子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

2009年TVドラマ夏シーズンレビューNO.4:「赤鼻のセンセイ」,「華麗なるスパイ」

2009年08月01日 10時19分51秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
質を語ること自体が意味を持たないようなドラマを連発してきたTBSが,起死回生とばかりに,まだ残っていたものづくりの良心を込めて送り出してきた「官僚たちの夏」が数字を取れないようだ。第2回は,このドラマ視聴者のコア層が関心を持っていたであろう都議選の開票とぶつかったこともあって,前週から5%以上も下げてしまったこともやむを得ないと思っていたのだが,第4回も8.0%とかなり苦しい状況だ。
どんなに中身がスカスカでも,出演者と宣伝で量にモノを言わせる作戦が功を奏する一方で,良心的な作品が無情にもそっぽを向かれてしまうという現象は,今に始まった訳ではない。そんな当たり前の事実を,敢えて「官僚たちの夏」制作スタッフに伝えて欲しいという気持ちで,盛り上がってきた国内産業擁護派対自由貿易推進派の闘いを見守っている視聴者は,たとえ数は少なくとも,この番組の熱心なサポーターになっているはずだ。だから第4回で記録してしまった,打ち切りの分水嶺とも見なせる「8.0%」を割ることはないと思うのだが,正直最後まで見届けることが出来るかどうか心配ではある。

その「8.0%」という分水嶺を第4回目にして割り込んでしまったのは,NTV水曜10時枠の「赤鼻のセンセイ」だ。「大泉洋の初主演」というのが売りだったようだが,「病院の院内学級」という舞台は,構えとノリで勝負するタイプの大泉にはやや狭過ぎたのか,4回を迎えてまだ一度も二桁到達というノルマを達成出来ていない。

生徒役に神木竜之介と須賀健太というタイプの違う「泣かせる子役」と,小林聡美,上川隆也という脇で光る役者を揃えたのだが,「やり過ぎ天然前向き人間(=大泉)」の善意が騒動を巻き起こしながらも,そのポジティブさが最後に実を結ぶ,という安直な展開に広がりがなく,既に神木君頼りに陥りそうになっているように見える。

大泉のいつもの演技を受ける側の小林と香椎由宇のキャラクターが,かなりの部分で被ってしまっていることに加え,同僚教師役の光石研と平岩紙が,ほとんど展開のコアな部分に絡んでこないのも問題だ。
これなら普通に金八先生か熱中先生の後継ドラマを目指した方が,大泉のギャグセンスを活かした学園ドラマになったのではないか,と視聴者に思わせてしまうのはかなりまずい状態だ。

しかしギャグの上滑りという点では,同じNTVの土曜9時枠「華麗なるスパイ(脚本:君塚良一)」のずっこけ具合の方がより深刻だ。
どうやら日本版の「オースティン・パワーズ」を目指したと思しき作りなのだが,初回の混乱振りはひどかった。脈絡と盛り上がりに欠ける話の展開もさることながら,一つ一つのギャグのレヴェルが低く,長瀬智也のコメディアンとしての高い資質が全く発揮されないまま,だらだらと2時間(いくら初回スペシャルでも長過ぎ)が消費されてしまった。

モントリオールで脚本賞を取った(「誰も守ってくれない」未見)君塚良一は,萩本欽一の弟子としてヴァラエティ番組の作家からスタートしたという経歴を持ってはいるのだが,純粋なお笑いのセンスという点では,「華麗」というより「加齢」の方がしっくり来る。そんな評価が私だけのものでなかったことは,「マイ・ボス☆マイ・ヒーロー」の再現を期待したであろう多くの視聴者のおかげで,初回は15.6%という高い数字を取ったにも拘わらず,2回目には何と8.6%と,ほぼ半減してしまった視聴率に如実に表れている。
長瀬のデフォルメした演技とドロンジョもどきの深田恭子のコスチュームが過激になっていったとしても,この展開では大幅な挽回は難しいと睨んでいるが,ひょっとすると,ただのモデル崩れで終わるかもしれないと思われた杏の実質的女優デビュー作となる可能性は窺える。それがドラマ全体の盛り上げに寄与することはないかもしれないが,「誰も観てくれない」状態に陥ることよりはましだろう。


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