森の中の一本の木

想いを過去に飛ばしながら、今を見つめて明日を探しています。とりあえず今日はスマイル
  

たまには指を折って文字を数えてみた その7《月の光に》

2023-09-01 02:48:23 | 詩、小説

8月31日の月は、スーパームーンでブルームーン。

朝、友人がラインで教えてくれました。

で、その日の夕方、姉妹たちにそのことを伝え、「今日は月を見よう。」と私は言いました・・・・・・が、自分は足がずきずきと痛くて、気持ちが沈みカーテンを開けてベランダに出る気持ちにもなれずゴロゴロとお布団に転がっていました。

いかなる時間でも、ベランダに出ると猫たちがもれなくついてくるのも、今は何となくうっとしくも感じていたからです。

だけど嬉しいことに名都さんが画像を送ってくれました。

青く光り輝く月はクールビューティ。

月には何にも感情などないはずなのに、なんでか自分を映す鏡のように感じたりするのはなぜなのでしょうか。

または友のように語り掛けたりする詩人の気持ちに共鳴したり、さらには月の語る物語に耳を澄ましてみたくなるのです。

まるでアンゼルセンの「絵のない絵本」のように。

 

えっ、そんなことは全くないって !?

 

ふと思いました。

無機質で何も語らない月の輝きを愛する人は、月のクレーターまでがキラキラと光り輝いている写真を好み、月の話に耳を傾けるような人は、青く光る球体の写真を愛するのではないかと。

私は後者。

雲間の月や、森の向こうに浮かぶ月の写真が好きです。

 

そしてまた湿気を多く含む夏の夜の空気は、特別な空気感があるような気がします。

きっと「何かが道をやって来る」、そんな感じがしますよね。

少女だった昔では、そんな感覚はワクワクに近いものがあったかもしれませんが、人生の秋の道を歩き始めた者には違う感覚に捉われます。

※      ※     ※

 

月見てもなんでか悲し 

星見てもやっぱり寂し 晩夏の夜空

 

 

※      ※      ※

 

えっ!?

2023年はあと4か月しかないのですって。

知ってた ?

 

 

 


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うつろいの季節の別れに 

2023-08-12 09:51:23 | 詩、小説

《たまには指を折って文字を数えてみた その6 》

 

病院で知り合いになると言うのはそういうことなのだと、ある程度は覚悟していました。

それでもすれ違ったときに交わした短い会話の中で、複数回の手術を受けて癌と向き合っていることを知って、私はその若い人に前年に亡くなった妹を想わずにはいられなかったのです。

それで長い入院生活のほんの気晴らしになればと思ってライン友になり、花や猫の画像を送ったりしました。

 

1月に入院した時に知り合ったその人の事は、ほんの少しだけブログにも書いてきました。

短いので、そのまま転載します。

《病院で『ふつつかな悪女でございますが・・・』をスマホで読みました。何度読んでも励まされます。この漫画が縁で病院で若い友達が出来ました。》

1月の暮らし♡2023

《入院中、すでに買ってあったこの漫画の、ヒロインのポジティブさに救われました。

今の病院は患者さん同士のおしゃべりはダメなようです。(コロナのせいだと思います。)それでも、ほんの少しだけおしゃべりした若い人と

「まだ死に直面していないのに、死ぬかもしれないと心を痛めくよくよするするのは、無駄な時間だわ。」というようなセリフがあって、まさにそうだよねなどと、短い会話を交わし、友達になりました。》

「ふつつかな悪女ではございますが ~雛宮蝶鼠とりかえ伝~: 4」

《この漫画がきっかけで、病院で友達になった方がいたこともその記事に書きましたが、その時は頑張ってリハビリをしていましたが、病気は軽いものではありませんでした。

3月の終わりの桜の写真にはお返事が来て、4月の終わりのネモフィラと、未練がましく送った5月最初の薔薇の画像には既読が付きませんでした。

心のどこかでは分かっていたことですが、やはり心のどこかがチクチク痛みます。》

4月の暮らし☆2023

 

だけど7月のある日、私は考えました。

「可能性としては、退院して新しい生活を踏み出そうとしているのに、病院で知り合った訳の分からないおばさんのラインはもういらないわと思ったというのもあるにはあるよね。」

そうだわ。それもあるよね。じゃあ、私もお気に入りくらいは外そうかなと、その時になってその人のトップページを開いてみました。

あれっ、なんか書き込みがしてある・・・・・

 

私はその書き込みを何度も読み直し、そして初めて悲しいと思いハラハラと涙しました。

またそれはいったい誰が書き込んだのだろうかとも思いました。

長い病院生活で、ずっと会えないまま彼女を支えてきた夫さんだったかも知れません。

または彼女本人だったかもしれません。

 

私と彼女の係わりと言えば、いきなり降ってきた雨の雨粒の一滴が頬を濡らした、そんな一滴が私だったと思います。

だけどその一滴の雨粒は、彼女の頬を濡らすことが出来て、少しの悔いもないと思いました。

 

そこにはこう書いてありました。

「沙織のこと良くしてくださりありがとうございました。」

 

よくよく見ると、可愛らしい絵文字が添えてありました。

やっぱり最後まで明るい気持ちでいようとした彼女自身が打ったのかもしれません.

でもやっぱり・・・・

「沙織のこと」と言う書き出しに、夫さんではないかと思えてしまうのです。可愛らしい絵文字も、彼の強くあろうとする気持ちの表れだったかもしれません。

 

 

空に問う はたして友と呼べるのか 一期一会の出会いであっても

 

紫陽花の季節の終わりの別れにて  儚き出会いをしみじみ想う

 

 

 

 

 


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たまには指を折って文字を数えてみた その5《オオキンケイギク》

2023-05-23 00:10:38 | 詩、小説

 

かわいいと

望まれたのに

嫌われた

その強さゆえ

たくましさゆえ

 

 

オオキンケイギクは、特定外来生物であり、日本生態学会により日本の侵略的外来種ワースト100に選定されています。

詳しいことは→こちらにて

 

※ 姉からとあるミッションを申し付けられて、早々に終わらせるべく動きました。なんでも後回しになりがちな私には珍しく早めに動いたのです。

バスの中から見えた、可愛らしい元気色のオオキンケイギク。

駆除対象の外来種です。

他の県で問題になっていて、ニュースなどで知ったのは、かなり前の事だったと思います。

うちの地域でも増えてしまいましたね。

 

積極的に駆除されてないのは、なにげに空き地で揺れるこの花を、楽しんでいるからではないかしら。

 

 

 

 


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たまには指を折って文字を数えてみた その4

2023-05-22 00:57:14 | 詩、小説

 

欲しいもの

何かと問えば

寂し気に

逆回転の

時計と呟く

 

 

あの時も

この時もまた

気がつかず

無為に過ごした

煌めく時間

 

 

 

君は今

幸せですか

いつだって

心の中で

願っています

 

【母の日の翌日】

言うたらなんだけど、うちのおバカちゃんたち・・・・って誰かと言ったら、おバカ息子ちんたちだけれど、彼らのカレンダーには「母の日」というものがないらしい。

ラッタさんたら、近しい人が自分の母親にプレゼントを送っているのを見て

「うちにはそういう習慣がないから。」などと抜かしたらしい。

なんか腹立つなぁ。

でもこれ、毎年の事なんで、実はあまり気にしてない。

しかしだいたい翌日に会った人なんかは、私の愚痴の餌食になる・・・かもしれない^^

だけど今年は、私と同類項の方で、「まったくねぇ、ふん。」で終わった。

その人と別れて、スーパーの前を通ったら、「母の日」のためのお花がみな半額になっていた。

「半額 !!」

買うでしょう。

半額って言葉に弱いのですもの。

そしてその日の夜、一応、ルート君に嫌味を言ってみる。

「母の日のお花を、自分で買うってどうなの。ああ、可愛そうな私。しくしく」

 

「大丈夫だ。俺は元気で生きている。」と彼がガッツポーズを取る。

それが贈り物だそうだ。

いやな奴だ。

核心をついているだけに。

 

【大きな小人さんが働いていたらしい】

はたから見たら、絶対に怠け者にしか見えないと思うけれど、食事をした後、本当に体が一気にだるくなったり、または気を失うような眠さに襲われて、寝てしまうことが度々ある。

あっ、今書いていて、思ったけれど、これって糖尿予備軍ってことかしら。一族にはその病気の人は誰もいないし、薬の副作用にそれがあって、時々検査するけれど引っかかったことがないから、気にも留めてなかったけれど、明日から意識することにしよう・・・・

その件は、一応置いといて、今日も昼食の後、夕食の後、転寝していた。

そして目が覚めると、いつもキッチンが綺麗に片付いていた。

どうも我が家には、寝ている間に代わりに働いてくれる小人さんがいるらしい。

 

夜の転寝の後、私は言った。

「あのさ、パパ。ありがとうね。」

「うん。」と短く返事をしたパパさんは、ちょっと下を向きニヤッと笑っていた。

 

だから今日の私は幸せです。

 

たまには指を折って文字を数えてみた

たまには指を折って文字を数えてみた その2

たまには指を折って文字を数えてみた その3 《十三夜》

 

 

 


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たまには指を折って文字を数えてみた その3 《十三夜》

2022-10-14 20:52:57 | 詩、小説

 

十三夜

君の時計が止まっても

私の時間(とき)は

たゆまず刻む

 

 

時々、スノウさんとメチャクチャ話がしたくなる。

だけど叶わぬ夢なんだ。

だから私は、過去の彼女と対話する。

そして時々笑ってる。

あの時、こんな事があったよね。こんな事を言っていたよね。

「ふふふ」と笑って、そして涙ぐむ。

もう、共に新しい時間を共に過ごすことはないんだな。

君の時間は、今生では終わってしまったから。

それでもお姉ちゃんはさ、何やかんやと忙しく、毎日を過ごしているんだよ。

賑やかに音を立てて進む秒針のような毎日さ。

だけどね、或る日、突然、その秒針も止まる日が来るんだね。

だからと言って、その時に、君と再会できるなんて思ってもいないんだよ。

だって私はね、あの世なんて信じていないから。

それでもさ、ちょっとだけそんな夢を見てもいいかしら。

 

あの時、ずっとコロナと体の調子が悪くて会えなかったけれど、ようやく君の家に行き、1年と数か月ぶりにやっと会えたあの時、

「やっと会えた~。」と君は言ったでしょ。

あの時と同じようにさ、

お互いに抱き合って、背中をポンポンと叩きあうんだよ。

「やっと会えたね。」って。

 

あっ、だけどさ、スノウさん。

それ今じゃないかね、悪しからず・・・。

「来たよ~。」とニコニコしながら来られても、ちょっと困るよ~、私。

 

そんな事を考えながら、歩く夜の道。

ちょっと涙ぐんだりクスリと笑ってみたりして・・・。

 

 

 

 

 

 

 

たまには指を折って文字を数えてみた

たまには指を折って文字を数えてみた その2


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たまには指を折って文字を数えてみた その2

2022-07-18 02:43:16 | 詩、小説

振り向いて

何も出来ない でくのぼう

過去の私を 私がなじる

じゃあ今を

ちゃんと生きてると 言えるのか

過去の私が 私をなじる

7月16日(土)。本当は前日の金曜日にいろいろと動こうと思っていました。ところがテレビであんまり「ゲリラ豪雨の危険」を言うものだから、止めて家の片付けに終始していました。

それで土曜日の日に小雨決行という事で、その予定の「あれやこれや」をやっていく事にしました。

一つ目は「図書館に行って本の返却と借りてくる。」と言うものです。

ツイッターで「あれやこれや」の「や」とか書きこんでいたので、図書館の部分が【あ】ですね。

日にちをずらして大正解でした。「今日返ってきた本」と言うコーナーの中に、買おうかと思っていた本が置いてありました。

「マジですか!?」と言う気持ちになって、それも借りてくる事が出来たのですから。

 

小雨振る図書館からの帰り道、空き地の野の花が咲き誇っていました。

マリアアザミと検索したら出てきました。この花の花の落ちた後か、もしくはこれから咲くと言うのか、この緑のポンポンのところが、とっても可愛らしく感じました。

「野の花を愛でる会」、もしくは「野の花マニア」の私の、これが「あれやこれや」の【れ】でしょうか。

因みに「野の花を愛でる会」と言いましても、会員は私一人ですが(笑)

 

侵略的外来種ワースト100にも選定されている、ヒメジョオン。

実はこの花が道端で群れていないで咲いている時、時々その可憐な白さに、清楚さを感じて綺麗だなと思う時があります。

本当は繁殖力が半端ない、駆除対象の花なのですよね。

ここの空き地では思う存分、繁殖してた・・・・・。

来年が怖いよ、これ。

Wikipediaに寄れば

『1個体あたり47,000以上の種子を生産し、さらにその種子の寿命が35年と長いこともあり、驚異的な繁殖能力をもっている。したがって、駆除がとても難しい。』

群れて咲き過ぎて、あまり綺麗には感じる事は出来ませんでした。

だけど下の一枚、結構好きな写真です。

何処がって言われそうですが、見る所がたくさんあってと言う所でしょうか。

 

若い葉っぱだなとか、

老いたものには老いたなりの美しさが・・・・とか

別の一枚からですが、(電線邪魔)、無謀に飛び出す若い花とか・・・

もっと見ていたかったけれど、もうその時時刻は12時で次の所に移動しなければと、この空き地前を離れました。

 

ついでながら、上に載せた短歌ですが、「昔は何にも出来なくて、そしてやろうともしなかったな。」と言う悔いの想いが胸に広がって来て、最初にノートに書き込んだのが、

振り向けば

何も出来ない でくのぼう

過去の私が 私をなじる

 

「いや、違うって。なんで過去の私になじられなくちゃならないのよ。いや、この方がすっきりしてるけれどさ、なじっているのは今の私よ。助詞って本当に大事よね。」となったわけです。

ですが過去の私からも反撃されました。

ちゃんと生きなきゃ。

でもちゃんと生きるって、どういうことを言うんだろう・・・。


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たまには指を折って文字を数えてみた

2022-06-28 01:02:23 | 詩、小説

 

君去りし

後の寂しさ

君知らず

じゃあと 短く

さよならを言う

 

 

 


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―猫の楽園ー

2020-12-12 00:59:23 | 詩、小説


ぼんやりと池のほとりにたたずんでいた。ふと気が付くと、いつの間にか猫が傍らに座っていた。

「ねえ、教えて、ネコさん。あの茂みを抜けて、また抜けて、そしてまた抜けていくと、いつかは猫の楽園に行けるのかしら。」

猫は眉間に皺を寄せていった。

「失礼なやつだな、あんたは。物事は、まず何でも自分の方から打ち明けるのが礼儀ってもんだろう。まず、人間の楽園は何処にあるのか言うべきなんじゃないのかね。」

私はちょっと困った。それでも、少し考える振りをしてから言った。

「ごめんなさい。私、人間の楽園が何処にあるのか知らないの。」

すると猫は、少しホッとしたような顔をして、それからまた偉そうに言った。

「それじゃあ、教えてあげるわけにはいかないな。」

だけど、猫は今度は寂しそうな顔をして言った。

「実は、わたしもだね、『人間の楽園』を少しばかり探しているんだよ。昔、泣き虫だった女の子の面倒を何くれなく見ていたんだが、いつの間にかいなくなってしまった。泣いていた時には、その涙に濡れた指なんかを嘗めてあげたりしたのだが・・・
どうしていなくなってしまったのか、さっぱり分からない。
だけど、わたしはだね、時々思うのだよ。
あの女の子は、今頃はどうしているだろう。涙の時は誰が慰めてあげるのだろう。可哀相で可哀相でたまらなくなる。
だけど、そんな時、きっと女の子は楽園にいるに違いない。そして、涙なんかを友にしないで、毎日微笑んでいるに違いないと思うようにしているんだよ。だから行くことが出来るのならば、その楽園に行って、それを確かめてみたいものだと思っているというわけさ。」


 何かを言おうとして、口を開いたら、涙が不用意に出た。
「大丈夫ですよ。その子が楽園にいるかどうかは分からないけれど、涙の時はきっとあなたのことを思い出していますよ。そして、『ありがとう。』と言っていますよ。」と言って、傍らを見ると、いつの間にか猫はいなくなっていた。


黄昏前の、池のほとり。
いつの間にかいなくなってしまった猫達。ある日突然死んでしまった猫達。その魂も含めて、その者たちは猫の楽園にいるのだろうか。花咲き乱れる原っぱを駆け巡り、好きなだけ狭い茂みを抜けていく。ハンティングに乗じては、疲れ果てて眠りこける。風に揺れる猫じゃらしに戯れては、真っ青な空を見上げている。月夜の晩には、猫の集会に集まって、噂話に花を咲かせ、またたびパーティに踊り狂う。


―おいでよ、おいで。僕らの輪の中に
僕らは拒みはしないよ
自由な魂を持つ者は  猫の心を持つ者は
その姿なんかで 差別しない

同じ月の光の下で  どうして違いを見出せる

踊り狂え 朝が来るまで
日の光が登ったら  
それぞれのねぐらに帰って
それぞれの夢の続きを また見よう

自由な魂を持つ者  猫の心を持つ者
僕らは拒みはしない
踊れ  朝が来るまで―



行ってみたいな、そんな「猫の楽園」。 

だけど、そんな「猫の楽園」を見つけるには「人間の楽園」を見つけることが近道らしい。


餓えて死ぬ事などなくて、誰かに殺される悲しみに耐えることもなければ、誰かを殺さなくてはならない恐怖に恐れおののく必要もない。ただ、それだけの楽園。だけど、それさえも、人間は手に入れたとしてもそのことに気付かないで、自らの手で手放してしまう。

そうすると、いつか猫の楽園にたどり着き、ある日突然別れてしまった猫に「さよなら、幸せでいてね。」と言う一言を伝える事が出来る日は、出口の分からない茂みの中を抜けていくようなものかも知れないなどと、ふと思った。


いつの間にか、日の光は池の中にポシャンと落ちて、夕闇がやって来ていた。
 
             ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー     2007年8月17日に1度投稿したものですが、再掲載しました。              


 3日のもも

 4日のもも

ももは、12月10日に永眠しました。

今頃は見た事もない広い世界の野原を、苦痛の肉体を捨てて走り回っているかもしれません。

それともしばらくはそっと私の傍にいて、

「なんだか体がとっても軽くなったんですよ、ママ。」などと言っているのかもしれません。

 

だけどももちゃん、

ももちゃんは振り返らず誰をも待たずに、自由に猫の楽園に行ってね。

ママはおうちの中のどちらを向いても、ももちゃんを思い出して、今は泣いています。

だけどそれはそれだけ想い出があるから。

 

ももちゃん、ママはね、

涙の時はきっとももちゃんのことを思い出し、そして、『ありがとう。』と言うね。


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「特別な人」

2020-09-01 17:16:27 | 詩、小説

《ショートショート》※ 少し書き加えました。

 

未来のある日。

 

私は大きな門の前に立っていました。

「ああとうとう、私もこの門の前に来たんだな。」

ほんの少しの悲しみと虚しさを感じながらも、なぜか一つの仕事をやり遂げたような、そんな気持ちにさえなっていました。

その門は、自分に与えられた時間が無くなってしまった後に辿り着く門でした。

 

そこには無口な門番が立っていました。

「私が来ました。」

そのように門の前で堂々と言うと、その門番は黙ったまま私の背後を指さしたのでした。

振り向くと、果てなく続く丘が目に飛び込んできました。

そしてそこには、この門の並びにある狭い入口から中に入ろうと、

人々がずっとずっとひしめき合って、果てもなく続く丘を埋め尽くしていたのです。

ただ人々の丘は、天空からの星々の光が反射しているのか、眩しいほど輝いていて、目を細めなければ見えず、

最初には気が付かなかったのでした。

 

「私はこちらの門からは入れないのですか。」

驚いてそう聞くと、その門番は黙って頷きました。

 

ああ、そうなのか。

それがここでの仕組みなんだな。

そう思いました。

 

ところが意に反して、私は膝をガクンと落とし立てなくなってしまったのです。

そしてハラハラと涙を零しました。

涙が涙を呼んで、

私は激しく嗚咽し、

そして、とうとう大きく声を張り上げて、

泣き女のバンジーのように、悲鳴をあげながら泣くようになってしまいました。

 

「大丈夫だ。皆ここではそうやって泣く。」

そう声が聞こえたので、驚いて顔をあげると、

先程の門番とは違う別の門番が立っていました。

ただその門番は丘の方に立っていたので、眩しくて顔がはっきりとは見えませんでした。

 

「悲しいのではありません。」

私はちょっとだけ嘘をつきました。

しっかりと悲しかったのです。

「虚しいからでもありません。」

また私は小さく嘘をつきました。

本当はとても虚しかったのです。

 

だけど

「恥ずかしいのです。」

と私は言い、それがこの涙の理由である事が分かりました。

 

「確かにわたくしは、地上にいる時は

何もなさず、また為す力もなく

ちっぽけで

過ぎる時間と季節をただ眺め、虚しく過ごし、

自分に与えられた時間を、ひたすらに通り過ぎてきただけの者かも知れません。

それでもわたくしは感じておりました。

きっとこの扉の向こうにいる方ではないかと思うのですが、

誰かが私を愛し見守り、そして守ってくれているのだと。

だから時には不公平な扱いや理不尽な世の習いにも、耐えてくることが出来たように思うのです。

わたくしは大事な方に愛されている特別な人なのだと信じてきたからだと思います。

それなのに・・・・・・

なんと恥ずかしい事でしょう。

わたくしは何にも特別な者などではなく、

地上にいた時と同じように、何の取り柄もないような惨めな存在だったのですね。

なんと惨めな事でしょう。

何故にわたくしは、自分をそのような特別な人なのだと思い込んでしまったのでしょうか。」

と言って、またさめざめと涙を落したのでした。

 

「それが真実だからなのではないのか。」

と門番は優しい声で言いました。

「愛されて見守られ、そして守られてきたのだよ。」

私はゆっくりと顔をあげ、その門番の顔を見ようとしました。

だけど門番が

「ほら見てごらん。」

と、丘の方を指さしたので

私は振り向いて、キラキラと光り輝いている人々がひしめき合っている丘の方を見たのでした。

 

「あの丘にいる人々もまた、同じように愛されて見守られ守られてきた者たちなんだと思うよ。

ある者はたった一度のその者だけの時間を、他者の命を奪うモンスターとなって潰えてしまった。

またある者はそのモンスターに夢半ばで理不尽にも命を奪われてしまった。

例えそのような者たちであったとしても、やはり同じように愛されていたんだよ。」

そう門番は少し悲しそうな声で言いました。

 

私はようやく立ち上がり、その丘の人々を眺めていました。

あの丘が光り輝いていたのは、星々の光が反射していたからではなかったのだなと気が付きました。

彼らは皆、特別な人だったからー。

 

神の愛とやらも仏の慈悲とやらも、

誰かを選んで与えられたものではなかったのだなと、私はしみじみと思い直しました。

 

「それに、」

と、また門番は言いました。

「あの丘に並ぶのは、また違う意味があるんだよ。既に時の概念は止まり、

あの丘の向こうからこの狭い入口にやってくるまでを、長いと感じるか短いと感じるかは人それぞれだ。

だけど人はその間に、地上にいた時の事を悔やんでみたり思い出しては幸せな気持ちになったりするんだよ。

時には、その悔いの想いでのたうち回り、業火に焼かれる悪夢さえ見る。

または美しき心に反応して、見た事ものない花園をイメージの中で作りだしたりもする。

だけどやがては、」

そう言いかけて、門番は黙ってしまいました。

 

「怖い。」

そう私は思いました。

業火で焼かれる夢を見るか、それとも美しき花園の夢を見るのか、

私はどちらなのでしょう。

だけど心の奥底では、なんとなく自分の見る夢が分かっているような気がしました。

私はきっと、普通に朝起きて家族のために食事を作り、そして未来の夢を見て本を読んだり絵を描いたりして一日を過ごし、笑ったり怒ったり涙したり、誰かを心を込めて愛したり、そんな地上にいた時と何ら変わらない、そんな夢を見続けるのではないだろうかとー。

 

「だけど、私は行きますね。

だって私もまた特別な人のひとりなのでしょう。」

だから怖くても大丈夫。

そう自分に言い聞かせると、門番は優しく肩をトントンとたたきました。

 

「ところであなたは、本当に門番なの。」

そう言って振り向くと、

その者は既に何処にもいませんでした。

 

驚いて、辺りを見回す私に、

少し離れて立っていた無口な門番は、大きく二回ゆっくりと頷いて見せたのでした。

 

 


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自分の中の

2020-05-22 00:47:58 | 詩、小説

ちっぽけな私がいる

ちっぽけな私が怒っている

怒っている私をじっと見ているもうひとりの私がいる

怒っている私をじっと見ているちっぽけな私がいる

 

同じちっぽけな私なのに

悟ったような顔をして

「まあまあ」なんて言うんだよ。

 

ちっぽけな私がいる

ちっぽけな私が笑っている

笑っている私をじっと見ているもうひとりの私がいる

笑っている私をじっと見ているちっぽけな私がいる

 

同じちっぽけな私なのに

泣き女のように涙を流しながら

「無理するなよ」なんて言うんだよ。

 

ある時私は泣いていた。

理由もなく泣きたいから泣いていた。

涙が手のひらに溜まるほど泣いていた。

 

ちっぽけなもうひとりの私が

「君はほんとうにちっぽけね。」なんて言うんだよ。

だから私も「あなたもね。」と言い、

そして私と私、

にっこり微笑んで今日と言う日の旅に出るんだ。

 

 

 

 

 

 


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