子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

映画「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」:女性版「ハングオーバー!」。でもエグさは数段上

2012年05月04日 11時39分19秒 | 映画(新作レヴュー)
作品名は結婚式における花嫁側の付添人のことらしいのだが,同様にバチェラー・パーティー(花婿の独身最後のどんちゃん騒ぎ)を題材にしたトッド・フィリップス監督の「ハングオーバー!消えた花婿と史上最悪の二日酔い」に比べると,えげつないことこの上ない。
下ネタ、ゲロネタはまだしも、花嫁の一番の親友という座を巡る、女同士の本性むき出しのつばぜり合いは、心理的泥んこ女子プロレスの様相を呈して、下手なCGアクションは裸足で逃げ出す迫力だ。

ケーキ作りは達人なのに、開業したケーキ屋は借金を残して潰れてしまう。母のコネで勤めていた宝石店は、客に愛想を言えずに馘になり、今の恋人からは身体だけの関係でいようと釘を刺されているという、典型的な負け組アニー。共同で手がけた脚本が,アカデミー賞の脚本賞候補になるという才能の持ち主クリステン・ウィグは,そんなアニーがまとうアラフォーの悲哀とヴァイタリティーの両方を,見事に体現している。さすが大傑作「宇宙人ポール」で,キリスト教原理主義の牧師の娘でありながら,宇宙人に出会っていきなり四文字言葉を連発するようになるヒロインを演じた役者だけある。

その他の出演者の中では,アニーに伍して花嫁の親友NO.1を狙うヘレンに,TVドラマ「ダメージ」でグレン・クローズの部下エレンを演じてブレイクしたローズ・バーンが抜擢されているが,エレン役のダメージならぬイメージが強すぎて,やや華に欠ける。一方で花嫁の婚約者の妹メーガンに扮したメリッサ・マッカーシーは,見た目通り重量感たっぷりの押しの強さで,ドラマの終盤をさらう。しかし顔の印象が「太ったマーク・ウォルバーグ」だったため,途中から「ブギーナイツ」を思い出してしまい,少し困った。ついでに言えば,航空機内でアニーから「ストーブ!」と罵られる男性CA「スティーヴ」のプロ根性は二重○。

全体にやや冗長で,10分短くしたらもっと締まったかもしれないという印象は免れない。特にアニーと彼女に惹かれる警官のロマンスに関わるエピソードは,もっと刈り込んだ方がインパクトは強まっただろう。
それでもアラフォーの未婚女性をターゲットとしながら,徹底的に下世話なネタとエネルギーを注ぎ込んで,都会的なコメディとして成立させようとした制作者の熱意は充分に伝わってくる。
そんな中でアニーの母親が娘に向かって呟いた「自分の居場所って,本当に要るんだろうか?」という台詞だけは,母親役が70年代の自立する女性を描いた「結婚しない女」の主演ジル・クレイバーグだっただけに,全体のトーンとは趣を違え,シリアスでズシリと重かった。本作撮影後の2010年暮れに亡くなった彼女の冥福を祈りたい。
★★★
(★★★★★が最高)


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