本両国の文化や慣習、考え方の違いを相互理解で乗り越えていこうという趣旨で展開していきますが、その前に我が国の学校にまつわるルールなるものの実態について、今日的な意味について考えてみることも意味があると思います。