水野英子の「白いトロイカ」は1964年の作品です。私の漫画史は未だ小学校低学年の頃の想い出を彷徨っているわけですが、この水野英子氏を語らないで、次に行くわけにはいきません。
この記事を書くにあたって、ネットの世界をあっちこっちと彷徨い、水野英子氏の関連記事を読まさせていただき、やはりそうだったのかと思う事や、そうだったんだと頷く事も見つかりました。何しろ私の場合は幼かった昔の記憶のみが頼りなわけですから、正直な所あらすじすら書けませんでした。
ただ冒頭シーンとラストシーンは克明に覚えています。
田舎で両親に愛されて育ったロタ(実はロザリンド)は、のびのびと暮らしていました。呼ばれて木の上から降りてきたロタは、その頃私が見た事もない果実を齧っていました。それは洋ナシだったのです。
もうそんな細かい所からも、この漫画の世界に引き込まれて行ってしまったのは確かです。
共に生きて行く事になった男性と寄り添い静かに終わるラストシーンで、まだ幼かった私は静かで深い感動を覚えました。この物語は壮絶な歴史の物語だったんだなと言う感動と、そしてそれは大きな歴史の渦に巻き込まれても、やがて静かな生活がその人には訪れるのだと言う感動だったかもしれません。
「白いトロイカ」はロシア革命をモチーフにした物語。
(モチーフと言う便利な言葉が出来ましたね。^^)
私に世界史に目を向けさせた一因はこの漫画にもあるように思います。後に「ロシア革命」を学んだ時に、史実を描いたわけではないんだなとようやく気が付いたくらいに、この作品は素晴らしい一大叙事詩を奏でていたのです。
ウィキペディアによると、
「少女漫画史上初めて実際の歴史の動きを背景にした作品」とあります。これは著者自身が「少女まんがにおいては初の『歴史物』」と言っているんですよね。難しいからダメと編集からOKがなかなか出なかったみたいです。なんだか笑えますよね。どれだけ女性の能力は男性より劣ってるとか言う大きな誤解が蔓延していたんだろうかと、今となっては笑い話に他なりませんね。
だけど私が今でもたびたび思い出しているシーンがあるのですが、いかにも私らしいなと思うのです。
それはロタがペテルブルクを目指して旅している途中、飢えと寒さを一件の貧しい農奴のおかみさんが助けてくれるのです。出されたシチューを一気に平らげるロタ。するとそのうちの子供が「お母ちゃんのは?」と聞くのです。
そこで初めて、このうちが今日の糧を得るのがギリギリなほど貧しくて、このお母さんの分を自分が食べてしまった事に気が付くのです。
「私が・・・・」と言うと、その女性は子供たちに向かって「私はさっきいっぱい食べたの。さあお食べ。」と言ったのです・・・たぶん。
私のうちは、夫がホワイトシチューが好きじゃないので、めったに食べないのですが、たまに食べる時は必ずと言って良いほど、そのシーンを思い出し、なんというか、食べられることを感謝する私です。
このシーンは後の革命の必要性とか社会情勢をなにげに表しているシーンだったかもしれませんが、本筋とは関係がないと思います。
だけど人の心には何が残るのかは、作者にも分からない事なんですよね。
もちろんワクワクとドキドキが交互にやってくるような物語で、「白いトロイカ」、本当に大好きでした。
白いトロイカ [マーケットプレイス コミックセット] | |
水野 英子 | |
集英社 |
そして、今でも氏の作品は買い求める事が出来るのが嬉しい事ですよね。
本は買わないけれど、あらすじを知りたい方は検索してくださいね。読んでちゃんと詳しいあらすじを書いていらっしゃるところにたどり着けると思います。
その時についでに私が何に「やはりそうだったのか」と思ったのかと気が付かれる方もいらっしゃるかもしれませんね。
それはこの「白いトロイカ」と「ベルサイユのばら」の関連性なのですが、話しが膨らみ過ぎてもと思うので、興味のある方はまたまた検索してみてくださいね。
そして水野英子氏の漫画の想い出は、つきないので続きます。
こんにちは(ハロー)先生(ドク) (上) (珈琲文庫 (8)) | |
水野 英子 | |
ふゅーじょんぷろだくと |
ファイヤー! 1~最新巻 [マーケットプレイス コミックセット] | |
水野 英子 | |
朝日ソノラマ |
・・・・・・