花椿夕月の『雪*星*さざれ石』

日本映画ネタ、雑ネタなど

☆6月20日 映画「君ひとすじに(1956)」を見た

2022年06月19日 | この映画見ました
花椿です。

新東宝作品の「君ひとすじに(1956年)」を見た。 この作品、実は続篇の「続・

君ひとすじに」と「君ひとすじに(完結篇)」があって三部作の構成となっている。

俺が今回視聴したのは第一部だわいね。


もっとも新東宝は会社が消滅した関係で原版が行方不明になった作品も多く、この

続篇が現存しているのかさえ不明。 試しに日本有数の新東宝映画コレクター下村健

さんの新東宝データベースでは三部作すべて「映像未入手」と記載してあった。


つまり俺がとある知人を通じて入手したこの映像は、あの下村健さんでさえ持ってい

ない超々レア作品というわけだ。

(ちなみに俺がこのブログに書いた「君ゆえに」も映像未入手と記載してある)


で、今回入手した作品の中で最初に視聴チョイスしたのがこれ。 ともかく純愛メロ

ドラマ一筋の俺にとっては最高のディッシュを期待したら、いやもうこれでもか!

これでもか!とすれ違いの連続(笑)。 古典的メロドラマの大傑作だった!


主演は宇津井健と久保菜穂子だけども、俺のリアルタイムでは中三の時に連続時代劇

「花笠お竜」で久保菜穂子が主演したのを見た記憶がある。 決して目が覚めるほど

の美貌というわけではないが、当時の新東宝女優の中では随一の長身で美脚、スタイ

ルは最高レベルである。 昭和30年代の日本女優で久保菜穂子に対抗できるのは

松竹の桑野みゆきくらいじゃなかろうか。


ストーリーを簡単に記すと、山中湖で久保菜穂子と銀座の洋裁店で同僚の前田通子の

二人が財閥の御曹司である宇津井健と知り合い別荘へ行った。 ここまでは良かった

が、宇津井の姉(相馬千恵子 )の無礼な扱いに耐えかねて二人はすぐ帰京した。


宇津井は東京駅前で偶然に久保を発見して再会に成功するが、またも相馬が知人の娘

(江畑絢子 )と宇津井を結婚させたい一心から二人の交際を妨害し、久保は洋裁店を

退職させられた。


傷心の久保は洋裁店のデザイナー(高島忠夫)の親切から高島の郷里(山形県蔵王)

で世話になった。 一方、宇津井は江畑から久保の居場所を知り蔵王を訪ねたが、久

保と高島の関係を誤解して声もかけずに戻った。


久保はその事実を知り高島の求愛を断ったあと宇津井を追ったのだが間に合わず、宇

津井の方は久保の本心を知らまいまま寂しく一人で上りの汽車に乗った。

第一部はここで終わった。


映画関連の情報ページによると、ここから第三の女(三ツ矢歌子)が登場してますま

す複雑なストーリーに発展するらしいが、続篇の視聴は現時点では不可能だ。 仮に

原版が存在するのであれば、スカパーの放映かネット配信に登場するのを待つしかな

い。 まあ祈っておこう。


☆視聴しながら気が付いた点を列記しておくと。

1.VHS3倍モードで録画した映像をさらに3倍でダビングしたような感じで画質は

悪いが、画質など気にならないくらいに面白かった。 純愛メロ映画の王道を見た思

いがした。


2. 俺の好きな前田通子が登場して楽しませてくれるが出演は前半のみ。 俺が見た

作品の中では「女競輪王」の少し前くらいだろう。


3. 大スターになる前の丹波哲郎と天知茂が脇役で出ている。 天知は悪役で久保の

体を狙っているが続篇で牙をむくらしい。 丹波は高島の知人で売れない画家の役だ

った。


4. 相馬千恵子は「芸者ワルツ」でヒロイン役を演じたのを見た記憶があるけど、こ

の作品では久保菜穂子をねちねちとイジメる嫌な女の役。 見ていて久保が可哀想に

なりましたね


5. 最終場面は宇津井が上りの汽車に乗ったら隣の席に美女が座る。 よく見たら

デビュー直後の三ツ矢歌子だった。 宇津井を取り巻く第三の女として登場する予告

篇みたいなものだろうかね、この場面。


1956年(昭和31年)1月22日公開の新東宝映画だね。 監督は志村敏夫 で

「女真珠王」とか「死刑囚の勝利」とか面白いB級作品が多い印象。 モノクロで

89分。 スタンダードサイズ。 


とある新東宝関連本によると前田通子の記憶では撮影期間はわずか1週間で、それも

池内淳子主演の「新妻鏡」と同時撮影だったとか。 同じ列車のセットに久保菜穂子

と池内淳子を別々の座席にすわらせて久保を撮影したら次は池内というやり方が行わ

れたと。

(映画の公開は「君ひとすじに」が先)


俺の評価はランクB(水準作より上)だけども、江畑絢子や保坂光代など脇も美人女

優が多く見どころである。 純愛メロドラマの決定版だ。 主題歌の「君ひとすじに」

も久保菜穂子の歌唱で結構ヒットしたらしい。


□写真上

公開時のポスター。 左から宇津井健、高島忠夫、久保菜穂子。

□写真2番目(左)

左から宇津井健、久保菜穂子、前田通子。 山中湖のボート上のシーン。

□写真2番目(右)

宇津井健。

□写真3番目

久保菜穂子と宇津井健。

□写真4番目(左)

久保菜穂子が江畑絢子と相馬千恵子からねちねちとイジメられる場面。

□写真4番目(右)

蔵王へ着いた高島忠夫と久保菜穂子。 右は和尚。

□写真下(左)

蔵王を訪ねたものの久保と高島の仲を誤解して気落ちした宇津井。

□写真下(右)

悪役で登場した天知茂。


じゃ、またね。

2022年6月19日、19時5分記。
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6月21日に一部表現をカットして補筆修正しました。
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☆6月15日 映画「愛染香(1950)」を見た

2022年06月14日 | この映画見ました
花椿です。

新東宝作品の「愛染香(1950年)」を見た。 題名の読み方は「あいぜんか」また

は「あいぜんこう」どちらも良いらしいが、俺個人は「あいぜんか」と読んだ。


「愛染」とは文字どおり「愛に染まる」の意味であり、それが香りとなって発散する

ほどの愛。 純愛メロドラマ一筋の俺にとっては心の琴線に触れるような題名じゃな

いだろうか。 まず題名を見ただけで視聴したくなった。


そして配役を見たら主演の藤田進はともかく、ヒロイン役が俺の好きな月丘夢路であ

り、さらに池部良と久慈あさみ。 俺の好きな役者ばっかりじゃん、これは絶対に見

なければという気分になりましたね。


ただ事前にこの作品が第一部というのは知っていたので少し気になったけど、まあ、

とにかく見るぞ!である。 視聴方法はPC画面上で再生した動画をクロームキャスト

機能を使って75型ブラビアに映すやり方。 部屋を暗くしたら映画館さながらに

なった。 やはり大画面の効果は凄い。


で、ストーリーは簡単に書けば、戦時中のさまざまな成り行きから華族家である花小

路(高田稔)の夫人となった月丘夢路がある日、ゴルフ場で医師になった藤田進を偶

然発見する。 この7年ぶりの再会から、かつての愛が復活するという不倫モノ。


戦後、没落華族となった高田に愛想が尽きていた月丘にとって藤田の存在は大きく

なる一方。 逢引きを重ねたが、実は藤田には許嫁(いいなずけ)がいて藤田の病院

で働く事になっていた。 


上京した許嫁の久慈あさみは看護婦となって働くが、やがて藤田の心は月丘にあると

知って失望から姿を消した。 月丘は高田と別れる決心をしたものの高田が交通事故

に遭い障害者になると知って離婚を躊躇した。


結局、藤田の心も傷付き一人で東京を離れるのだが、ここで第一部 終となる。


ドラマの最後に藤田が同僚の池部良に行方不明になった久慈の世話をしてやってくれ

と頼むシーンがあった。 おそらく第二部は池部と久慈のメロドラマへと展開する予

定だったのだろうが、実は第二部は存在しない。 


何らかの事情で制作を中止したと思うが、日活の「かくて夢あり」と違って話は一応

完結したから特にストレスを感じるわけではなかった。


☆気が付いた点を列記しておくと。

1.藤田進は俺の世代では戦争映画の軍人役とか怪獣と戦う自衛隊の指揮官とかのイ

メージでメロドラマは似合わない。 そもそも撮影時すでに30代後半だから年齢的

にも無理がある。 最初から順当に主役は池部良で良かったんじゃない?


2.千石規子が風俗の女の役で登場! 俺がこの人の風俗女を見るのは2回目だ。

1回目は「白い野獣」という赤線の更生施設を舞台にした東宝作品で元売春婦の役だ

ったと思う。 俺の世代では千石規子=意地悪なおばさんのイメージだから、まさに

天地がひっくり返ったような気分になったぜ。(笑)


3.高田稔がまたしても没落華族を好演。 前に見た「七つの宝石」でも没落華族の

役じゃなかったかな。 ちょっと屈折した心理を持つ富豪とか貴族がハマっている。


4.病院の婦長が怪描でお馴染みの入江たか子だった。 なかなかの美女ぶりで恐れ

入った。 久慈あさみよりも美貌。


5.悲恋のヒロインを演じた月丘夢路は俺が今まで見た中では過去最高レベルと言っ

て良い。 ほとんど着物の出演やけど洋装も数シーンあった。 色々な意味で楽しめ

た。


まあ、こんな感じです。

1950年(昭和25年)12月29日公開の新東宝映画だね。 監督は阿部豊で

日活時代の月丘夢路の作品が多い印象。 モノクロで76分。 俺の評価はランクB

(水準作より上)だけども、月丘夢路が奇麗なのでランクAでも良し。 不倫ドラマ

の佳作じゃないかな。


□写真上

公開時のポスター。 左から藤田進、月丘夢路、久慈あさみ。 久慈あさみはこの

作品がデビュー作らしい。

□写真2番目

藤田進(左)と月丘夢路。

□写真3番目

同じく藤田進と月丘夢路。

□写真4番目

左の起立している男が高田稔、右は藤田進と久慈あさみ。

□写真下(左)

池部良が月丘夢路に向かって「あなたが二人(藤田、久慈)を不幸にした」と詰め寄

る場面。

□写真下(右)

月丘が藤田が乗った列車に思い出の白薔薇を投げる場面。


じゃ、またね。

2022年6月14日、21時40分記。
コメント (1)
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