第12場 商人の家
商人; 私は人でなしだ。娘を自分の身代わりにした。いや、わが子を見捨てるなんて
獣でもやらない。人でなしどころか、獣より劣っている・・・
青年達、娘達が集まってくる。アンリが出る。
アンリ; ♪ 王様のおいで ♪
王様; ベルは。ベルはどこにいる。
青年・娘達; ♪ ベルは・・・♪
王様; やはり結婚したい。今日は連れて帰る。
青年・娘達; ♪ ベルは行ってしまいました ♪
王様; 行ってしまった?どこへ?
青年・娘達; ♪ 森の奥深く 野獣のお邸へ 連れ去られてしまいました ♪
王様; 連れ去られただと? ♪ そんな事が許せるか ♪
商人; 私が悪いのです・・・娘を見殺しにしたのです。
王様; 野獣とは?
商人; 言葉を話す獣でした。
王様; 言葉を話す!なぜベルは連れ去られた。
商人; 私の身代わりになってくれたのです。
王様; 身代わりに・・・商人よ。あなたも人間なら獣は飼いならせ、お仕置きを与え
躾けるのだ。躾けてもなお、気概を与えるなら殺してしまう他ない。
♪ それでこそ人間だ ♪
臣下達、聞け!
臣下達;はっ
王様; 国を挙げ、野獣の邸を探し出す。人としての誇りにかけ。
臣下達; ♪ 人の誇りにかけて ♪
王様、銀橋へ。
王様; ♪ 獣か野獣か ヒトに勝とうというのか
その思い上がりに報い与える
言葉を話すとは ヒトに命令する気か
どちらが主人か 思い知らせる 従うのならば保護を与えよう
干草の寝床 ご褒美のエサを
優しくするうちに 言う事を聞くがいい 鳴き声をうめかせ
身をよじらせて さあ 野獣を探し出せ ! ♪
↓
第11場 商人の家
商人; 私はなんと言う事をしてしまったんだ。ベルを一人残して帰ってくるなんて。
長女; 仕方ないじゃないの。あっとういう間の事だったんだもの。
二女; それにベルは自分から残るって言ったのよ。お父様には私達がいるんだから。
商人; そうはいっても、お前達・・・
青年達、娘達が集まってくる。
青年1; ベルがいなくなったって?どういう事だい。
娘1; そうよ。何があったの?
長女; 野獣に捕まったのよ。
青年達; 野獣!
アンリが出る。
アンリ; ♪ 王様のおなりである ♪
王様; ベルは。ベルはどこにいる。
青年・娘達; ♪ ベルは・・・♪
王様; やはり結婚したい。今日は連れて帰る。
青年・娘達; ♪ ベルは野獣に捕まったと ♪
王様; 野獣だと?
商人; 王様、どうか私の娘をお助け下さい。娘は森の奥深くにある邸に棲む
野獣に囚われているのです。言葉を話すそれはそれは大きな獣で。
王様; (独り言)それは先代の王妃の子・・つまり私の兄か。
アンリ; 王様。そのような事、口にしては・・・
王様; そうだ・・血の繋がりなどない。あれは野獣で私は人間。
♪ 私はこの国の王 そして何をしても許される ♪
臣下達、聞け!
臣下達;はっ
王様; 国を挙げ、野獣の邸を探し出す。絶対に。
臣下達; ♪ 絶対に ♪
王様、銀橋へ。
王様; ♪ 獣か野獣か どんな姿をしているのか
捕まえたら見世物にしてあざ笑ってやろう
言葉を話すとは 人として生きた記憶が残っているのか
兄弟などと認めない 同じ血が流れるなど認めない
お前は野獣 私は王だ
支配するのはこの私 生かすも殺すもこの手の中
ベルは必ず取り返す
さあ 野獣を探し出せ ! ♪
暗転。一人舞台袖に残るアンリにピンスポット。
アンリ; ♪ とうとう実の兄弟の戦いに 我等も巻き込まれる
なんとむなしいことか ♪
暗転。