『ARTURO TOSCANINI THE LAST CONCERT』これがCDのタイトルである。タワレコで何気に手に取ったCDに心奪われて衝動買いをしてしまった。
帯にはこう書いている。
「ワーグナー・コンサート」の後半、「タンホイザー・バッカナーレ」の途中でトスカニーニが遂にバトンを落とし、NBC響がストップ!これを以ってトスカニーニの引退が決まったドキュメントです。
収録されている曲目は以下の通りであるが、生放送のラジオを録音したかのような構成になっていて音質も雑音や歪みでいっぱいである。
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・歌劇「ローエングリン」~第1幕への前奏曲
・楽劇「ジークフリート」~森の囁き
・楽劇「神々の黄昏」~ジークフリートのラインへの旅
・歌劇「タンホイザー」~序曲とバッカナーレ
・楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」~第1幕への前奏曲
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実は、『歌劇「タンホイザー」~序曲とバッカナール』のところがPART1・PART2に分かれていて、その間に「Announcement to begin SYMPHONY No.1(Brahms)」というのが挿入されている。そう、演奏が途中で止まり、前日のリハの様子から予め放送局側が用意していたブラームスの交響曲第1番の録音テープを徐に流し始めたところ、それから1分足らずで曲が再開されたので、また生放送を開始したというものであるらしい。
郷太朗という人が書いているライナーノーツが郷愁を誘う。物凄く切ない。切な過ぎるのである。そしてプライドがズタズタになったトスカニーニの魂と、何とか演奏を成功させてあげたいと願うNBC響のプライヤーの強い意思が最後の『楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」~第1幕への前奏曲 』せめぎ合う。郷太朗氏は最後の方でこう書いている『マエストロが、末尾の和音の鳴り終わらぬうちに指揮台を降りた時、その手にはバトンが無かったそうである』と・・・。そして、そんな切ないトスカニーニの業を労う観衆の鳴り止まぬ拍手ととラジオ解説者によるエールが虚しく会場に響き渡る。だが、トスカニーニは二度とステージに出てくることはなかった。
何ともボロボロな状態で始まったマイスタージンガーが最後に見事な大団円を向かえる事が出来た裏にはトスカニーニの哀しみが感じ取れる。だから、他の何かをしながら聞く事の出来ないCDだった。聴き終えたあと、しばらく身動きが取れないほどに身体が硬直させられた演奏会だった。
興味の有る人は買ってみてみて!
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