ふぶきの部屋

侍ブロガー、ふぶきが宝塚とドラマ、皇室からワイドショーまで語ります。連載中の小説もお見逃しなく。

キャベツ巻き次第

2017-09-11 07:00:00 | 昭和の少女漫画

常々、娘が嫁に行く時に持たせたいと思っている漫画がありました。

それは市川ジュンの「懐古的洋食事情」シリーズです。

市川ジュンの作品は当ブログの中でも沢山取り上げて来ました。

上品な作風がとてもお気に入りだったんですが、1976年「白い炎」あたりから、「女性の権利」をテーマに作品を書くようになりました。

戦前戦後の参政権の話とか、性差別の話とか、それらも全て上品にコーティングしてますから読みやすいのですが。

1985年から始まった「陽の末裔」などはその最たる作品と言えるでしょう。

「懐古的洋食事情」が始まったのは1987年で「陽の末裔」の脇役達が活躍したりするとても楽しいお話。

で、なぜこれを「嫁ぐ娘」に送りたいかというと、このシリーズの中には現実の結婚生活や夫婦の在り方などのお手本が入っているからです。

その一部を紹介しましょう。

 「昭和元年のライスカレー」

元モガ(不良娘)の愛子さんが見合い結婚した相手は竜平さん。

(当時は一度も会わずに結婚)

彼の為にどんな料理をしようか、自分の実家、彼の実家と渡り歩いて料理を習うけど彼は全然満足しない。

ある日、銀座で絡まれている所を夫に発見され、愛子さんが元モガである事がばれる。そこで竜平さんは「二人の味を作りたいと思っている」と告白。

早速二人でライスカレーを作り始める。

 昭和初期のライスカレーはたまねぎを茶色になるまで炒める所から始まる。お互いを知らない二人の共同作業。いいですよね。

 

 コロッケに明日はない

子爵家の緑さんは生方さんという実業家と婚約。

それまで女性が「家事」を担う事を知らなかったので、とりあえず生方さんの職場に行って「何がお好き?」と聞いてみる事に。

生方さんいわく「コロッケです」っていうので、緑さんは頑張ってクリームコロッケを作って差し入れ、所が生方さんは「ぼくはじゃがいもの方が好き」というので、緑さんはびっくり。改めて自分でじゃがいものコロッケを毎日作って家族に食べさせ、でも頑張りすぎて倒れちゃった。(料理なんてした事なかったのにやたらすごい集中力を見せたので)

それに対し生方さんは「仕事を早く終わらせて二人で何もない所から作っていきたいと思っていたのですよ」と告白。その一言で緑さんはありのままの自分を受け入れてくれると思って幸せな結婚をするのです。

 子爵家のお嬢様は「結婚」といってもただ寄り添っていればいいと勘違いしてたんです。そしたら「家事全般は女子の仕事ですので」と言われ、びっくりして慌てて料理を習おうと思ったんですね。

 コロッケがいいと言われたらコロッケだけを作り続ける所がお嬢様。

 最初は高級なクリームコロッケを作りつづけ、次はじゃがいものコロッケを作り続け・・・そういう純な所がいいのかなあ。

 

 キャベツ巻き次第

長与公爵家の実子様は庶民代表・長谷川淳さんという詩人とご結婚。

アパートで二人きりの生活になりました。

長谷川さんは詩人だけど掃除・洗濯・料理・家計管理全部出来ちゃうエキスパート。

最初は実子さんはそれにうっとりしてたけど、次第に「私は何もしえあげられてない」事を発見。

実家の夜会に出席してごちそうに華やかな衣装を見ても胸がときめかない。

私の幸せは長谷川さんとの生活にあるという事はわかってるけど。

少しずつ家事や買い物を習うけど、なかなかうまくいかない。

でもある日、仕事が忙しくなった長谷川さんは実子さんに構っていられなくなった。

実子さんは一大決心して市場に買い物に。

おばちゃんやおじちゃんたちに「いい家のお嬢様なのに偉いね」と褒められつつ、何を買ったらいいのかわからみて質問。

そしたら「キャベツがいいわよ」と言われ、でもどうやって料理するの?」と聞いたら「モダンな奥様だからキャベツ巻がぴったり」と言われて、色々レシピを教わり、約半日かけて夕食が完成。

味はともかく長谷川さんは「君は社交界だけじゃなくてここでも華形なんだね」といい、ラブラブな生活は続くのでした。

 「リベラル派ですの」と言ってた実子さんのお母様も、実は家事を教えていなかった。だから夜会で顔を合わせると「何でも詰めて持って帰りなさい」とフォロー。実は心配でならなかったのです。

でも実子さんは豪華な食事を食べずにアパートへ帰り、夫が作ったカレーを食べるという庶民派。

 

 東京ハヤシライス異聞

大賞13年に恋愛結婚したるい子さんと新平さん。るい子さんは女流歌人としてやってる職業婦人。

嫁いだ家には生意気な義弟が。

その義弟の嫌味に負けず毎日、家事や料理に頑張り、歌も詠むというるい子さん。

口癖は「大丈夫」

でもある日、とうとう旦那様の給料を使い切ってしまい・・・でも何が何でもお給料日まで持たせるぞ!と決心したるい子さんは、最終的にハヤシライスを考案。

実はこの家には女中さんがいたのですが、妻が早く馴染むようにと暫く暇を出していたのです。

ハヤシライスを作る事で自分なりに婚家に馴染んだるい子さんです。

 味噌汁にケチをつけたり、ハヤシライスを一緒に作ってくれたりする可愛い義弟の存在がるい子さんを励まします。

その他にも、沢山「なるほどな」と思う作品が沢山。

個人的には

 大夜会始末記・・・和をこよなく愛する婚家で突如洋食パーティを開く事になった若妻の奮戦記。

 公爵さまのオムライス・・・公爵様と女中さんの恋。

等が好きです。ぜひ全巻通して読んで下さい。

 

 

 

 

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ポーの一族 春の夢

2017-08-10 07:10:00 | 昭和の少女漫画

以前にも取り上げた事があります。

「ポーの一族」(メリーベルと銀のばら)

 

今回はその続編「ポーの一族 春の夢」を紹介します。

これが今回の表紙。

このエドガーを見て、皆さまはどう思われるでしょうか?

個人的には、あくどさが増したエドガーって感じですけど

 舞台は終戦間近のイギリス。

 エドガーとアランはドイツから来たブランカとノアの姉弟に出会う。

 アランは「眠りの時期」に入り、エドガーは別の一族であるファルカに助けを求める。

 ポーの一族のクロエはエドガーの敵となって登場。

 ブランカはファルカによってバンパネラになる。

 

こんな感じのストーリーです。

今まで考えた事ないけど「ポーの一族」ってポーの村に住むバンパネラの事で、同じバンパネラでも他の一族もいるんだーーと発見した次第。

まさかここに老ポーが出てくるとは!

っていうか、長い間忘れていた「ポーの村」の生活がわかったりして、面白いです。

だって、旧作ではエドガーとアラン以外にバンパネラがいるって印象はなかったもの。

ここにあらたな仲間も出来て、どうなる?とちょっとわくわくなんですが。

昔の「ポーの一族」のストーリーはちょっとわかりにくい部分もありました。

ストーリー展開とか、その分幻想的ではあったのですが。

絵の変化はファンにとって賛否両論あるんじゃないかな。

 大一巻の表紙。

実はこのぼやーーっとした線が苦手で・・・小学生にはわかりにくい。

でもよく読んでたなと自分を褒めちゃう。

後半になってくるとより耽美さが増してきたというか、BL漫画の草分け的存在に。

エドガーとアランの対照的な雰囲気がよかったですよね。

 「春の夢」とポーズが似ているのがこの一枚。

一言でいうと、やっぱりエドガーが持つ雰囲気が変わりましたよね。

この頃は作者も若かったし、どこか少女マンガそのものって絵でした。

背景も色もびゃーーっとしてる。

でも、今回のエドガーは腺がはっきりしているだけでなく、目つきが老成してて(当たり前か)

なんかもう、あの頃の幻想には戻れないですよね。

世間がそれを求めてないのかもしれないし。

アランのわがまま度がウザイなと思ったり、ファルカのキャラが最近の萩尾望都作品ではよくでてくるタイプかなとか。

ブランカのキャラは好きだけど、二度とメリーベルのような少女は登場しないと思うし。

そういう意味ではほんと、メリーベルって世の男性方の理想かもね。

 

とにかく、旧作を知らなくても読める作品ですが、旧作のあれやこれやを読んでからならもっと楽しめる作品です。

 

でも何でエドガーの血を受けるとみんな弱くなってしまうのかなーー

 

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竹宮恵子 ウイーン幻想

2016-02-29 07:00:00 | 昭和の少女漫画

 今、毎日「トンイ」の再放送を見ています。トンイは賤民出身です。

だから側室になるにも結構大変だったようで。

王妃をなくした王様がトンイを王妃にしたいと望むのですが

回りの両班が「賤民出身の王妃などありえない。おやめください」と大反対。

出自がよくわからない女性を王妃に迎える事は王室の権威失墜に関わる

と至極もっともなご意見で、なんでこれを20数年前に、言ってくれる官僚が

いなかったかなあ・・・・と

韓ドラはファンタジーです。実際はどうだったかよく調べないとわかりません。

だけど、そこで描かれるものの考え方などは、いわゆる韓国の「理想」なんだと

思うんですね。

トンイの子が7歳にして「大学」を読破してしまう程優秀設定なのも

ヒロイン(トンイ)の子供は優秀でなくてはいけない」その方が

トインイの株が上がる。賤民出身のトンイの子が並外れて優秀であれば

両班は何もいうまい・・・という心情なんだと思います。

ちょっと、皇后や皇太子妃の考え方と似てませんか?

そして、朝鮮では「王室に入る事は政治を行う事。後宮も同じ。

入ったその日から政治に巻き込まれ、先手先手を打たなけtれば

生き残れない世界」

という考え方が根付いています。

これまた、「皇太子妃・皇后」の立場を駆け引きの道具にしている

今の皇室とよく似ています

もし、現実に皇后陛下や皇太子妃がそのように考えているなら

ただ耐え忍んでいる秋篠宮家は滅ぶだけです。

先手を取らないと。

今の皇室は「正直者は滅ぼされる」場所のようですので。

今の状態で皇太子から秋篠宮家に皇位が移ると思いますか?

奇跡を信じたい気持ちはわかるけど、悠仁親王の誕生も単なる

奇跡ではなく、両殿下の「政治力」の賜物だったかもしれませんよ。

その前後は負け続けで悔しいけれども。

本題。

うちの職場の29歳の女の子。母は50代で、家には

「アタックNO1」と「エースをねらえ!」の漫画が揃っていて

それは読んだ事があるけど、他の漫画はネットの立ち読み程度

なんだそうです。

かの「ベルばら」も大学の授業で、先生が

少女漫画の中で初めて男と女が取っ組み合いのけんかをしたシーンが

ある」と言ってたそうで、思わず「そんな場面あったっけ?」って思ってたら

思い出しました。

3巻でオスカルが酒場で暴れた時。

で、彼女はその部分しか見てないという事で、昭和の漫画家を

ほとんど知らず

小説を書く子のようですが、実はほとんど本を読んでいないのでは

ないかと思われ。(経済的なものもあるみたいですが)

今後、少しずつ昭和の漫画を読ませて参考にして貰おうかな・・・・

最初は何かがいいかなーーと。

ファンタジー小説を書き、大航海時代にも興味を持ち、コスチュームが

大好きな29歳にふさわしい漫画は何だと思います?

ぜひぜひご意見を。

 

で、今回ご紹介する漫画は竹宮恵子

 

「ウイーン幻想」(昭和54年)

この本はオーストリアのウイーン少年合唱団を舞台にした物語が

おさめられています。

 アウフ・ヴィーダーゼーエン(昭和53年 LaLa)

年長者として責任を押し付けられ、自分よりずっと歌が上手な子を

発掘しようとやっきになる少年。

その一方で、いつ「声変わり」をして卒業に至るかわからない不安を

抱いている少年の話です。

 アンドレア (昭和51年 別コミ)

11歳で田舎からたった一人、入団してきたアンドレアは

素晴らしい声の持ち主なんだけど、自分に自信が持てなくて

回りと会話もできず、引っ込み思案で隠れてしまう。

そんな彼を回りは虐めたりするんですが、やがて、アンドレアの

自我が芽を出し・・・・

 ウイーン協奏曲 (昭和51年 りぼんデラックス)

これはどうやら「実話」のようですが、ピアニストの卵が

ウイーンに留学し、一生懸命にレッスンに励むのですが

「果たして東洋人の自分にクラシックを弾く資格はあるか。

表現できるのか」と悩む。

そんな壁を突き抜けてコンクールで受賞していく・・・という話です。

 

「アウフ・ヴィーダーゼーエン」がドイツ語で「さようなら」の意と知ったのは

この漫画でした。「摩利と新吾」でドイツ語の単語などは覚えたけれど

実際の挨拶っていうと「グーテンモルゲン」と「ダンケシェーン」くらいな

もので、そこに「さよなら」はなかったなあ。

ウィーン少年合唱団に関しても、名前は知っていたし、何度か来日した

事もあるし知ってはいたけど、レコードを聞いたり、生歌を聞いたりする

チャンスはなかったです。

だけど、竹宮恵子の題材としてこんなにふさわしい作品はないと思います。

「少年」それも声変わり前の微妙な年頃の感情。

これを描くのは難しいんですよね。

そこらへんを見事にドラマにしてくれちゃったなあという印象。

竹宮恵子は非常にクラシックに造詣が深いようで

そういう作品を目にするとき、自分もなんとなく一段上がったようにさせて

くれる・・・・

ぜひ読んでみてください。

 

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中国の壺

2016-01-07 07:00:00 | 昭和の少女漫画

 今回の作家は川原泉です。

デビュー当時から「花とゆめ」に掲載されていました。

彼女の作品の特徴は「とにかく知識が豊富」という事です。

知識数でいうと三原順が一番かなと思いますけど、川原さんは三原ファンじゃ

なかったっけ?

どことなく作風が似ている感じがします。

デビュー当時から大好きでコミックスは全部持ってますが

今後、随時ご紹介しますね。

で、今回の作品は

 

中国の壺」(平成元年)

表紙中央が趙飛竜で後ろの竜は神竜です。

玄宗皇帝の時代、中国の官僚だった趙飛竜は日本から留学してきた

安曇野羽鳥という青年に出会います。

からかったり教えたりしている内に、羽鳥はすっかり趙を尊敬するように。

しかし、ある日、待ち合わせをすっぽかしたら羽鳥は雨に打たれたまま趙を待ち続け

病気で死んでしまった。

激しく自己嫌悪に陥る趙の前に神竜が現れ、いっそ壺に入ってしまえと言われ

そのまま、代々安曇野の子孫を見守る事に。

そして現代。

子孫の志姫は父亡きあとずっと趙に見守られてきた。

母はお金持ちと結婚したものの、亭主関白の義父になかなかなじめず。

しかも海外出張から帰ってきた義兄は、夜な夜な女装して歩き回る性癖を持っていて・・・・

 

ばらばらだったステップファミリーが、次第に「家族」として絆を深めていくという

珠玉の一作です。

読み終わったあとに残るほのぼの感がいいよね。

 

このコミックスにはもう1作収録されていて

 

殿さまは空のお城に住んでいる」(平成2年)

殿さまの名前は鳴沢信之介。

姫君の名前は鈴姫。

この二人が結婚して鳴沢家25万石のお家騒動に巻き込まれていくのです。

そして多分・・・この二人の子孫が「笑う大天使」のオスカル様こと

斉木和音の母なのです。

コマ割りが細かいし、大名家のあれやこれやの説明がすごくて

年よりにはちょっと・・・レンズが必要だわ・・・と思うのですが

あらためて読み直すと面白いです。

 

そしてさらにもう一つは

ヴァンデミエールー葡萄月の反動」(平成6年)

この作品は「メイプル戦記3

収録されているものですが、時々無性に読み返したくなるんです。

主人公ー貴島覚(きじまさとる)27歳

      沢登蕗子(さわたりふきこ17歳)

さとる君は大企業のオーナーの息子でバリバリの仕事人間。

でも事故をきっかけに精神年齢が9歳になってしまった。

両親亡きあと一人で弟の面倒をみてきた蕗子は、夏休みのアルバイトで

さとる君の「遊び相手」を務めることになる。

見た目は27歳なのに、幼くて素直なさとる君。そして近所の子供達と

昭和の遊びにふける毎日・・・

妙に冷めて大人の高校生のお姉さんと、無邪気な27歳の織りなす

ひと夏の経験・・・みたいな話です。

ラストがハッピーエンドなので安心して読むことが出来ます。

とても可愛いお話なので超おすすめです。

ちなみに「葡萄月」というのはフランスの革命暦というもので

1793年から12年しか使われなかった呼び方の一つ。

「葡萄月」

「霧月」

「霜月」

「雪の月」

「雨月」

「風月」

「芽ばえ月」とかいうんですよ。この呼び方も好きで。

その国々のオリジナルな呼び方があるって素晴らしい事だなあと

当時、思いました。

まあ、日本も負けてないですけどね。

 

知識が豊富になり、ほっこりしたい方にぜひおすすめしたいです。

 

 

 

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天人唐草・鬼

2015-12-25 16:35:00 | 昭和の少女漫画

今回は山岸凉子です。

彼女のすごい所は今もって新作を発表し続けている事でしょうか。

まず一作目は

 「天人唐草」(1979 少女コミック)

天人唐草というのは植物の名前で、「イヌフグリ」というのが正式名称だそうです。

そしてこの話は、よくネットで「外に出せない状態の雅子妃」を形容するときに出てきます。

ヒロインがラスト、気が狂ってしまい「キェーッ」と奇声を発しながら歩く姿。

これが「雅子妃」だっていうわけで、それを知った時は爆笑してしまったんですが。

 ヒロインの響子は厳格すぎる父親と絶対服従の母親の一人娘として育った。

 「女性はしとやかに」の父の下、自分を出せずだんだん萎縮していく響子。

 ある日、「イヌフグリ」という植物を知り、母に尋ねると、代わって父が

  「女の子が軽々しくそんな言葉を話すな」と叱る。母はみかねて

  「別名は天人唐草だからそう呼びなさい」という。

  「イヌフグリ」というのが性器を意味する言葉であり、それがきっかけで響子は

  「性」というものに異常に潔癖になっていく。

 あまりに父が厳格すぎて、響子は本来の明るさをなくし、自分に自信がなくなっていく。

  母もなくなり、父と二人暮らしをするようになると余計に父の影響を受ける。

 従順でありすぎた為、お見合いをしても断られるばかり。そんな時、父が突然亡くなった。

 厳格で清潔な父と思っていたのに、実は愛人がいた。

 響子は知らない男にレイプされ、自分が壊れてしまう。

 

山岸凉子は「親の支配」をテーマに描くことが多いですよね。

例えば「スフィンクス」などが代表的でしょうか。前回紹介した

「パイドパイパー」なども、一連の流れであるといえます。

人の性格や考え方は、育った環境による影響が大きいという事。

親や身内のエゴや自己愛が子供の個性を殺していく・・・そういう心理描写に

長けている人です。

響子のような、引っ込み思案で個性を発揮できない女の子はたくさんいます。

自分の前に立ちはだかっている壁を壁とも知らず、ゆえに乗り越えなかった結果が

「キェーッ」なわけで。とっても気の毒な話だと思います。

ラストシーンは背筋が凍りつくようで、子育て世代は心して読むべき作品ですね。

 

鬼」1997年 月間コミックトム

これを読んだときは涙が止まらず、あまりのショックで放心状態でした。

大学のサークル7人組が旅行した場所は「イゴク寺」と呼ばれる場所。

脱サラして住職さんになった人を訪ねて行ったのですが、そこで不思議な現象が。

実は、その辺りは江戸時代の飢饉で子供達が多数「間引き」された場所なのです。

家族の中で、どうして自分が選ばれ穴の中に落とされたのか。

空腹と悲しみで一杯の子供達の思い。

そして最後に、激しい飢えの為にとうとう、友人の肉を食べてしまった子供。

その子がいわゆる「祟り」を起こすのですが、彼は祟りを起こそうとして起こしているのではなく

ただただ、なぜ今こんな姿になってさまよっているのかわからないだけなのです。

サークルの学生達は菩薩さまに祈る事でその子を極楽へ導いていく。

その一連のストーリーが本当に悲しくて切なくて。

ぜひぜひおすすめの一作です。

 

山岸凉子と言えば最近、「レべレーション(啓示)」という新作を書きました。

ジャンヌ・ダルクのお話です。

大昔、美内すずえが描いた「白ゆりの騎士」と合わせて読むと面白いかもしれませんね。

 

 

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マダムとミスター

2015-12-03 07:05:00 | 昭和の少女漫画

今回は遠藤淑子です。

1985年、ギリギリ昭和のデビューではありますが

実際には平成の作家という事になるでしょうか。

「花とゆめ」でデビューしてます。

最初は絵が下手な作家だなあと思ってました。

ハネムーンは西海岸へ」なんて絵が細かくて読みづらくて。

退引町お騒がせ界隈」も面白そうだけど・・・・という感じ。

「兄貴」あたりからストーリー性が格段にうまくなってきましたね。

それ以来全作揃えています。

 

で、今回紹介するのは

 「マダムとミスター」1993年ー1998年(白泉社)

左側がグラハム。右がグレイス。

グレイスは大金持ちのジョンストン氏とお金目当ての結婚をして遺産を手に入れ「マダム」に。

グラハムは執事。とはいっても実際にはジョンストン氏の養子で当主。

育ちが悪いグレイスと身も心も執事のグラハムが、面白くも温かいストーリーを

編み出します。

昨今、「執事」ばやりではありますが、日本人は・・・というか今時の女の子は

「執事」と「従僕」をごっちゃにしてます。

執事というのは屋敷の人事と経理、マネジメントを受け持つ人。

だけど、「メイちゃんの執事」やら「黒執事」では単なる有能な召使になってますよね。

グラハムは仕事に忠実で、マダムといえども容赦しません。そこが面白いです。

実は二人とも家庭の味を知らない者同士で、そういう所がほろっとさせるんですよね。

本物の「執事」もの、読んでみてほしいです。

 

 

 

 

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砂の城・こいきな奴ら

2015-11-27 07:00:00 | 昭和の少女漫画

 今回は一条ゆかりです。

彼女はとにかく作品が多い。初期から現在まで多いです。

大昔の作品は、どこかねちっこくて鬱っぽい作品が多く、

平静になると、突如はっちゃけて危なくてなんでもありの世界に。

今回は、重いのと軽いのをご紹介。

 

こいきな奴ら 1975年(りぼん)

金髪の双子、右がジュデスで左がジュディス。

上の帽子がクリームでサングラスがパイ。

 

こーんな非現実で危ない世界を描くなんて・・・と当時は思いました。

まずジュデスとジュディスは双子で男の子と女の子。

顔も髪型も全部同じなのに、しっかり男女の見分けがつきます。

二人は伯爵家の御曹司と令嬢。

ジュデスは超能力を持っていて、しかも天才。

ジュディスは武芸の達人だけど頭が弱い・・・二人はとても愛し合ってて

一緒のベッドで寝てます。

だけど、肉体的などうのこうのはないわけ。

両親が死んで一文無しになろうと、カジノであっさり城を買えるほど儲けたり

殺し屋やスリを友人に持ったり。

現実的にはこんなに金持ちはいないよなーーと思いつつ

そういう夢のような贅沢の中で暮らしつつ、事件を解決したり

互いの恋人に嫉妬したり、友達を助けたり

いちいちスカっとしますよね。

超金持ちが全てを解決していく話は、どこか「有閑倶楽部」に似ていますね。

一条ゆかり自身、お金持ちの娘だったけど小さい頃に破産して、貧乏を経験。

お姉さんの方は「金持ち時代」を知っている・・・

そんな経験がこんな設定を作ってしまうんだろうなあと。

とにかく、かっこよくて面白い。それでいて愛情いっぱい。

今時も十分に通用するお話です。

 

 砂の城 1979年 りぼん

表紙の女性はナタリー、後ろの男性はフランシスです。

とにかく重いっ!

どこか「嵐が丘」と似ているような気もしますが。

要するに、お金持ちの娘だったナタリーと、ナタリーパパに拾われた捨て子の

フランシスは次第に愛し合うようになる。

二人は結婚を約束するけど、両親亡きあと、叔母の陰謀で引き離されそうになり自殺を図る。

ナタリーだけは生き残り、フランシスは記憶を失って別な女性との間に子供を作る。

その間、延々とフランシスだけを愛しているナタリー。

やがて事実を知り、追いかけるも彼は人生を取り戻せず死亡、妻も自殺。

で、残された一人息子のマルコをナタリーが引き取って「フランシス」という名前で育てる。

その子とやがて対等に愛し合う・・・けど・・・・

ここまでくると「源氏物語」も入ってますが。

いつも亡き人を思ってはうつうつするナタリー、フランシスを愛してしまうと

今度は歳の差が気になり始める。

やがてフランシスに年相応のガールフレンドが出来ると精神に変調が・・・・

悲しくもどっぷりと地獄を見るお話です。

 

暗くても明るくてもとことんまで描く・・・それが一条ゆかりなんでしょうね。

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今時の女の子に読ませたい昭和の漫画ーあさぎ色の伝説

2015-10-30 08:00:00 | 昭和の少女漫画

今回は和田慎二です。

「あさぎ色の伝説」

 

1976年 花とゆめ LaLa

 

確かに持っているコミックスは白泉社なんですよ。花とゆめコミックスなの。

ウイキによると初出がLaLa創刊号とあり、ああ・・なるほどなと思いつつ。

確かに創刊号買った。表紙は木原敏江じゃなかったっけ?

一角獣のマークが・・・・

だけど、記憶の奥底に「いや、「あさぎ色の伝説の最初は別マだったぞ」という声が。

そうだよね・・・私、ずっと別マの読者で和田慎二自身ずーーっと別マに書いてるし。

彼の作品はマーガレットに載ったものでも後に花とゆめコミックスになってたりするから

油断ならず。

で、考えに考えて思い出した。

そうだ。確かに別冊マーガレットだった。でも体調不良で途中までしか掲載されず。

その後、随分経ってから花とゆめLaLaで完結したのだ」という事。

 

主人公は沖田総司。でも「そうじ」じゃなくて「そうし」と読みます。

当時は「そうし」と読むのが一般的じゃなかったっけ?

70年代といえば「新選組始末記」による空前の新選組ブーム。

古谷一行の土方さん、草刈正雄の沖田さんが大人気

とはいえ、私自身はそんなに興味が持てず。でも友人につきあって

最終回だけみたような・・・・縁側の猫がにゃあと泣いて死んじゃうシーン。

こういう悲しい結末のストーリーは読めないタイプなので木原敏江の「天まであがれ」も

1度読んで終わりました。

後々、時代劇チャンネルで「燃えよ剣」みて「土方さんは栗塚旭が最高」って思ったけど

やっぱり何度もみたいとは思わず。

さらに後々、大河ドラマ「新選組!」を見て。ここは笑えるシーンだけ何度も見てます。

東北人にとって新選組はかなり特別な存在になると思います。

仙台には元隊士が住んでいたし。

ただ、70年代は「賊軍で悪者」の新選組が「正義」として脚光を浴び始めた頃だったのかなと。

相変わらず薩長賛美の中で、こういう「負け組」が扱われるだけで嬉しかったかも。

 

この「あさぎ色の伝説」は新選組がまだ若くてはつらつとしていたころ、沖田総司が

ほんわかとした青年と天才剣士の二面性を見せる物語で、それを見守る土方さんと

近藤さん達の仲間が楽しい物語です。

「あさぎ色」というのがどういう色なのか学んだのもこの漫画です。

 

この漫画の中の近藤勇や山南敬助などがやたら年寄りに描かれているし、

土方歳三だけ若くてかっこよくて、沖田総司は年下のアイドルっぽい扱いになってます。

それでも夢を見ている彼らの事が大好きになりますね。

個人的には、原田さんが富くじに当たって、そのお金を使って吉原の花魁と沖田さんが

一夜を過ごす・・・という話に驚いた記憶が。

あの頃はまだ子供だったのよーーー

泣かずに読める新選組。ぜひ読んでみてください。

 

 

 

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今時の女の子に読ませたい昭和の漫画 パイドパイパー

2015-10-06 07:05:00 | 昭和の少女漫画

 今回は山岸凉子です

 

パイドパイパー」 1990年 メディアファクトリー

 道子は2児の母。夫の転勤で故郷に帰ってきた。

 道子が小さい頃、妹の藤子がこの町で誘拐されて殺された。

 夫は浮気中。しかし道子は子供達の為に頑張ろうと思っている。

 長女の千歳が誘拐された。

 道子は娘を取り返す為に奮闘する。

 犯人は旧家の・・・・

 ストーリーだけ見るとどうってことないんですが。何気にすごい話です。

「パイドパイパー」とはハーメルンの笛吹の事。

どういうわけか子供がついていってしまう声音を持っている・・・そして子供は行方不明に。

道子は浮気し、夫としても父親としても責任を果たさない夫に怒りつつも

どこかであきらめて、今の生活をしようとしています。

しかし、娘の誘拐をきっかけに「自立」していくのです。

 そして犯人の方も、ある意味気の毒でした。

  生まれながらのシリアルキラー・・・それをひた隠しに隠され、さらに犯罪を重ねることになった

  青年。ありのままを受け入れる事が出来なかった母親(っていうか、そんなの無理ですけど)

  が最後に千歳を救って死ぬのが幸いでした。

 もう秋ですが読んでぞぞっとしてみるとか。

 

同時収録 「蜃気楼」はもっと怖いです。

浮気している夫を家に帰すために火事を起こす妻。

その妻はしっかりと陰で夫の身上調査をしていた・・・・

妻は馬鹿だ馬鹿だと思っていたら、実は非常に賢かったという話で。

 

そして「負の暗示

これは「津山100人斬り」と呼ばれた殺人事件を扱った物語です。

昭和初期、津山の村で、ほぼ全員を一人で殺して自決した青年がいました。

だけど真実はどこにでもいる現代的な若者。

甘やかされて育ったばかりに、自己評価ばかり高くなり、ゆえに小さな挫折に弱い。

特に自分の最も弱い所「男の魅力」を否定されたとき、壮絶な殺人事件に

発展してしまうのです。

 

この事件に関しては、のちにルポを読みましたが、閉鎖的な村社会の中で

大元は少し財産があった祖母と村との軋轢が小さな原因になっていたこと

生き残った姉の子供などから見た彼はふつうに優しい青年であった事が

わかります。

「パイドパイパー」に描かれた犯罪者は生まれつきの「気質」

でもこちらは環境要因が大きかったんだなあと。

ともあれ、この絵を見るとどうしたってあのお妃の笑った顔が浮かんで怖いです。

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今時の子に読ませたい漫画 風と木の詩

2015-09-14 07:00:00 | 昭和の少女漫画

お待たせしました。

 竹宮恵子 「風と木の詩」(小学館)

                    1976-1982年 全17巻

 

表紙の上がジルベール・コクトー、下がセルジュ・バトゥールです。

 

高校の時に友達に「すごい漫画があるよ・・・ごにょごにょ」って言われて

手に取った時の衝撃は今も忘れられません

いきなりベッドシーンだよ・・・ ぼかしも何もない。そのまんま。

絵がめちゃ綺麗以外は・・・・・

ええ 私、こんなの読んでいいの?でもR指定じゃないよね。

じゃあ、いいんだよね?読んでも。みたいな

 

BLに免疫がなかったわけではありません(きりっ

当時はBL黎明期 今時の(ごめんっ)ただ受けだの攻めだのって

言ってるBLとは格が違う。やたら高尚な「少年愛」がそこにはあったのです。

かつての「ポーの一族」も「日出づる処の天子」も「摩利と新吾」も

とにかく、どこまでも文学的で高尚な世界を描き出していたのですから。

それまでの「薔薇族」というような概念より、ずっと清潔で若くてかっこいい感に

夢中になる子続出

栗本薫を代表格にした作家による作品も売れに売れまくっていた時代。

「風と木の詩」のヒット後、雑誌「JUNE」が創刊され、一冊丸ごとBLの世界に

はまったなあ私(遠い目)

 

男女の恋愛が生々しく感じる世代にとって、BLはよその国の出来事で

屈託なく、現実をわすれられる「恋愛ごっこ」だったような気がします。

(なんせ男同士は妊娠の危険がないし、実際どんなだか経験ないし)

 

正直、最初に読んだ時から最近に至るまで、この作品の真の価値を

見出す事が出来なかったんです。

表面的なシーンが強烈すぎて、また、ラストがあまりに残酷で

悲しすぎて、そう何度も読みたいとは思わなかったし。

でも、本当に、最近になって、ふと

「風と木の詩」は現代に通じる少年達の「青春」そのものではなかったかと。

青春はいつか終わるもので、いつか大人になっていくもの。

でもジルベールは大人になれなかった。

大きな試練を経てセルジュは大人になっていく・・・というような話ですね。

 

 対照的なセルジュとジルベール

セルジュ・・・父・アスランは清廉潔白な人格。体が弱くて肺結核の療養中に

      ジプシーで高級娼婦のパイヴァに出会い、駆け落ちし、貧しくとも

      幸せな数年を過ごす。

      アスランの病死後、パイヴァは息子の教育の為に彼を祖父である

      子爵に預ける。しかし、そこには意地悪な叔母がいて、虐められる。

      しかしながら、いとこのアンジェリンの存在が心の支えだった。

      そのアンジェリンにやけどをさせてしまった事からセルジュは一人

      ラコンブラート学院へ入る。

      貴族なのに浅黒い肌を持ち、マイノリチィなところに身を置くセルジュ。

      でも彼は人の善意を疑わず、正義感も強い。人気者だ。

ジルベール・・・そもそもは、コクトー家に養子に入ったオーギュストが義兄から

       性的虐待を受けながら育った事。

       それを誰も助けなかった事が心に大きな傷を残す。

       オーギュストは義兄の許嫁をレイプし、生まれたのがジルベール。

       そんなジルベールを愛する人はだれもいず、館でほったらかしに育て

       られてきた。

       そこにオーギュストが登場し、肉体によって彼を支配していく。

 

虐待・・・それが言葉による差別であったり、叩いたりつねったりするようなもの

であっても、性的なものであっても、傷つくのは常に「被虐待者」です。

でもセルジュは叔母に虐められても、回りから「ジプシー」と差別されても

決してひねくれる事はなかった。

その背景にはセルジュがほんの数年だったけれど、両親や近所に愛されて

そだった事や、ピアノの才能という心のよりどころがあったからと思われます。

しかしながらジルベールはネグレクトされて育った為、自分が許容される

体験がなく、ゆえにオーギュストの強引な性的虐待を「愛」と信じ込んで

溺れていくのです。

 

元々は頭が良くて様々な才能にあふれていた筈のジルベールは

セルジュに出あうまで「普通の生活」を知らず、ひたすら肌をくっつけあう事でしか

「安心感」を得られないという・・・今、思えば十分施設入所レベルの被虐待児です。

二人が出会って、恋に落ち、やがて、かつてのアスランのように

手に手をとって駆け落ちするものの、育った環境や過程があまりにも

違いすぎる二人は次第にすれ違い・・・やがてそれがジルベールの「死」に

繋がっていくのです。

その「死」はセルジュにとってまさに「青春の終わり」でした。

ああ、青春の傷というのはこんなに深く突き刺さるものだったか・・・と思うんですが。

でもそんな「傷」を抱えたからこそ「青春」は思い出になりうるんでしょうね。

 

今時はBLは常識。

本屋さんに行けば、それだけのコーナーが溢れかえっています。

今は「少年愛」も多様化し、シチュエーションと快感のみに

焦点をあてている「R指定なしの×××本」かなと思ってしまうほど。

でも、なんだかんだいって「BL」がここまで浸透したのは先達のおかげ。

萩尾望都(彼女は後に「残酷な神が支配する)で性的虐待を正面から

 取り上げますが) 山岸涼子、木原敏江、河惣益巳、そして何より

竹宮恵子の力があったればこそ。

そういう意味では、若い方々にぜひ読んで頂きたい本です。

 

 

 

 

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