まりっぺのお気楽読書

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『ブヴァールとペキュシェ』有閑紳士の道楽とは

2008-10-04 18:43:20 | フランスの作家
BOUVART ET PECUCHET
1880年(未完) ギュスターヴ・フロベール

フロベールがこの作品のために読んだ本は1500冊以上
メモをとったノートを積んだ高さは20センチ以上という
気合いが入った一作ではありますが、読んでいてちょっとダレるかもしれません。

判で押したような生活を送るパリの筆耕事務員ブヴァールとペキュシェが
ある夕暮れに出会って意気投合します。
お互い独り者の二人はいつしか常に一緒にいるようになりますが
ブヴァールに遺産が入り、二人で田舎暮らしをしようと思い立ちます。

カルヴァドスのシャヴィニョール村に広大な(38ヘクタールだって!)土地がついた
田舎の館を手に入れた二人は、暇にまかせて道楽に没頭します。

農業、園芸、庭作り、酒造、化学、生理学、医学、地質学、考古学、骨董品
歴史、文学、戯曲、体育、心霊、信仰、教育、骨相学・・・
次から次へと興味の対象を移す二人は、その度に本を買い、道具を揃え
本から仕入れた知識を村人たちにひけらかします。

彼等は本に書いてある事を真に受けて、なんでもかんでも試みます。
農業の時には牛や鶏を傷つけたり、医学の時には人を殺しそうになったり
骨董品のときは盗人になったり・・・

その上女に惹かれて痛い目に遭ったり、金詰まりになって土地を売ったり、
問題児を引き取ったりするうちにさらに評判を落としていきます。
とうとう訴えられるに至って、二人はもとの書記生活に戻る事にします。

とにかく、各専門書の著者と著作と専門用語の洪水で、書いた方もすごいけど
訳者(鈴木健郎氏)の根性にも脱帽です。
訳注の多い事ったら・・・読む方もつらかったぜ

フロベールはこの作品に4年ほどかけるつもりで1874年にとりかかってますが
1880年に未完成のまま亡くなりました。
物語の最後の方は、彼が残した構想のメモ書きで書かれていますが
完成していたら、もっと二人の滑稽で哀れな様が
浮き彫りになっていたんじゃないでしょうか? 残念ですね

フロベールはかなり悩んだのか、ジョルジュ・サンド、ゾラ、モーパッサン、
ゴンクールなどにひんぱんに手紙を書いたり、相談したりしています。
相談相手もビッグネームだね
彼等がなんて答えてあげたのか知りたい気がします。

当時ラジオやテレビ、ましてやインターネットなんてなくて良かったかも・・・。
あったら情報がありすぎて、二人も村人も大変な目に遭っていたでしょう。

旦那いわく「お前はすぐ本とか雑誌に書いてある事を信じすぎるんだよ」と
言う事ですので、気をつけたいと思います。

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