花椿です。
「かくて夢あり」、なんかワクワクするような題名だけども、島崎雪子が主要な
役を演じているというので、つい最近になって女流大御所マニアが俺に提供して
くれた。 昭和29年制作(モノクロ)。 上のポスター写真に出ているように
日活の制作再開第一弾の作品だ。
で、さっそく見たけど青年弁護士(小林桂樹)と人妻(宮城野由美子)が演じる
ズブズブ、ドロドロの悲恋ストーリーは確かに面白い。 ところが、ところが、
これは誰が見てもわかる大失敗作だった。 その理由は何か?はっきり言って男
も女も華がない。 メロは美男美女が演じてこそ観客を感動させると俺は思う。
しかし、どう見ても小林桂樹なんか若い時でもメロを演じるような男前じゃない
し、人妻を演じる宮城野由美子など上の写真のとおりで女優王国の松竹大船映画
ならば、せいぜいお手伝いさんを演じる程度のレベルである。
こんな華のない役者同士がメロを演じたのでは失礼ながら誰も感動しないと思う。
失敗して当然だ。 したがって俺も驚いたのだが、最後に「終・第一部」と出る
るが、これ永遠の第一部になってしまった。 第二部が制作されなかったのだ。
だから面白いというのは途中までの話であって、続きはどうなるのか誰も知らな
い。
唯一の収穫は島崎雪子の存在だろう。 小林桂樹の友人の妹という役であるが出
番は結構多かった。 ただ主役があれじゃぁ、偉大なる失敗作と言われても仕方
ないと思うね、この映画。
ストーリーは小林桂樹の幼なじみで愛し合っていた宮城野由美子がわけあって小
林の兄と結婚する。 しかし兄は大地主でありながらロクに仕事もせず芸者遊び
ばかりで、ついに切れた宮城野は家を飛び出すわけだ。 それから小林を求めて
東京へ出るが小林とはすれ違いばかり。 ようやく意を決して離婚を求めに兄の
家に戻ると、そこで小林とばったり出会ったわけ。 いざこれから盛り上がると
いう場面で「終・第一部」である。 そして永久に第二部は制作されなかった。
何じゃこりゃあああ!だよ。(苦笑)
ただ、まあ、俺としては途中までのストーリーは確かに面白かった。 これを日
活ではなくて松竹が佐田やんと淡路恵子のコンビで作っていたら、めちゃめちゃ
大人気で第五部くらいまで続いたんじゃないかと思う。 それを考えたら惜しい。
「この世の花」をしのぐ純愛メロの名作になったかも知れないのだ。
■写真上
映画ファン誌のS29年7月号に掲載の広告。
■写真中
小林桂樹と宮城野由美子。 宮城野はこの時が28才で俺の母親よりも年上であ
る。 華のないおばさんがヒロインじゃ人気は出ない。
■写真下
島崎雪子と小林桂樹。
じゃまたね、
2019年4月14日、午前2時30分記。