まっしゅ★たわごと

街歩き、建築、音楽、フランス、それに写真の話題を少々

ゴリモンさんたちと名古屋へ【3】~ロボットミュージアムへ行く~

2007年06月30日 23時18分54秒 | おすすめ

スパイラルタワーズ・ミッドランドスクエアの見学を終えた我々は一路、栄にあるロボットミュージアムへと向かう。何故、ロボットミュージアムなのかと言えば、発起人のゴリモン氏たっての企画で「セグウェイの試乗が出来るから」ということであったが、実は、ここのミュージアムの館長さんとゴリモン氏が知人であるというのである。

 

 

入口にあるニコちゃんの模型を見て「もしや、子供向けの施設?」と危惧したが、そんな不安も館長氏の真摯な表情と情熱的な解説により、一蹴されてしまった。いやいや、無茶苦茶オモロイで!ここは!!

(以下、展示品の撮影は全て撮影許可証を頂いたのちに行っている。通常は撮影不可なのでご注意を)

 

 

何がスゴイって、ロボットミュージアムというアリキタリな名称から想像もできないほど、真剣にロボットについて語っているのである。ここで、我々は気付くのである。『そもそもロボットとは何ぞや?』『ロボットの起源って何ぞや?』『ロボットへの関心と意識と思想の人類史の関係ってどうよ?』とか・・・だから子供には、ちぃーと難しいかも知れない。でも、昭和40年代くらいに生まれた我々には、とっても懐かしく心地いい空間になっているのである。

 

 

要はガンダムやドラえもんや鉄腕アトムだけがロボットではないことに我々は改めて気付かされるのである。ロボットは天空の城ラピュタや21エモンや宇宙刑事ギャバンにだって当たり前のように登場している。それらは電卓やコンピューターの開発の歴史や大阪万博の開催や宇宙開発の歴史などと同じ時間軸によって比較し解説されているのである。それらは同時に我々の成長の歴史と重ねあわされる。

 

 

中でも特に惹かれたのは以下の2つである。

 

<映画「メトロポリス」について>

 

 

まさか、こんなところで等身大のレプリカである彼女と遭遇できるなんて夢にも思わなかったので、ググッとテンションが上がった。そう、早朝難波で思ったように「いいこと」が起こったのである。この映画は私が中学生くらいのときにたまたま見た映画で、オリジナルは1927年製作の無声モノクロ映画なんだけど、私が見たのは1984年にジョルジオ・モロダーによって再編集された一部カラー版である。

 

一部カラー版と言っても黄・緑・橙・青などの単一のカラーシートをモノクロ映像の上に被せただけのモノトーンの映像にジョルジオ・モロダー氏が自ら作曲したロックをBGMに延々と流し続けるだけの、ぶっ飛んだ編集版である。ちなみにロックとは言ってもかなり悲哀が感じられいいよ。その昔CD屋サンを何軒も歩き回り、やっとの思い出サウンドトラックを入手した覚えが有るので、この映画への思い入れは個人的には深いのである。

 

<「不気味の壁」について>

 

 

inomamoさんが去年の11月に書いていた「不気味の壁」である。このミュージアムでは「不気味の谷」と表現されているがどちらが正解なのかは不明。inomamoさんの言葉を借りれば、次のようなことになる。

 

「ロボット工学の用語に『不気味の壁』というものがある。人間に似せていくと、ある段階で違和感を感じ出す、というアレ」

 

個人的には、そういう言葉が存在していることに衝撃を受け、今でもその記事を読んだときのショック感を鮮明に覚えている。

 

 

で、それをアーティスティックに体現しているのが上の人たちで、つまりどういうことかと言えば・・・百聞は一見にしかずということで、以下の映像をチェックして見て欲しい。

 

  ・Kraftwerk - The Robots

  ・Kraftwerk - Die Roboter

 

このミュージアム、最先端の技術を紹介しながらも、歴史的考証を怠っていないことに好感が持てる。いや、ただの懐古趣味に留まらないために未来の大人たちに向けて情報発信を行っていることもなかなかいい感じだと思った。

 

 

おまけ画像(写真提供:seemoさん)

 

初セグウェイにも関わらず颯爽と乗り回す私・・・嘘、けっこう戦々恐々としながら乗ってたかも。しかし、運動神経もマズイ私でも乗れていたので大丈夫。ロボットミュージアムで何でセグウェイかと言えば、セグウェイは人間の体重移動の加減を瞬時に察知して転倒を制御すると同時に移動という動作を開始するのである。これも有る意味ロボット技術なのである。

 

ロボットミュージアムを堪能し、ご満悦の我々一行は大阪に帰るべく名古屋駅に向かうも、名古屋駅前で幻想的な光景と出会うことになるのであった。

 

つづく

 

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ゴリモンさんたちと名古屋へ【2】~ミッドランドスクエア展望台へ~

2007年06月30日 22時07分28秒 | 建築

ミッドランドスクエアの屋上展望台には二階建てのシャトルエレベーターで一気に昇るようになっている。地階から41階までキュイーン!と上がってしまうのであるが不思議と耳がツーンとしなかった。でもあまりに早いので、もう少しゆっくりと上がって行って欲しいという声もあったことは確か。

 

 

チケット売り場からは地下帝国のような薄暗く演出されたエスカレーターやドーム状の通路で期待感は高められていくのであるが、根本的にこの展望台はドーモ良くない。どう良くないのかと言えば、コチラ・・・

 

 

展望デッキスペースと外壁となるガラス部分との間に妙な空間が存在しており、直下の風景を望めないのである。いや、そればかりではない・・・

 

 

 

 

この異様な光景、わかるだろうか?この展望台は風雨をしのぐために屋根となる部分が一切ないのである。しかも、二層構造になっていて、作ろうと思えば上階のデッキの下部を待避所にして雨に濡れないようにすることもできたのであるが、微妙に上階の通路と下階の通路の位置をずらし、スタート地点となる上階からゴールとなる下階まで展望台内を約一周する道中、完全に雨の掛からない部分が意図的に設けられていないのである。

雨合羽はミッドランドスクエアが無料で配布してくれるけど、突風などによる転倒を憂慮しているため、傘の使用は禁止されている。

 

 

 

途中から合流したジロー君(ゴリモンさんの連れてきた親指大の超ミニチュア太陽の塔。そもそも太陽の塔の模型を「タロー君」と呼称することが、大きな間違いなのであるのだけれども・・・)もお怒りのようである。

 

 

とは言っても至近距離からスパイラルタワーズを見下ろすことが出来るのはここだけなので、竣工後もまた見に来るのだろうなあと思う。

 

 

 

ちなみに、ミッドランドスクエアの低層棟はショッピングモールになっている。なんというか、内装の質感とか雰囲気や気合は東京のミッドタウンと似ているような気がした。特に面白かった仕掛けが下の写真である。かなり楽しめるので興味の有る人は正午ジャストとかに行ってみるといいかも。

 

 

 

 

ミッドランドスクエアを後にした我々は一路、栄にあるロボットミュージアムを目指すのであった。

つづく

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ゴリモンさんたちと名古屋へ【1】~スパイラルビルを見に行く~

2007年06月30日 20時22分08秒 | 建築

6時45分近鉄難波駅改札前集合だったので5時前に起床し集合場所を目指す。朝早いのでなかなかちょうどいい時間に到達できず、かなり早めに現地に着く。もちろん一番乗りである。改札前にはベンチもなく、開いているカフェもなく、仕方がないので地上に出てカフェを探すも、雨が降っているので通りの向こうに見えるマクドナルドに行く事がタメラワレタ。『ああ、どうしよ?』と空を仰いだ瞬間に悪寒が走る。

 

 

どどーん!!

予期せずしてアノ建物が視界に飛び込んできたからである。眼球から脊髄を駆け下り、そのビジュアルが体中の毛細血管まで一気に刺激したのである。

今日はいい日になりそうだ・・・

今回の行程、往路は近鉄特急を使い復路は新幹線を使用することになっている。そして同行するseemoさんの提案によりサロンシートなるものに座ることになった。

 

 

サロンシートとは何ぞや?と思いつつも、旅程が快適になるのならばOKということで、実際に乗ってみるとかなり快適。四人掛けのボックスシートに大きなテーブルがついているのである。しかも、早朝の列車なので車内には我々四人の他に乗車してくる乗客は皆無であった。

 

 

何気に修学旅行っぽい??

そうこうしているうちにアっという間にスパイラルが視界に飛び込んできた。

 

 

まっしゅ:「わー!建設中のバベルの塔みたい!!」

ごりもんさん:「見た事あんのかい!?」

仰る通りです・・・嘘つきましたm(_ _)m建設途中のバベルの塔は見たこと有りません。いや、それどころか、バベルの塔自体見たこと無いんですから・・・。

 

 

名古屋駅を後にし駅ビルを出るとすぐ目の前に奴は立っている。美しいフォルムである。しばらく見とれて、様々な角度から思い思いの写真を撮り始めるメンバーたち。

 

 

 

 

 

見る位置によって、見える印象が違うのもまたいい。日本の組織設計事務所がこういう素晴らしいモノを創造できるのは稀であると私は思う。

ちなみに下の写真はスパイラルと道を挟んで向かいにある建設中のビル。なんか骨組みの表情が全く違うね・・・。

 

 

とまあ、今回は外からしか見ることはできなかった。いちばん気になるのは最上階がどうなるかということではなく、1階部分の地上との納めをどうするのかが気になるところ。

 

 

完成が待ち遠しい建物である。

このあと我々はスパイラルビルを見下ろすべくミッドランドスクエアに赴くのであるが・・・。

つづく

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第17回街歩き探検隊(大阪市生野区)の記憶

2007年06月23日 21時41分31秒 | 都市

人の記憶は七日まで・・・

 

 

そんな言い伝えが有るのかどうかは知らないが、経験した紀行を文章に纏めるまでの記憶の持続時間は体験時にリアルにその原体験を雑記帳などに記載していないのであれば、私の場合一週間が限度である。

 

 

つまり、賞味期限は一週間ということである。その期間を越えてもなお、何かを書き出そうと努めても、取り止めもない表現の羅列になってしまったり、あるいは、見通しのきかない袋小路に迷い込んでしまうのが私の経験上の常である。

 

 

 

 

そんな危うい私の記憶力の薄弱さを、あえて何かで表現するならば、それは「魔法のカメラ」で捉えた像がいちばん的を得たモノなのではないかと思った。そんなわけで、今回は全編にわたり魔法のカメラで撮った探検隊を掲載してみることにしよう。

 

 

詳しい探検隊の様子は他の隊員の方々が細かくレポしてくれているので、そちらのブログを参照されたい。

 

・かっさん隊長:第17回探検隊レポート

 

・きっちいさん:第17回街歩き探検隊 ― 大阪市生野区 ―

 

・ryuさん:第17回探検隊レポ第17回探検隊レポ(2)第17回探検隊レポ(3)

 

 

 

 

市場の有る風景とは、かけ離れた界隈で育った私にとって、市場の有る風景とは有る意味奇異であり、そして侘しくて寂しいものである。

 

 

日本古来のワビサビとは一線の違った感覚。もっと哀れで空しい空間にも思えてならないのである。・・・そこがたとえ盛況していて活気のある場面だったとしても、またウラ寂れて老人が丸イスに座っていても、である。

 

 

 

一歩、道を踏み誤ると、もしや本当に奇異な世界に踏み込んでしまうのではないかという妄想を思い描きながら・・・

 

 

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祈!!スパイラル日和!

2007年06月23日 19時47分35秒 | 建築
タイトルは「祝!スパイラル日和!」ではないのでご注意下され。現状、明日の天気は、かなりの確率で雨・雨・雨・・・なのである。スパイラルタワーを見上げたときに水滴がカオに降り注いだり、最近竣工の近隣ビル展望台が入場禁止になることが必至なだけに、あとは、ただただ「祈る」ばかりなのである。

明日はゴリモンさんたちと名古屋入りして、かのスパイラルビルを見に行くのである。朝7時前に近鉄線某駅に集合、、、ってことは私は一体何時に起きなければならないのであろうか・・・。

この計画が決まってから何度か、人に「スパイラルビル」の話を振ってみたところ、建築業関係者でない人でも割りと認知されているのであることがわかってきた。しかも、某日のニュースで掲出された「名古屋で鉄骨落下」の事故が「スパイラルビル」であるということも皆知っていたのは驚きであった。(このニュース、記事によってはビル名が特定されないようになっていたのである)

この手の建物は海外では既に数例あって、ロンドンのセント・メアリー・アクスやらスペインのナンチャラビルなどがある。一度は生で見てみたいなあと思っていただけに、このスパイラルはナカナカ見る価値があると思う。とはいいつつも、まだ建設中なので完全体ではないのだけれどね。

<セント・メアリー・アクス>
http://www.30stmaryaxe.com/index2.asp
http://all-a.net/a_map/uk_london/maryaxe/maryaxe.html

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パニック都市―メトロポリティクスとテロリズム

2007年06月17日 21時05分35秒 | 都市

そんなタイトルの書籍を見つけた。

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都市の歴史の表層に見え隠れしている諸問題
経済、情報、政治、権力、民族等個々の事象が
インターネット社会との融和・結合を果たした顛末

無差別テロ・戦争活動・貧困拡大へのプログラム
まるで、それが全てであるかのようなシニカルさ
様々な客観性事実を主観的、冷酷に詩化している

しかし、言葉の羅列に深い意味はない・・・

ただ、それらの組み合わせの中に思いもよらぬ
息を呑むような表現に出会うことができるのだ

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パニック都市―メトロポリティクスとテロリズム
ポール・ヴィリリオ著 竹内 孝宏訳
(単行本 - 2007/4) 価格: ¥ 2,100 (税込)

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日露友好ショスタコーヴィチ交響曲全曲演奏プロジェクト2007

2007年06月17日 20時05分36秒 | 音楽
日本ショスタコーヴィチ協会会長であるミッチーこと井上道義氏による「日露友好ショスタコーヴィチ交響曲全曲演奏プロジェクト2007」がこの秋、東京の日比谷公会堂にて催される。先日、チケット先行予約の抽選結果が有りチケットを確保した。こんな演奏会に行きたいと思う人はそう多くないので、おそらく取得は簡単なんだろうケド。で、私が聴きに行くのは以下のプログラム。

2007年11月10日(土) 17:00開演
<プログラム>
交響曲第7番「レニングラード」
<出演>
管弦楽:サンクトペテルブルク交響楽団

2007年11月11日(日)15:00開演
<プログラム>
交響曲第10番、第13番「バビ・ヤール」
<出演>
バス:セルゲイ・アレクサーシキン
合唱:東京オペラシンガーズ
管弦楽:サンクトペテルブルク交響楽団

2007年12月1日(土)17:00開演
<プログラム>
交響曲第4番
<出演>
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

ミッチーの振る「レニングラード」は学生時代以来だし、交響曲第10番、第13番「バビ・ヤール」も一度は氏の指揮でのものを聴いてみたかったわけで、2日で3曲いっぺんに聴けるという夢の公演である。しかも何故か、一回につき全指定席の「(一般):3,000/(学生):1,500」という破格のものになっているのも驚きである。

この2回の上京の間に友人の結婚式で別の日にもう一回上京しないといけないので、かなり濃いスケジュールになるので、今のうちから移動資金を貯めておかないといけないなあと危機感を抱いているところ。

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見たい映画ゾクゾクにゾクゾクっと・・・

2007年06月09日 21時23分43秒 | おすすめ
今月は面白そうな映画が幾つか有るので備忘録的にまとめてみることにする。

・ロストロポーヴィチ 人生の祭典
惜しくも今年の4月に逝去された20世紀で最も偉大なチェリスト兼指揮者の人生の物語。小澤征爾やペンデレツキなどもスクリーンに映し出される音楽家のドキュメンタリー。
【関西地区2007年6月公開中

・魔笛
モーツァルトの最大の傑作オペラ「魔笛(まてき)」を映画化したもの。監督はあのシェイクスピア俳優、ケネス・ブラナーである。1995年前後に見た「フランケンシュタイン」と「ハムレット」での彼の好演技は今でも瞼の裏に焼ついて離れない。舞台は第一次世界大戦前夜のヨーロッパに移されているようであるが、暗黒卿の名はザラストロだし、兵士の名はタミーノ、そして誘拐される娘の名はパミーナになっているらしいから安心して見れそう。ちなみに、「ザラストロ」は「=ゾロアスター」であり、また「=ツァラトストラ」でなのである。なかなか面白いでしょ?
【2007年7月14日ロードショー】

・図鑑に載っていない虫
『監督は三木聡。三木谷?あの楽天の社長かぁ?・・・違います!れっきとした映画監督なのだが、知名度の方は微妙なところ。何年か前に公開された映画「インザプール」の監督と言えばわかって貰えるだろうか』
というところまで書いて衝撃の事実を知る・・・あまりにも無知っ無知っ・・・ムチムチである自分に気付く。
へ?、時効警察の著者だったの?( ̄ロ ̄!!)
主演は伊勢谷友介だけど、それよりも何よりもインザプールに引き続き起用されている松尾スズキのあの奇天烈なルックスを見ただけでも、もう頭の中がウズウズとしてくる。
【2007年6月23日ロードショー】

・舞妓Haaaan!!!
脚本・宮藤官九郎、出演・堤真一、阿部サダヲ、柴咲コウと聞いただけで垂涎モノであるが、そこにワタシが加わるかもしれないと思うとドキドキである。
【2007年6月23日ロードショー】

・ハリウッドランド
もし、余裕が有れば見に行ってみたい作品。
宣伝用の見出しには「ハリウッド史上、最大のタブー、最悪のミステリー」とある。およそ50年前のアメリカの新聞の朝刊を飾った有名な見出し「スーパーマン死す」に関する映画であるという。主演はエイドリアン・ブロディ。この両者の「見出し」を比較検討すれば、おのずと映画の真相も見えてくるはずである。
【2007年6月16日ロードショー】

そして、これらのラインナップとは別枠で「監督・ばんざい!!」や「大日本人」も見てみたいし、未だに見に行けていない「バベル」だって見たいし、河瀬直美さんの最新作「殯の森」も捨てがたいし・・・とまあ、こんなわけで、少なくとも「バベル」は切り捨てなアカンやろなあと思っている。

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車だからこそ「見える」風景もある

2007年06月04日 22時42分40秒 | 
今夜から車のない生活に戻る事になった。
有ることに慣れてしまったためか、有るものが無いものになると寂しいものである。

前にも書いたけど、基本的には車への執着や興味は皆無に近く、更に依存することも今までは無かった。前の所有者から譲渡してもらったのも、「車に乗りたい」という意思ではなく「ペーパー(ドライバー)でいることはマズイ」と感じたからである。だから、譲り受けた当初は、ほとんど義務のような感じで週に一回、軽くハンドルを握ることしかしていなかった。

まあ、そんな状態でダラダラと今日まで来たわけであるが、運転中は常に大好きなショスタコやマーラー・ブラームス・ニールセン・クランベリーズなどの音楽が掛けられていた。

今日は仕事をほとんど定時状態で切り上げて、自宅に急いだ私。印鑑証明の印鑑の有り処を確認することが主目的だったのだけれども、思ったよりも早く印鑑の所在を確認できた私は、引渡しまで何時間かあったので最後のドライブに出かけることにした。ドライブと言ってもどこか名勝を訪ねるわけではなく、よく車で散歩した南芦屋浜や西宮浜の辺りを走ってきただけのことなんだけども。

当分車を購入する予定はないから、とりあえずこれが走り納めかな。

車内の荷物も全部引き上げているため、掛ける音楽もない。だから窓を全開にして静かに走る。アクセルを踏めば、自然に駆動音が一つのリズムとなって私の背中や耳に到達するのである。そして、私はもう少しアクセルを踏んでみる。彼は私の足の動きに呼応しながら常に振動を送り続けている。

そんな無言の対話が、心地よかった。こんな新鮮な感動は初めてだった。車好きの人はこういう対話を楽しんでいるのだろうか?

西宮大橋を渡るとき、欄干の向こうに芦屋浜シーサイドタウンの高層集合住宅群が光の柱壁となって眼前にせり出して来る。まさに流れるような光景である。このスピード感は徒歩では味わえないだろう。いや、他人の運転で助手席に座っていてもリアルな情景として楽しむことはできないのではないかと感じた。

きっとそれは、車だからこそ「見える」風景なんだろう。
そう、最後の最後の最後にそう思った。

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