ふぶきの部屋

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あの花が咲く丘で君とまた会えたら

2023-12-12 07:00:00 | ドラマ・ワイドショー

 姫ちゃんとみて来ました。姫は天寿光希が出演するというので私はそのつきそいと言ったところ。

ネタばれあるし、相当な辛口なので読みたくない人は読まない様に。

 成田洋一脚本及び監督へぶつける大いなる不満

① 時代考証がひどい

この監督、私より5歳も年上のくせに、戦前とか戦争中の事をまるっきり知らない。

1945年の「町」に「ぜいたくは敵だ!」なんて看板はないですよ。

「一億総火の玉」もない。

設定は特攻機地のある町。

そこには主人公「百合」の名の如く百合の群生地がある・・・って、百合が自然にあんなには咲かない。ここからすでにちょっとひいてしまった。

百合が入ったのは防空壕だった場所。この場所がまるっきり生かされず、若い人は「あそこって何?」状態。

「鶴食堂」はどっかの映画の二番煎じというか、手紙を預かったりするのもパクリ。

手紙って検閲対象は軍人だけじゃありませんので、兵士から預かった手紙は終戦後まで投函出来なかった筈です。

当時の軍には沢山の食料や酒、砂糖などがあるので軍指定食堂は物資に困る事はない筈で、質屋まで行くのはやりすぎです。

一般人は「配給」でしのいでいましたが、砂糖などが配給になるのはこの時期まれで、氷に砂糖水をかけて食べる贅沢はありません。(軍のお偉方なら別ですが)

当時なら「隣組」があり、無論予備役の軍人が毎日のように防火訓練などをやっていた筈ですし、空襲の時は防空壕に逃げ、あるいは消火活動をしますのでみんなが逃げまどうというのは田舎では珍しいのでは?

恐らく監督の印象では「東京大空襲」が頭にあったと思いますが、山や橋の下、川辺には防空壕がありますから。

更に申せば、B-29が狙うのは最初に飛行機がある基地で、そこが無傷というのもおかしいです。

また佐久間彰は早稲田と言っていましたが、そうなると昭和18年の学徒出陣で徴兵された筈で、位は「少尉」です。また、

彼らの階級がはっきりしませんが、軍では最も大事で、海兵隊卒、予科練、学徒出陣でそれぞれの立場や考え方が違います。

「特攻」という言葉が多々出てきますが、当時は「特攻」という言葉は禁句です。

知ってるけどあえて口にしない。基地の外の人は知らない設定です。

百合が憲兵隊に捕まるシーンがありますが、ここも、本来なら百合は「アカ」指定で、即警察に引っ張られて拷問を受ける筈。鶴さんも仲間とみなされ同様です。それくらい「日本が負ける」という言葉は言ってはいけません。

鶴さんも彰も「正直でまっすぐ」と百合を評価しますが、あの時代の人であれば「非国民」とののしらないとおかしいです。

それと憲兵隊に鶴さんが「生き神様」などと言いますが、それも公にする事ではありません。憲兵隊が帝国軍人の制服を知らない筈もなく、意味なく彰を殴る筈ありません。

また、板倉が逃げるシーンがありますが、これは絶対にありえません。

翌日に出撃を控えた兵士が一人逃げたら、即山狩りが始まって捕まって軍法会議にかけられ、牢屋で拷問です。無論、他の仲間も同罪か、出撃停止になります。

ゆえに「お前は逃げろ」とか言える筈がないのです。

加藤が「帝国軍人か」と叫びますが、ここは「貴様それとも日本人か」と言うべきです。

板倉の思想は、当時で言えば「アカ」つまり共産主義そのものの考え方で、容認できる思想ではないし、そんな形で戻って来られた婚約者も困る・・・と思ったら、実は病気で特攻に行けなかった?って?そんな人が特攻基地に写真を載せるのも、本来は「生き恥をさらす」事で本人が「いいですよ」と言う訳ないのです。

なぜ、彼らは特攻を選んだか。それは「国を守る為」です。

自分が犠牲になる事で、身近な人が助かればいいという事です。

そういう思いがなかなか、彰から伝わってきませんでした。

 

② 百合の性格がひどすぎる

百合は令和に生きてる女子ですから、いきなり1945年に行ったら確かに、最初は「おかしい」と思うかもしれません。

しかし、彰と出会う事で、なぜ彼が特攻を選び、死んだのか?

単なる恋愛ではなく、そこに「誰かの後の幸せの為に犠牲になる」という事を学ぶことがテーマの筈ですが、百合の考え方は最初から最後まで共産主義そのものでした。

日本は負ける」と平気で口に出せるのも変ですが、彰が「日本が負けたらひどい目にあう」と言った事に対して「そんな事ない」と言います。

彼女は成績優秀なのに歴史を知らないの?

戦争に負けたからアメリカに占領されて、沢山の女性達が慰みものになった。父親のいないハーフも生まれた。そういうものを乗り越えて令和の平和があるのに。

「何でそんな事しなきゃならないの?」

「そんなのおかしい」

「生きてる事が恥なんておかしい。生き恥なんていうな」って・・・

「生き恥をさらす」というのは、女性であれば貞節を奪われる事であったり、その上での死であったり、男性にとっては奴隷にひとしい扱いを受けること。日本人として、そんな扱いを受けるのなら自害すべき・・・というのが当時の思想なのです。

人間としての最後の尊厳を奪われるくらいなら死んだ方がいい・・という考え方は今もあるのではないでしょうか。

最初から最後まで共感出来ないヒロイン。なぜこの子に彰が惹かれたか私はわかりません。

③ 監督の勉強不足が、様々な戦争映画のパクリ要素を生んだ

監督はちゃんと太平洋戦争の時代の勉強をしたのでしょうか?

用語ばかり覚えても、その当時の人達の生き方や生活を追体験せずに映画を撮ると、こんな駄作になってしまうんだなと、あらためて思いました。

1995年公開、唐沢寿明・木村拓哉主演「君をわすれない」も相当叩かれましたけど、あの方がまだいいわ。そのラストシーンの白い雲が「君を・・・」のラストそっくりなんですよ。

空襲の時に流れてた音楽は「永遠のゼロ」に似てたし、鶴や食堂の話は「ホタル」ですよね。

戦争映画に大切な事は事実をきちんと描く事。

そして、当時にはない思想を入れてはいけないということです。

戦争を背景にした恋愛物でも同じです。

「永遠の0」や「真夏のオリオン」を見た身には、この映画はあまりにもひどすぎた。

一緒に見た姫ですら「おかしい」と言った程です。

 

 光る伊藤健太郎の演技

ヒロインの福原遥には罪はない。一生懸命に演じたと思う。でもセリフのまずさに全てを台無しにされた感じです。

彰役の水上恒司はセリフが棒読みで、特攻隊の悲哀を感じられず。

その他の特攻隊メンバーも、演技が下手で見ていられない。

しかし、その中でただ一人、光った人がいまして、伊藤健太郎でした。

彼が演じた石丸は非常に明るくておちゃらけた人物ですが、彼が千代を呼び、人形を受け取ったシーンでは号泣してしまって。ただ一人、リアルな演技をしていました。

それは一緒に見た姫もそうで、なぜかと彼女なりに考え、「健太郎君は観客目線で演じていたのではないか」と言いました。

そしたら、伊藤健太郎は実はこの映画の為に遊就館へ行き、4時間も滞在。

彼の勉強の結果が、あの一瞬の演技に集約されたのだと思うと、非常に嬉しくなりました。相手役の出口夏希も純粋な女学生をよく演じていて、このカップルこそ、本当の恋物語だったのではないかと思います。

現代に戻って来た娘を迎えた母が「どこにいたの」と聞いたけどそく「ごめんね。そういうことはきかない」と言いますが、これもおかしい。

一晩娘が帰って来なかったら警察に行くし、「どこにいて何をしていたのか」と聞くのは親としての当然の義務ではないですか?

父親の死を「無駄死に」と断じ、1945年の特攻隊に会っても「何で行かなきゃならないの」って最後まで思っていたヒロイン。母親が謝るのはおかしすぎ。

母としてこのシーンは怒ります。

 

という事で、辛口になりましたけど、私自身若い頃は太平洋戦争や第二次世界大戦についての知識は乏しく、なかなか興味を持てませんでした。

でも、1995年、終戦50周年の時に「君を忘れない」を見て、俄然特攻隊に興味を持ち、その後「きけわだつみの声」を読み、戦争関連の本を読み漁った経験があります。

一つの映画によって興味を持ち、そこから勉強したり、本を読んだりして知識や解釈を発展させていくことは大事ですが、残念ながらこの映画はそうはいかなかったようです。

いうなれば同じ1995年に公開された織田裕二主演「きけわだつみの声」に匹敵する程「見てはいけない映画」です。

なぜなら、特攻隊に限らず戦争で命を落とした全ての兵隊さん達への侮辱に他ならないと思うからです。

 

福山雅治の曲と歌詞だけ、納得出来ました。ほんと、泣ける曲です。


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (彩夏)
2023-12-12 11:22:15
こんにちは。
こういう話だったのですね。なんか泣けるとかよく宣伝文句を見てはいましたが、内容は知らなかったので詳しくわかってよかったです。
どんなきっかけでも関心を持ってより正しい情報を知りたいと映画を見た人が思ってくれたらいいですね。それぞれの立場で意見の違いはあると思いますが、時代考証があきらかに違うとかはダメですね。間違ったものが拡散して印象づけられるのは絶対いけません。
Unknown (千菊丸)
2023-12-12 17:51:51
原作を読んで内容は知っていますが、時代考証が雑で、ヒロインに共感できませんでしたね。
恋愛物としては良かったのですが、設定がね…
Unknown (さら)
2023-12-13 00:49:31
私の母は戦争で父を亡くし、会った事もないまま昨年亡くなりました。祖母は職業軍人だった祖父と最初は満洲で暮らしてました。そしてお腹に子供が出来たため、満洲から早く内地へ戻って来れたため私たちは生を受けて生きています。
職業軍人だったため、お腹の子供を見る事も出来ず南方戦線に配属されて戦死しました。
遺骨もありません。昭和18年に南方諸島から出した手紙が我が家には残っていました。何がいいたいかと言うと、戦後に生まれた人たちでも、あの戦争をどう捉えているかはさまざまだと思います。私は小学校の低学年から祖母より、お盆のたびに仏壇の前に座って、話を聞いて育ちました。だから戦争映画を見ても響きません。もっと狂気なものだと思います。時代考証をする方はどうか体験した人からしっかり話を聞くべきです。もうあまり残ってませんが。祖母も98才で一昨年亡くなりました。
戦地からの手紙には、〇〇大尉の仇を打つ時が来た。これが最後の手紙になる。そして自決するしかない現実も記してありました。中身は国に対しては触れず、妻と見る事も出来ない子供に向けて、内地の兄弟に向けて身の振り方、自分の生命保険が80円づつ積み立ててあるからそれを使ってくれなど、、母の生まれる2ヶ月後に届いた手紙でした。仏壇の引き出しに大事に和紙に包んでありました。身近に本物の体験者がいた事は本や映画ではないものを知ることが出来てよかったと思って育ってきました。私から更に娘へ、そして孫へとありのままを伝えていきます。
戦地からの手紙は母の棺に入れて、あの世で父を探す手掛かりにしました。80才の娘が28才の父と間違いなく会えるために。
何か話しされましたが、大事な体験をしたものとして書かせていただきました。
Unknown (しりうす)
2023-12-13 08:00:47
おはようございます

観に行く前に知れて良かったです。

私がこれまで観て良かったと思えた特攻隊を扱った映画は「THE WINDS OF GOD(’95)」です。
元自衛官の俳優、故今井雅之さん主演でした。

今作同様タイムトラベルというか転生物ですが、巻き込まれ逃げたいだけの若者が、特攻隊として戦う覚悟を決めていく心情の変化や仲間との場面が思い出されます。

実は、今井さんを知ったのは90年頃?の筑紫哲也のNEWS23のコーナーでした。元々舞台劇ですが、表面の反戦的に見える所だけを見て取り上げたのだろうなと、思い出しながら上映を観てました。

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