花椿夕月の『雪*星*さざれ石』

日本映画ネタ、雑ネタなど

☆7月7日 映画「誰か夢なき」の豪邸を検証する

2022年07月06日 | この映画見ました

花椿です。

数日前に書いた『映画「誰か夢なき・総集篇(1947)」を見た』の記事中で作品に登

場する豪邸のロケ地として「上野毛の稲荷坂に似たような豪邸が今も健在なのを発見

した」と記載した。 それが上の写真である。 


これをもっと俺なりに検証してみようと思う。

■一番上の写真

40分過ぎのシーン。 視聴していてあまりの豪邸に驚いた。


■二番目の写真

坂道のある豪邸街なら等々力、成城、上野毛あたりじゃないかと目星をつけて東京の

坂道関連のブログやグーグルの写真マップを検索したら、上野毛の稲荷坂に面した

豪邸がほぼ同一の場所だと確信を持つに至った。


一番目の写真と比較した場合、崖の擁壁の角度と高さが異なるが映画撮影時から75

年が経過していて、現在の住宅を新築した際に擁壁も再建した可能性がある。 中央

の通用門は昭和22年当時は人が出入りするだけであるが、現在は車庫としても使う

ため拡張したようだ。(つまり拡張するには垂直の壁を崩して再建する必要がある)


反対面の擁壁も同様で、擁壁がだんだん低くなり、その先に戸建ての住宅の壁が見え

るのも現在と同じ。 坂道の角度も全く同じである。 現在の方が道幅が広く見える

が撮影角度が異なるのと壁が垂直に立っている事から来る目の錯覚じゃあるまいか。


■三番目の写真

稲荷坂を上空から見たところ。 黄色の囲みが豪邸だけども邸の東側(写真右方向)

が稲荷坂で西側は平面道路になっている。 おそらく正面玄関が西側にあり稲荷坂側

は地階になっており車庫として使用していると推測しますね。


■四番目の写真

車庫の前。 黄色の囲みの場所は元の擁壁の一部が残っていると推測可能な場所で、

ここだけ小さな石積みが残っている。 しかも映画に出て来る擁壁の高さと一致する。


■五番目の写真

映画のシーン(1時間1分目)ではやはり通用門の横が小さな石積みになっている。


以上の検証結果から、映画「誰か夢なき」に登場する大豪邸は上野毛の稲荷坂である

と断言しても良いのではないかと考えます。 もっとも映画ではこの大豪邸は東中

野にある設定だけども、東中野にこんな坂道はないし、そもそも大富豪が豪邸を建て

るような場所じゃないですね。


じゃ、またね。

2022年7月6日、18時25分記。
コメント (2)
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☆7月5日 映画「誰か夢なき・総集篇(1947)」を見た

2022年07月04日 | この映画見ました
花椿です。

新東宝作品の「誰か夢なき・総集篇(1947)」を見た。 この作品、実は前篇と後篇

があって、それぞれ1947年(昭和22年)8月12日と19日に公開されたと

記録に残っているが、これは現存しておらず現時点で視聴可能なのは翌年(1948

年)に封切られた総集篇のみである。


この総集篇はかつてVHS/ベータ方式でビデオ化されていて、俺が入手したのは販売用

ビデオカセットの映像をPCファイル化したもののようだ。 したがって原版の悪さは

仕方ないとして、アナログ・ダビングを繰り返したような劣悪な画質ではなかった。


まず俺が気に入ったのは古語調の(あるいは文語体の)題名だ。 「誰か」の「か」

は「疑問、反語」を表現する係助詞、末尾の「き」がその結びだろう。 そう解釈す

ると「誰も夢を見なかったのだろうか? いやみんなが夢を見た」となる。


現代語ではこれだけの長文が、古語では「誰か夢なき」のたった5文字で済むわけよ。

古語の係助詞(かかりじょし)とはすごく便利な用法である。 しかも非常に重厚な

表現だ。 もう俺にとっては題名からして100点満点であり、これほど題名だけで

人を惹きつける作品はあまりないのではないか。


ところで前篇と後篇が合計で161分の長篇ドラマであるが総集篇は106分しかな

いのが惜しい。 完全版が残っていたらどんなに良かったか・・・。 しかし俺が今

までに見たメロドラマの中でナンバーワンの座は揺るがないと信じるね。

(後篇のタイトルや梗概を除外したら実質50分間もカットしてあるが、一応メイン

のストーリーはつながっている)


簡単にストーリーを書いておくと、主役の藤田進が医学部を卒業して叔父が経営する

病院で修業を始めたのであるが、同じ病院で看護婦をする野上千鶴子と両思いになった。

やがて野上は病院を追い出され、藤田も後を追うように病院を出て行った。


二人とも相手の居場所を探すものの、ようとして行方が知れない。 そのうち藤田に大

富豪の令嬢(宮川玲子)と見合い話が持ち上がり宮川は藤田を愛するようになった。

一方、野上は派遣看護婦としてその大富豪の家を訪ねるようになり、そして野上を見初

めた宮川のイトコ(黒川弥太郎 )から求婚された。


それでも藤田が忘れられない野上だったがふとした事から藤田の居場所を突き止めた。

同時に藤田もかつて世話をした女の口から野上が宮川の家に出入りしていると知って

愕然とした気持ちになるのだった・・・。


まあ、こんな感じで当初のすれ違いから段々と縁(えにし)の糸のように両者が結ばれ

て行くわけだ。 結果的には宮川と黒川の愛は悲恋となってガッカリなのだが、これも

心打たれる重厚なシーンに仕上がっていて俺は泣いた。 以上。


ここで気が付いた部分を書き残しておく。

■藤田進をめぐって野上千鶴子、宮川玲子、春山葉子の3人の女が登場するが、春山は

学生時代の藤田に世話になった女だが、この女が登場する場面はバッサリとカットされ

ている。 ただ最後に藤田を助ける役目をするので完全に消すわけにはいかなかったと

思われる。 したがって総集篇ではメインストーリーはあくまで藤田、野上、宮川の3

人で進行する。


■やはりカットされた場面が多く唐突に場面が変わったり、何の脈絡もない場面が突如

出て来たり、完成度の低さは否めなかった。 原版が存在しないのだから、ここは想像

力で補うしかない感じである。


■野上千鶴子は少し前にこのブログで書いた「君ひとすじに」や「芸者ワルツ」なんか

で見た記憶があるがヒロイン役を見たのは初めてだ。 女優原理主義者の俺はデビュー

直後の野上を見てガーンと叩きのめされた。 身長がやや低めなのが惜しいな。


■藤田進は少し前にブログで書いた「愛染香」でも主役だったけど、いつ見ても顔の大

きい姿三四郎が喋っているような雰囲気を感じるが、慣れて来るとメロドラマの主役も

悪くないな。


■ロケ地としては京成上野公園駅と中央線の東中野駅が出る。 70年代後半の東中野

は知人が住んでいたので俺も知っているけど、当時は住宅密集地の中の小さな駅だった

が、昭和22年の東中野駅はまるで田舎なので驚いた。 当時は新宿駅の隣でもこんな

田舎だったんけ?


■宮川玲子が住む大豪邸は大名屋敷のように凄かった。 坂道があるので田園調布じゃな

いと思うが、ネットで白金、成城、等々力などの坂道を探したら上野毛の稲荷坂に似た

ような豪邸が今も健在なのを発見!した。 案外、ここがロケ地かも。


1947年(昭和22年)8月12~19日公開の新東宝映画だね。 監督は渡辺邦男 。

総集篇はモノクロで106分。 俺の評価はランクAA(超絶的に良い)だわね。 


□写真上

VHSビデオと映画ポスターだ。

□写真2番目(左)

藤田進(右)と野上千鶴子。

□写真2番目(右)

藤田進。 まだ学生服を着ている。

□写真3番目(左)

大富豪の令嬢を演じた宮川玲子。

□写真3番目(右)

藤田進と宮川玲子。 藤田が見合いをさせられて宮川の豪邸を訪問したシーン。

□写真4番目(左)

宮川玲子(左)と野上千鶴子。 宮川が求婚した藤田が実は野上が思慕する相手だ

と真実がわかったところ。

□写真4番目(右)

野上千鶴子。 藤田と再会を果たした最終場面。


じゃ、またね。

2022年7月4日、23時40分記。

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「結果的には宮川と黒川の愛は悲恋となってガッカリなのだが、これも

心打たれる重厚なシーンに仕上がっていて俺は泣いた」の部分を補筆しました。

7月5日、20時5分記。
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