花椿夕月の『雪*星*さざれ石』

日本映画ネタ、雑ネタなど

☆9月24日 映画「女豹の地図(1951)」を見た

2022年09月24日 | この映画見ました
花椿です。

新東宝作品の「女豹の地図(1951)」を再視聴した。 ずいぶん前に視聴した時に

ブログの視聴記録に残さねばと思いながら果たせず、今回ようやく書く気分になった

が細部を思い出す必要があるので2回目の視聴になった。


例によって俺の好きな昭和20年代のメロドラマじゃあるけど、久慈あさみ、折原

啓子、若原雅夫、徳大寺伸の4大スタアが一堂に会するのは恐らくこの作品のみだ

と思う。 新東宝作品にこれだけ松竹系のスタアが出演するのも珍しいのじゃある

まいか。


物語は戦後没落した華族である白石家の娘、久慈あさみと折原啓子の姉妹、白石家の

書生から成り上がった徳大寺伸、戦後成金の若原雅夫、音楽家の伊沢一郎 の5人が

複雑に絡んで復讐と三角関係が展開する。


ストーリーを簡単に書けば、かつて白石家の世話になっていた徳大寺伸が娘の折原啓

子と婚約をしていたんだが、徳大寺が折原の純潔を汚した挙句に婚約を解消し他の女

と交際を始めた。


しかも借金の担保になっていた豪邸を徳大寺に取られた久慈あさみはこれに怒って徳

大寺への復讐を決意するわけだ。 仕方なく庶民住宅に転居し、ひそかに思慕してい

た音楽家の伊沢一郎と流しの歌手になるが、これが大評判になってキャバレー「シル

バークイン」の専属歌手になる。


「シルバークイン」の真向かいには徳大寺が経営するキャバレー「キャザリン」があ

って勢いがあったが「シルバークイン」に逆転され経営が苦しくなった。一方、久慈

は知り合った戦後成金の若原雅夫と結婚を条件に「キャザリン」を買収して徳大寺へ

の復讐を果たしたかに見えた。


しかし本命の伊沢は妹の折原と深い関係になるわ、若原という男をいまいち信用でき

ないわ、で久慈は服毒自殺を図ったが一命をとりとめた。 やがて久慈は入院中に若

原の本心を知り若原と共に強く生きようと決心する。 以上。


とにかく久慈あさみがいい。 宝塚の男役出身らしく長身で背筋をピンと伸ばした凛

とした雰囲気は女豹そのものじゃん。 おまけに折原啓子が出番は少ないが今まで見

た中で最高レベルの美女ぶり。 


個人的にメロドラマの要素はあまり感じなかったが、復讐ドラマとしては再映画化し

ても良いくらいの出来栄えだな。 よく知らないが田村泰次郎って作家の原作がしっ

かりしていると想像する。


★気が付いた点

1.徳大寺伸のオネエ系のキャラが超絶面白い。 これが普通の悪党だったら俺の作

品評価は少し落ちると思う。 俺がオネエ系の言葉遣いを知ったのはカルーセル麻紀

とかお杉とピーコあたりからだけども、昭和26年頃にはオネエの言葉遣いが存在し

ていたのだな。(笑)

2.久慈あさみが歌う場面が7~8か所出て来る。 宝塚出身であるから歌唱力は

当然なんだが映画で歌う場面は初めて見た気がする。 歌う姿はカッコいい、という

か凛々しい。

3.冒頭とラストのシーンを除いて室内のシーンばっかり。 これも珍しい。 特定

できる風景がなかった。

4.若原雅夫の登場シーンも少ない。 オネエの徳大寺伸に全部持って行かれた感じ

である。


1951年(昭和26年)12月7日公開の新東宝映画だね。 モノクロで監督は田

中重雄 。 この監督について詳しくは知らないが大映作品で面白いのがかなりあった

と思う。 俺の作品評価は役者陣を含めてランクAA(圧倒的に良い)の最高評価です

ね。


□写真1番目

左列:久慈あさみ。 

右列:若原雅夫。 猟銃を持って久慈の前に現れる冒頭のシーン。 

□写真2番目

左列:徳大寺伸と久慈あさみ。 

右列:久慈あさみと折原啓子。

□写真3番目

左列:伊沢一郎と久慈あさみ。 流しの歌手が評判になる。

右列:伊沢一郎と折原啓子。 伊沢が婚約解消されて落ち込んでいた折原の面倒を見

るうちに両思いへと進化した。 折原がさりげなく愛の告白をする場面。

□写真4番目

左列:キャバレー「シルバークイーン」で専属歌手になった久慈あさみ。

右列:若原雅夫と久慈あさみ。 俺様の妻になる条件で「キャザリン」を買収してや

るぞと談判をするところ。


じゃ、またね。

2022年9月24日、午前8時2分記。
コメント (6)
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☆9月18日 映画「魚河岸帝国(1952)」を見た

2022年09月18日 | この映画見ました

花椿です。

新東宝作品の「魚河岸帝国(1952)」を見た。 少し前、ある女流マニアからこの

作品の提供を受けた当初はさほど関心がなくて視聴の優先順位も低かったんだが、

俺の好きな野上千鶴子が出演していると知って急速に気分が盛り上がった。 さっ

そく視聴した。 


そして良い意味で予想に反し、めちゃめちゃ面白い作品だと知った。 とにかくスト

ーリー展開に無駄がなくてスピーディ、しかもドタバタ・コメディでありながら愛も

あれば悲恋もあった。 「帝国」と呼ばれる愛すべき凄いキャラとも遭遇。 視聴後

しばらくは「いい映画を見た」という感動に包まれて何も出来ないほどだった。


まず題名の読み方は「うおがし帝国」であります。 「帝国」ってのは東京築地の生

鮮市場で運送業を経営する会社の社長(山村聡 )のあだ名でパワハラの権化のよう

な社員の扱い、しかも下品でハゲ頭で単細胞という愛すべきキャラとしても描かれて

いる。 


個人的には山村聡の悪役は何回か見たけど、こんなハチャメチャなキャラで登場した

のは初めてだ。 物語はこの山村聡と主人公の田崎潤、そして野上千鶴子、花柳小菊

の2人の美女をめぐって展開する。


ストーリーを簡単に書けば、主人公の田崎潤が山村聡(帝国)の経営する運送会社の

運転手に就職する。 たまたま市場で客の花柳小菊と知り合って自身が運転するオー

ト三輪に同乗させるまでは良かったが事故を起こし車が横転、花柳は重傷を負った。


田崎は毎日病院に行き花柳を見舞うわけであるが、しだいに両思いへと変化した。

一方、山村は仕事の出来る田崎を高く評価して娘の野上千鶴子の婿にと考える。 

野上もひそかに田崎を愛しているのだが、花柳の存在を知って大ショックを受けた。 


結局、野上は身を引き田崎は花柳と結婚して民主化された会社を盛り上げようとす

る。 山村は社員との交渉の場で田崎から柔道で何回も床に投げられて目が覚めたの

か社長の座を降りて会社は民主化された。 一介の運転手に戻った山村は野上のいい

相手を見つけるのが次の仕事になった。 以上。


この映画のキモは野上千鶴子が田崎潤を愛していながら、その願いが成就しなかった

所だろう。 これがいとも簡単に野上と田崎が結ばれていたら単なる予定調和であっ

て面白くとも何ともないはず。 


つまり田崎の前に花柳小菊が登場したため野上の愛が実らなかったのが、この映画を

面白くした。 これによりメロドラマ一筋で「映画は愛がなければダメ」の俺をめち

ゃめちゃに感動させたわけだよ。 今までに見た悲恋物の中でも特筆級だったな、こ

の映画。 


★気が付いた点

1.花柳小菊は時代劇の脇役に出ていた程度の印象しかなかったが、山田五十鈴を

アップグレードしたような顔立ちで結構いい感じ。

2.田崎潤ら運転手仲間の寮はまるでタコ部屋。 ここで千秋実や伊藤雄之助らと何

度もケンカが勃発。 大乱闘になる。 魚河岸はみんな喧嘩っ早いのか乱闘シーンが

多数。

3.勝鬨橋が開きかかった所をオート三輪で飛び越えるシーンがある。 トリックで

はなくて実写にしか見えなかった。

4.風景としては昭和27年頃の築地市場とその周辺。 運河があったけどあれは

昭和通りの横の運河を埋め立てて首都高速を建設したと言われているが、埋め立て前

の運河じゃなかろうか。

5.山村聡の怪演は凄かったけど伊藤雄之助と千秋実もオーラを全開。 田崎潤の

柔道技はモノホン級だった。


1952年3月14日公開の新東宝映画だね。 モノクロで監督は並木鏡太郎 。 

この監督は新東宝の面白い作品が多い印象ですね。 俺の評価は野上千鶴子の評価込

みでランクA(かなり面白い)としておきます。


□写真右列は全て野上千鶴子。 後姿は田崎潤。

□写真左列1番目

「帝国」の山村聡(左)と田崎潤。

□写真左列2番目

田崎潤(左)と花柳小菊。 左端は2人を見てショックを受ける野上千鶴子。

□写真左列3番目

左から伊藤雄之助、田崎潤、千秋実。 寮の汚い部屋で。

□写真左列4番目

花柳小菊(左)と田崎潤


じゃ、またね。

2022年9月18日、21時40分記。
コメント (3)
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