森の中の一本の木

想いを過去に飛ばしながら、今を見つめて明日を探しています。とりあえず今日はスマイル
  

ねぇ、君さ。。

2006-11-05 02:43:54 | 詩、小説
  
  だけど、君
  それでも、死んではいけないんだよ
  
  例えばさ、
  呑気に長電話やお茶のみばかりしている陽気なお母さんのその昔、
  クラスに誰も友達と呼べる人がいなくて、
  なるほど、孤独とはかくの如し―なんて事を考えていたなんて知らないでしょ


  
  歩くたびに寂しい、切ない、そんな思いが揺れて胸に突き刺さってきたよ
  その時、彼女はこんなことを考えていた
  
  ―今私が死んだら、私の気持ちなんかに興味のない親達は嘆き悲しむかしら。
  明るくて、ニコニコおしゃべりしているのが当たり前と思っている父、母。
  イラついている私を見るのが嫌い、誰よりも厳しい言葉で私を押さえつける。
  ある日突然、私がいなくなったらば、どんなにか私を愛していた事を思い出してくれるのだろうか。

  私を追い詰めたのはあの子とあの子
  名指しで責めたならば、私の心を切り裂いているあの人たちは
  後悔して、自分の愚かさに気付くだろうか。


  今日死んでも明日蘇る事ができるならば
  私は死んでみたかった。
  気が付いてもらいたくて、
  復讐したくて、
  死んでみたかった。―

  でも、命はたった一つしかなかったから
  そんな人たちの為に、使うわけにはいかなかった。
  お母さんは、そんなことを考えながら歩いていた道だって覚えているよ。

  
  
  それで、それから彼女はどうしたのかって言うと、
  しんしんと雪が降る音を聞くように
  じっとじっと耳を澄まして、心に積もっていく孤独の音を聞いていたよ
  
  
  澄ました耳からはね、
  一冊の本からのメッセージ、音楽の調べ、画家の心、
  彼女は多くの言葉を手に入れた


  そして、やがて春が来て積もった雪の下から美しい花々が咲き誇るように
  心の中のつもり積もった孤独も、ある日突然、溶けて無くなってしまった。

  季節が巡ると言う事はそういうことなんだよ。



  だから、君
  もう死ぬなんて言わないでくれよ

  その苦しみは、人生が君にだけに送った贈り物なんだ。
  「苦い、苦い」と言いながら、泣きながら
  それを飲み干せばいいよ。


  それから目を開けて見るんだよ、
  1000メートル先に住んでいる人の、悲しみを。
  それから感じるんだよ、
  10年後の自分が、今の自分を思い出している姿を。
  
  捨ててしまった想像力を拾ってね。


  ねぇ、君さ。


  
   
  

  


  

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1 コメント

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こんにちは。 (あつこ)
2006-11-18 09:57:17
あのう・・お願いがあるのですが。

kiriyさんの詩、とても良いので、
こちらで紹介したいのですがどうでしょう?
http://blog.goo.ne.jp/letters_for_you

最近更新がストップしているけど、
ここはもともとネットを彷徨っている子どもたちに
何かを伝えたいと思って始めたブログなの。だから、
筆者のひとりになってくれると、もっと嬉しいけれど。
ちょっと考えてもらえませんか。
(お返事は、もしできたらこちらにお願いします。
 http://form1.fc2.com/form/?id=46986
 いきなりすみません)
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