クリスチャンの弟のウーグの話の続きである。
まず奈良を案内したがとにかく猛暑、温度は京都と変わりないのだが、奈良に来てから気温がさらに上昇したので、彼は「京都より暑い」と、暑さにまいったようだった。
東大寺まではバスを使ったがその後はずっと歩いて、二月堂・春日大社、興福寺を廻った。いろいろ見せたくても猛暑の夏は思うようには廻れない。
翌日は、奈良町を歩いた。熱射病になりそうな暑さで、長くは歩けない。涼をとるため、室内見学がいいかなとめったに案内しない阿修羅像も見せたが、特に印象に残る感想は聞かれなかった。
食べ物に関して言えば、クリスチャンはフランス人が苦手とする青菜の茎のようなもの、日本独特の香味野菜なども大好きだった。
しかし、ウーグはそれらを残し、お豆腐も手をつけなかった。
とにかく、あまりの暑さに参っていたようだったので、奈良の後は高野山へ行ってはどうかと勧めた。
しかしもしかしたら高野山も、それほど彼の心に響くものはなかったのかもしれない。
もし感動して兄に伝えていたら、クリスチャンも行きたいと言うのではないかと思ったのだが、そのようなことはなかった。
その後も写真を送ってくれたり、メールを交換したりしているし、いい人であることは確かだ。
でも何かが違う。
だから彼が日本を再訪することは、残念ながら当分なさそうに思える。
一番の原因は夏のうだるような暑さである。そのピーク時が奈良滞在になってしまったのだ。
彼の長期バカンスは夏にしか取れないと言う。
クリスチャンも初めて来たのは夏だったが、それ以後彼は夏には絶対来ない。
しかし夏にしか長期バカンスをとれないフランス人も多いので、暑さで日本の滞在の印象が決められてしまうことは、何とも残念なことである。
別のこのカップルも夏にやってきて、再来日を希望するご主人と違い、奥さんは全くその気がないのだ。
そういうカップルはもうひと組いる。ご主人はこの春、日本企業に転職したほどの日本好きで、毎年来日している。奥さんや息子も春や秋の日本のバカンスを楽しんでいた。しかし奥さんは二年前初めて夏の日本を訪れたとき、体を壊してしまった。以来、来日するのはご主人だけだ。
迎える方も暑さには参るが、来てくれる以上は少しでもいい思い出をと、がんばってみる。が、こればっかりはどうしようもない。
もうひとつ、気になったのは、アルジョナとクリスチャンの関係だ。
この数か月後、クリスチャンは一人でやってくる。アルジョナのことは一言も触れない。
ウーグにアルジョナとクリスチャンが来日した時の写真を見せた時、彼の顔が一瞬曇ったのが
気になっている。
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