「バットマン・ビギンズ」特集はこちら。
あまりにもヒットしすぎて「~ビギンズ」の影がすっかり薄くなってしまった。つづけて観たことで、驚くほどコンセプトがいっしょであることを痛感するのだけれど。
第二作は、前作で邸宅を全焼させてしまい、ブルース・ウェインが仮住まいをしている間のできごと。つまりほとんど前作の直後のお話。これはあのラストシーン(ジョーカーの出現)とつながっているわけね。
(まだ)無色で純粋な存在であるブルースは、ひきつづき年長者から説教されまくり。
「密生した森は焼くしかない」
「人間は理解できないものを怖れる」
つまりまっとうな教養小説の体裁をとっているわけだ。クリスチャン・ベイルを取り囲むのがマイケル・ケインやモーガン・フリーマン、そしてゲイリー・オールドマンなど、主人公よりもでかい年寄りたちなのがそれを象徴している。
で、そんなビルドゥングスロマンには美しいヒロインは邪魔だとばかりにレイチェル役はケイティ・ホームズからマギー・ギレンホールに変更になっています(笑)
この作品には三人のモンスターが出てくる。ひとりはもちろんジョーカー(ヒース・レジャー)であり、二人目はトゥーフェイス(アーロン・エッカート)。そしてもう一人はバットマン自身だ。財力と体力にものをいわせて悪を葬るバットマンにとって最大の悩みは
「自分の出現がモンスターを生んだのか」だ。
特にジョーカーがそのあたりに意識的で、混沌を求める彼こそが最強の敵になる。第三作以降もこのシリーズがつづくとすれば(ワーナーは早く次作を撮ってほしいだろう)、ヒースジョーカーを超える演技が次のモンスターには求められるのだ。これはしんどいなー。
トゥーフェイスも実に複雑なモンスターになっている。市民のヒーローとしての存在が、一転してモンスターに変貌する二面性をそのルックスで象徴するあざとさ。しかし彼のあやつるコインにはひとつの面しかなかった……うまい。
アクションもすごい。なにしろブルースの技の多くは、自分の身がどうなろうとも目的を完遂しようとする“抱きつき心中”に近い。さすがコンプレックスの男、さすが暗黒の騎士という感じです。この分だと、執事マイケル・ケインと社長モーガン・フリーマンの心配は終わりそうもない。