まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
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『二十一の短篇』ピリカラな1冊

2009-08-06 00:05:34 | イギリス・アイルランドの作家
TWENTY-ONE STORIES 
グレアム・グリーン

作品のほとんどが映画化されちゃってるというグレアム・グリーンの小説は
実は1冊も読んだことがありません。
この短篇は表紙がかわいくてたまたま手に取ったものでしたが
様々なタイプがありながら独特な雰囲気があって面白かったですね。

新しい作品から古い作品へと遡っていく構成になっていて
後半になるにつれ優しさとか暖かみみたいなものが無くなっていくんですよ。
若い頃の方がトンガっていたということでしょうか?

『アクロス・ザ・ブリッジ(Across the Bridge)/1938年』
イギリスから逃げて来た横領犯キャロウェイは、退屈なメキシコ国境の町から
橋の向こうのアメリカを来る日も来る日も見つめています。
ある日ふたりの刑事がやって来ましたがメキシコではキャロウェイを逮捕できません。
そこで彼が飼っている犬をさらって橋の向こうへ連れて行きます。

捕まることを恐れる気持ちと逃げ続けることの苦しさ、どちらが堪え難いでしょうね?
犯罪者が主人公で刑事も登場する物語ですが、少しユーモラスに書かれていて
重苦しさをを感じさせない心理劇です。

『地下室(The Basement Room)/1936年』
両親の休暇中、広い家でお留守番の7歳のフィリップはウキウキしています。
けれど執事ベインズと姪だという女性の密会を目にしたことをベインズ夫人に詰問され
だんだん大人の問題に巻き込まれていきます。
夫人が出かけた日、ベインズは姪を家に招きましたが実は夫人は家の中に潜んでいました。

ただの不仲な初老の夫婦の物語ですが、7歳の子供がふたりにふりまわされることで
グッとドラマティックに感じられます。
自分たちでなんとかせんかい!と、フィリップならずとも思っちゃいますね。

『即位25年記念祭(Jubilee)/1936年』
昔の知り合いを避けて記念祭の間部屋に閉じこもっていた50歳の男娼チャルフォントは
久々に仕事に出ようと、すり切れた衣装を取り繕って優雅に装いました。
仕事場のレストランではいつも座る席が裕福そうな婦人に先取りされていました。
どうやら彼女は知り合いのようで、よくよく聞くと昔の同業者でした。

こういう商売の方々の行く末って…? て興味があったりします。
自分より若い女性に貢いでもらうってわけにもいかないでしょうからねぇ。
TVで見るとホストはみんな若いですけど、30越えた人はどうなっちゃってるんでしょう?

短い物語の中にもエンタテインメント性があって、ドラマとして成立していると思います。
この1冊の中でも映画化されているものがありますね。

どちらかというと男性的な感じがしまして「好きだから他の本も読みましょう! 」
とは思わないんですけど、この短篇集は楽しめました。
小粒でピリッと辛い感じの1冊です。

二十一の短編 早川書房


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