まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
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『聖母の贈り物』信心、懐古、老いること

2009-08-22 01:35:12 | イギリス・アイルランドの作家
THE VIRGIN'S GIFT 
ウィリアム・トレヴァー

やっぱり好きですねぇ、ウィリアム・トレヴァー
内容にも文章にもある種の潔さが感じられます。
後悔もあきらめも叶わなかった願いも、全て受け入れようとするスタンス、
老後には見習いたい。

ベースには、アイルランド的カトリックへの信仰心と
現代を描いていてもなぜか懐かしく感じられる情景、
老いていくこと、老いてしまったことを冷静に見つめる姿勢があるように思います。

初めて知りましたが、トレヴァーの短篇集は全て12篇で構成されているそうです。
そんなわけで、こちらの短篇集も収められているのは12篇です。
印象的な作品をいくつか…

『イエスタデイの恋人たち(Lovers of Their Time)』
旅行代理店に勤めるノーマンと、薬局のマリーの恋物語です。
ふたりは満足に時間を持つことができません。
なぜならノーマンには妻がいるから…
けれどもふたりは離れられないと思い、小さなフラットに移り住みました。

うぅぅ…せつない。でも、たいていの不倫の結末はこんなものではないかしら?
このケースはまだ幸せだった方じゃないかと思います。
少なくともお互いが真剣だったんだもの。

『マティルダのイングランド-テニスコート(Matilda's England-Tennis Court)』
マティルダと兄のディック、姉のベティーは、ミセス・アッシュバートンに
荒れ果てたチャラコム屋敷のテニスコートをきれいにするよう依頼されます。
そして綺麗になったテニスコートでパーティーが開かれ、昔のような輝きを放ちます。
けれど平和な村にも、第二次世界大戦がせまってきていました。

最後の輝きって美しいものですが、この物語のパーティーのシーンは
風景、人物、小道具、何から何まで美しく、本当に胸が熱くなります。
これみよがしの描写などはないのですが…素敵で不思議です。

『丘を耕す独り身の男たち(The Hill Bachelors)』
父が死んだので母が暮らす農場へ帰って来たポーリーは、結婚はしたいのに
なかなか相手が… 見わたすとまわりの農場にはそんな男性ばかりです。
丘の上のハーティガンは「農場を買ってやるから都会に帰りな」と忠告します。

日本だけじゃないんだ! 嫁不足問題。
大変な仕事ですものね 、鉢植えガーデニングだけでも力尽きそうなのに…
何年か前富良野に旅行に行った時、ガイドさんに「2ヘクタール買わない?」と
言われましたが、買ってどうしろと…?

暗い話しもそうでない話しも(たいがい暗いんですが)吟味されて選び抜かれた言葉で
大げさにならないように伝えてくれる、そんな感じです。
だからスラスラ読めるわりに、後からジーンときたり考えさせられたりします。

でも、やはり若い人向けじゃないのかな?
ノスタルジックすぎるきらいはありますね。
そろそろ人生をあきらめ始めた年頃にいいんじゃないでしょうか?
そんなに頑張らなくていいんだよ…っていう意味で。

自分を見つめ直すヒントがほしい時にぜひ!
読んでみたいな!という方は下の画像をクリックしてね


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