子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

2009年TVドラマ夏シーズンレビューNO.1:「官僚たちの夏」

2009年07月08日 23時15分56秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
視聴率競争でいよいよ崖っぷちに追い込まれたTBSが,何周年記念とやらで大騒ぎした一昨年の「華麗なる一族」に続いて,大昔のベストセラーのドラマ化に挑んだ「官僚たちの夏」が始まった。ひたすら派手で,壮麗さを誇っていたような前作(何の繋がりもないのだが,以下勝手に「華麗なる一族」=前作と略)に負けじと,誰彼構わず引っ張り込んではタイトルロールを派手に飾り立てるのかと思いきや,中盤の守備とパスワークを重視したサッカーチームみたいな顔触れと,地に足が着いた戦術に,期待が膨らむ初回だった。

週刊朝日に連載され,34年前に単行本化された城山三郎の原作は出版当時から話題を呼び,13年前にNHKで中村敦夫の主演によりドラマ化されているが,私は未見。
今回のキャストの肝は,堅実で渋いワントップのFW佐藤浩市へボールを供給する中盤に,堺雅人と高橋克美という,地味にも派手にもどちらにも転び得る俳優を配して,安定感のある「風越チーム」を構成したことだろう。
前作において,木村拓哉が孤高の度合いを深めれば深めるほど,ドラマが動きを失っていったことの反省に立ち,ひと癖ありそうなライバルたちも含めた「群像劇」という体裁を取ることによって,前作の舞台とほぼ同時代の空気を再現しようという試みは,イントロデュースの色濃い1回目から,確かな手応えを感じさせるような出来となっていた。

雑然とした通産省の執務室に,昭和30年代の戸建ての茶の間。手作りで自家用車を生産する町工場に,自民党の幹事長室。「MR. BRAIN」における「一体どうしてしまったんだ?」級にリアリティのない科捜研の対極に位置する,セットの丁寧な作りも見事だった。
そしてそれを捉えるハイヴィジョンの画面も,これまで観たことのないような質感を湛えている。ただ明るく鮮明なだけではなく,どこかフィルムに近いような肌理も,「落ち着いた人間ドラマ」という印象を強めている。

ただ,これから描かれるであろう葛藤や挫折は,やがては花開く高度成長期という特別な季節を舞台にした,特別な出来事である,ということには留意が必要だろう。
そこでの葛藤が,閉塞感に満ちた現代にも通用するような普遍性を持ち得るかどうか,2009年という試練の年に,再ドラマ化に踏み切ったスタッフがどんな捻りを加えてくるのか,楽しみに向かい合っていきたい。

ただ,吹石一恵と並んで前作に続いての登板となった北大路欣也は,やっぱりまずい。台詞を言わずとも,顔を見ただけでソフトバンクCMのお父さん犬が浮かんでくるというのは,私だけではないはず。そのうち佐藤浩市が「ごめんなさい,お父さん!」とか言ってしまうのではないかと疑っていては,ドラマに没頭できないし。うーむ。


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