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後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

大戦争と人種差別の時代の20世紀も遠くなる・・・バーダマン著「アメリカ黒人の歴史」

2012年01月15日 | 日記・エッセイ・コラム

J.M.バーダマン著「アメリカ黒人の歴史」NHK出版という本は新しい視点に立ったアメリカの歴史書です。

従来、アメリカの歴史書でまったく無視されていたアフリカ系黒人のアメリカ社会への貢献やその文化史的検討が総合的に公平な立場で書かれた画期的な出版です。

15世紀にアフリカへ渡ったポルトガル人がヨーロッパでアフリカ人奴隷の貿易を始めたのは1441年といいます。

そして1565年にはオランダ船に乗ったアフリカ人奴隷がフロリダに到着するのです。1644年にはアメリカから黒人奴隷の輸入のための船がアフリカへ派遣されます。それ以来、アフリカで奴隷狩りにあった黒人達が陸続として南部の農園地地帯に輸入され、その地の農業の発展に大きく寄与しました。

南北戦争後は数多くの奴隷が南部から北部へ移動して工場労働者としてアメリカ工業の発展に大きく寄与したのです。

しかし、黒人への差別と理不尽な取り扱いは20世紀の末まで続いたのです。あまりにもむごい仕打ちです。凄まじい人種差別を経験したことのない日本人が見たら、胸の潰れるような差別と圧迫だったのです。

アメリカは進歩的なキリスト教国です。プロテスタント宗派のキリスト教国です。しかし黒人への差別と非人間的な取り扱いが1565年から2000年近くまで、実に400年以上も続いたのです。

宗教の無力さを思うと残念で仕方がありません。

バーダマン著「アメリカ黒人の歴史」NHK出版をご推薦いたします。

お読み頂いて、人類の残酷さや愚かさを絶対に忘れないようにして頂きたいと思います。ヒョッとしたら日本人も同じようなことをしていたかも知れないのです。

以下に私自身がアメリカで実体験した黒人差別の記述を掲載します。2008年2月6日に掲載した記事の抜粋です。

====私が実地で体験したアメリカ黒人差別の凄まじい実態======

◎50年前のアメリカの黒人差別の実状

1960年から二年間、オハイオ州の州都コロンバス市に住んだ。バスに乗ると、白人は前半分の席、黒人は仕切りの後ろ。遠慮して黒人の席に座ったら、白人男性が寄って来て、君は前半分に座れと言う。それ以来、白人席の末席に座る。

コロンバス市の南半分は黒人街、北半分は白人が住む場所と厳格に分かれていた。白人街にある映画館やレストランは白人専用で、黒人はよほどのことがない限り立ち入らない。

オハイオ州立大学には黒人学生がいたが、その数は圧倒的に少ない。教授は皆白人である。実験室の掃除人はメキシコ人で、黒人はいなかった。差別に心が痛み暗い気持ちになる。

しかし、黒人をこの芝居の黒子と思えば黒人が見えなくなる。

慣れてしまうと実にそれほどは胸が痛まない。

アパート代の安い黒人街の物件を見に行った。案内の黒人女性は柔和で親切である。アパートも当時の日本の住宅事情に比較すると上等だ。

引っ越そうとして大学の白人学生に相談した。ものすごい勢いで反対される。黒人は親切だが、貧しい親戚がしょっちゅう君のアパートに来て食べ物をねだる。勉強なんかできないと言う。反対の理由はそれだけでないようだ。黒人差別の秩序が壊れるのも反対理由である。

アメリカは自由と平等の国というが、50年前には凄い黒人差別が厳然としてあった。

@黒人差別克服への努力、そしていろいろな試みの挫折

その後、ベトナム戦争があった。黒人兵は危険な最前線に出て活躍したという。国内では黒人差別撤廃の公民権運動が盛り上がる。

リーダーは、後に白人に暗殺されたキング牧師。師の亡くなった日を哀悼の休日とする州が数多いが、オハイオ州も全官公庁・学校が休みになる。

1990年前後にもコロンバス市に二年間住んだ。バスの白人席と黒人席はなくなり、皆一緒に座っている。オハイオ州立大学も黒人学生が随分と増えていた。周辺レストランの客席に区別はなく、混じって座っている。

同僚のR教授とビールを飲みながら、「30年経って住んでみると、黒人差別がなくなっているので驚いた」と言うと、R教授は「先祖の犯した罪は子孫が償う。公共の場所での差別はなくなった。しかし、居住地は相変わらず南と北に分離されている。黒人学校と白人学校は依然存在している」。

R教授は悩ましそうにしている。「表面的な差別は撤廃できるが、心の中の差別は簡単になくならない」と続ける。「でも、先日、白人と黒人の若者が一緒に楽しそうにバーベキューをして騒いでいたが…」「そのような慈善活動をする若者グループが多くあり、混合ダンスパーテイなども実行する。しかし、帰る家は別々の住宅街にある」。

コロンバス市では、黒人小学校と白人小学校の児童分布を平等にするため、毎日、バスを黒人街へ迎えに行かせ、白人小学校へ送り込む。白人住宅地域へもバスを送り、その逆を行う。こうしたバス送迎を徹底し、白人と黒人の児童が完全に交じり合った教育を三年間続けた。

しかし、黒人学校は特有の教え方と遊び方がある。それは白人学校の教育や友達同士の付き合い方と異なる。大人の偽善的な試みの犠牲になるのは両方の生徒である。この試みは両方の反対に遭い挫折した。

Ar1295923947581571_2  @黒人差別撤廃への白人による社会運動の成功

1990年以後にもアメリカ各地を旅行した。

色々聞くと、どの会社も黒人を一定割合以上採用しなければならない。

テレビ・マスコミも黒人差別撤廃のキャンペーンを繰り返す。白人だけの高級住宅地区へ黒人も混じって住んでいる。

黒人市長があちこちで現れる。

そして2000年代になって黒人女性のライス国務長官が活躍する。

4年前には大統領として黒人のオバマ氏が就任したのです。

公民権運動のさなか銃弾にたおれたキング牧師は喜んでいるに違いありません。

それにしても400年にわたる黒人の徹底的な差別の歴史はアメリカ合衆国の暗黒面です。宗教の無力さを思うと粛然たる気持ちになります。

人類の文明は進歩しますが人間性の進歩があまりにも遅いのです。いつまでも、いつまでも黒人の奴隷狩りと奴隷制度の事実を忘れないで、完全に人種差別の無い世界が来ることをお祈りいたします。(終わり)


野田・岡田両氏のお陰で日本が安全な国になる・・・本を数冊買う気持ちになる

2012年01月15日 | 日記・エッセイ・コラム

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野田さんの総理就任以来、日本の政治が落ち着いてきました。国民に対して高速道路をすべて無料にするというような甘い事を云わずに、消費税の増加政策を決定したのです。国家財政が毎年赤字を続ければギリシャやイタリーのように日本の財政も破たんするのが当然です。借金で国の財政を支えている状態は、家計が赤字になったのでサラ金からお金を借りてしのぐと同じ位危険な事と私は思っていました。

サラ金ほど利子は高額ではありませんが、国家財政が危機になれば国民の生活が破綻するのです。その損害の大きさは計り知れないのです。

野田さんも岡田さんも前々からこの危険性を信じ、消費税の増額と公務員や国会議員の削減を主張していたのです。この2人が総理大臣と副総理大臣になって国家財政の健全化を推進するのですから安心なのです。

その上、中国ではこの秋に国家主席や首相が交代し、習さんが主席になると言われています。彼は実務家で、極端な覇権主義が経済成長にとって邪魔になることを知っているようです。北朝鮮も共産党独裁を狂信してきた金日成の子供が亡くなり孫の代になりました。共産党独裁は変わりませんが中国の鄧小平のよう経済の開放政策を少しずつ取り入れる方向になる事は間違いありません。

台湾の総統選挙でも馬英九さんが当選しました。中国大陸と経済交流の推進政策を実施し、台湾のGDPの成長率を10%にして来た政治家です。

韓国との関係も相変わらず良いものです。

ベトナムと日本の関係も民主党が政権を取ってから一段と良好になりました。

普天間基地移転の延期にアメリカ側が感情的な怒りを鎮めました。

そんなこんなで今年の日本の政治情勢と国際環境が良い方向に大きく変化しました。私はそう信じています。

この事は昨年の東日本大震災の復興にとっては大変重要なことです。今年こそは震災の復興に努力する年にすべきと思います。

日本にもやっと安全な国になる方向なので、久しぶりに本を数冊買って、ゆっくり読んでみようという気分になりました。

今日の読売新聞の書評欄に買いたくなった本が5冊ありました。

辻井喬「司馬遼太郎覚書」かもがわ出版。アイザックソン著「スティーブ・ジョブズ」講談社。バーグマン著「アメリカ黒人の歴史」NHK出版。山田太一著「読んでいない絵本」小学館。中村生雄「肉食妻帯考」青土。などです。

書評が魅力的な紹介をしていますが、私の感性と合わない本かも知れません。大きな本屋さんへ行ってパラパラ内容を見てから買うつもりです。ついでに他の本も見てきたいと思っています。

それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。

後藤和弘(藤山杜人)