ネタバレ及び、本当に辛口なのでファンは読まないように。
いかなる反論もなしでお願いします
愛と青春の旅立ち
構成・演出について
原作があるもの。映画がベースになっていたものを新たに舞台化するって本当に
難しいんだなと思いました
何気なく「カサブランカ」を見て感動していましたけど、映画では語られなかった部分を
わかりやすく、また映画とは違った感動を与えてくれた小池先生は素晴らしい
映画がベースと言えば、帝劇の「レベッカ」もそうだったんですが、こちらは楽曲のよさ
に随分助けられていたし、セットも舞台ならではのゴージャスさで脚本の不備を
補っていたと思います。
しかし、今回の「愛と青春の旅立ち」は単に映画をそのまま舞台化しただけの
安っぽいコピーにしか見えず、しかも肝心の「水中訓練」「低酸素訓練」などのシーンが
フォーリー軍曹の台詞だけで語られているので、映画を見ていない人には
何が何だかわからなかったと思います
この映画を最初に見た時から「ヅカ向き」であるんじゃないかとは思っていました。
でもこれって決して綺麗な話じゃないし、何よりも訓練の厳しさや挫折をどう描くのか
というのが最大の難問だと感じていました
ゆえに舞台化は出来ないな・・・・とも。
綺麗な話じゃない部分
→ ザックの生い立ち、ポーラとリネットの置かれている
環境やものの考え方。それらが次第に明らかになって
いく事で人間が持つどろどろとした感情が描かれるのが
この映画のよい所。これを綺麗にまとめてしまうと、薄っぺら
な内容になります。
訓練の厳しさや挫折
→ ザックは障害物競走でトップを走るけど協調性に欠ける。
それは水中訓練でも同じで、一人DORしていく
また、罰を受けるザックに意地悪をするベイリンがやがて彼と若いするとか、
低酸素訓練でパニックを起こしたシドをザックや回りが一生懸命助けようと
するとか・・・・そういう積み重ねがザックを変えて行く筈。
しかし、舞台ではそれらが一切語られず「私は変わりました」と言うので、
は?ってな感じ
私だったらもっと舞台転換を少なくしてザックとフォーリー軍曹、ザックとポーラ、
ザックとルームメイト達の会話を重要視した正塚風に脚色するけどなあ・・・・
ラストの方でシドがリネットに「君の事で悩んだから低酸素訓練を失敗した」と
告白するのはいくらなんでも男らしくないっていうか、実際のシドにそんな台詞ないし。
映画では絶望したシドがモーテルを借り、管理人の前で婚約指輪を飲んでみせる
事で自殺をほのめかしていましたが、舞台の方は「僕だって壁を越えられる」と
わめいて袖にはける・・・これって「リラ壁」となんら変わりない?ような?
しかも「水死体で見つかった」とまたまた死ぬシーンなし。映画は首吊りだけど
せめてナイフでぐさっでザックが見つけるとかしないと、盛り上がりません
ラストシーンも、映画はテーマ曲が流れる中で工場の中に入って来た白い制服の
ザックが後ろからいきなりポーラにキスして抱き上げ、みんなが祝福していく中を
悠々と歩いていく・・・という女の子の究極の憧れシーンなんですけど、これが舞台では
「傷ついたんだ」と二人しかわからない台詞の応酬。
せめて銀橋を抱き上げて歩くくらいは見せて欲しかったぞ
全体的に急ぎすぎではしょりすぎで。
音楽も80年代ポップスを意識したんでしょうけど、だらだらした歌い方にちょっと
怒りモード。
時間が限られているのをわざわざ押し込めようとするわけですから映画と同じようには
ならないと覚悟して頑張るべきでした。
出演者について
柚希礼音・・・・ザック。
演じ方としては間違いないと思います。相変わらず一人で頑張って
いるような印象で。一人だけ上手でも浮くんだよ・・・・
役柄の年齢設定も人格的に未熟な部分も本人に似合っていました。
フォーリー軍曹に散々苛められるシーンで「私には帰る場所がない」と
すがりつく所は泣けちゃったし。
も欲を言えば・・・もう少し色気が欲しい 強がって悪なんだけど猫
みたいに臆病な男に女は惚れるの。
夢咲ねね・・・ポーラ。
映画のポーラはもっと大人でリネットと大きく違っていたと思います。
パブで他の男といる時にザックに「感謝している」といわれた時の
「ああそうよかった。私、役に立ったんだーー」の台詞は
もっと大人っぽく抑制すべきだったと思うのですが、子供が言い訳している
みたいでした。
もうちょっと細かい演技をしないと観客には伝わりませんよ
凰稀かなめ・・・フォーリー軍曹。
映画のルイス・ゴセット・ジュニアを見ちゃうと誰がやっても不満に
見えちゃうと思います
でも、そこは映画とすっぱり離れて「凰稀」ならではのフォーリー軍曹
を構築しました。声の高さと台詞の軽さを生かして、ねちねちと
いじめる軍曹に映画とは別の意味の迫力を感じました
ただ、最後の背中を見せるシーンではもうちょっと教官としての
哀愁を感じさせてくれた方がよかったなあ。
紅ゆずる・・・シド。
何を演じても同じ印象。シドならではの苦悩とか生活環境に対する
不満とか、ザックへの友情とか・・・そういうものを感じさせて欲しかった
見た目がいいのは認めるけど、正直、演技・歌・ダンス、どれをとっても
ひどすぎ。そして今の星にはそれを補う人材もない
柚希と並ぶとよけいに欠点が目立つようで困ります。
涼紫央・・・ベイリン。
そつなくこなしていたような気がしますが、元気がないなあ
本当はもっと包容力があって熱い演技をする人なのに。
磨かれたバックルとブーツを見つけた時も、本来ならもっと表情が変わる
だろうになあと思いました。
白華れみ・・・リネット。
演技は文句なしですが見た目が貧相 もうちょっと太るべき?
他にはシーガーの音波みのりが見た目と演技でよかったのと、真風涼帆の見た目が
一番よかった事でしょうか。
その昔、「技術がない分やる気でカバーします!」の台詞がよかった
絵麻緒ゆう主演の「夢・シェイクスピア」いかにも星組っぽい台詞だなあと感心した
ものです。今は・・・何が問題なのか組子がわかってないし、意志の統一がされ
ていないので、それぞれが頑張ってるけど大きな力になりえない危うさをもって
いるわけです。
それは星に限らずどこの組も一緒で・・・先行きが心配。
VISA貸切の最後のご挨拶の柚希礼音。
「みなさーん。楽しんで頂けましたか?」と笑顔満面。台詞をかんで言い直す
のは昔から変わらず。そんな天真爛漫で優しい笑顔の柚希礼音。
ショーで泣いた友人も「今日の舞台でこの挨拶が一番よかった」って言ってまし
た。私もそう思います。
なぜに舞台で「らしさ」を発揮出来ずに突っ張らないといけないのか・・・気の毒です。