子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

2012年ロンドン五輪 男女サッカー日本代表 総括

2012年08月12日 20時28分33秒 | サッカーあれこれ
女子が銀メダル,男子が4位。サッカーの日本五輪代表チームは,男女ともに大会前の予想を越える見事な成績を勝ち取った。
男子が最後の2試合を連敗で締め括ることになったことに対しては,辛口の評価を多く見かけるが,香川や宮市ら本来ならこのチームの主力として活躍していたであろう選手に関して,所属チームの事情で招集を見送らざるを得なかったことを勘案すれば,本当によくやったと言えるだろう。
男女ともにベスト4に進出したのが日本だけだったことは,それぞれのサッカーの内容も含めて,世界に対して「サッカーが根付いた国」として胸を張れる結果であることは間違いない。

なでしこは,最後の試合でついに「真になでしこらしい」試合を見せてくれた。W杯の決勝で耐えに耐えて掴んだ金メダルの価値をとやかく言うつもりはないが,今回の決勝戦こそが,その名誉に内容が伴った,本当の世界一決定戦であったことは,両チームの選手たちの試合後の表情からも明らかだった。
澤の運動量と大野の動物的な勘,岩清水と熊谷の知的なポジショニング,それに川澄の足下の技術は,最後までアメリカを苦しめた。
ここまでおそらくチームで一番たくさんパスを相手に引っかけていた宮間は,この試合でも最後までリズムを取り戻すことは出来なかったが,大野の飛び出しに合わせたピン・ポイントのスルー・パスには,何度観ても見飽きない美しさがあった。

しかも彼女たちが素晴らしかったのは,予選リーグから中2日間で試合を続けてきて,本来なら疲労の極にあったはずなのに,6試合目となる決勝戦の動きが最も冴えていた点だ。フィジカル・コーチングの勝利なのか,選手たちのメンタル面でのピーキングのせいなのか,はたまた南アフリカ戦で話題となった「ドロー狙い」の選手起用が当たったからなのか,真相は定かではないが,最後の試合に心身共に最も動ける状態に持っていけたこと自体が,他国から標的とされる「強豪国」の仲間入りをしたことに対する,なでしこの最高の返礼と感じた。朝のワイドショーでは,張本が「金メダルを取れなかったのだから,小あっぱれでしょう」と喋っていたが,ドイツの審判の誤審に対する批判を控えたことも含めて,「あっぱれ」を3つくらいあげたい気分だ(表彰式でのブラッターをして顔を顰めさせたらんちき騒ぎが,完全にレッドカードものだったのが,返す返すも残念ではあったが…)。

一方の男子も,低かった下馬評を結果で撥ね除けて見せた姿は,実に頼もしかった。「メダルは絶対に無理」と断言した釜本を蒼白にしたであろうエジプト戦での攻撃は,堅守速攻だけのチームではなかったことを,結果で証明して見せてくれた。
メキシコ戦も良く戦ったが,やはり相手の実力が2枚くらい上だった。個人技も瞬間のスピードも楽々と繰り返していたサイドチェンジを可能にするキック力も,初めて世界基準を目の当たりにした日本の若者の目には,さぞかし新鮮に映ったに違いない。
清武の展開力,永井のスピード,大津の思いきり,宇佐見のドリブルと,日本が持っていた武器を,何一つ展開させなかった高い技術力をこそ咀嚼して,Jのピッチで再現して見せてほしい。

ただ,永井が「蹴るだけのサッカーに負けた」と負け惜しみのコメントを残した3位決定戦だけは,やはり悔いが残る試合だった。吉田と鈴木のミスとは言え,いずれもロングボール1本でやられてしまった姿は,あまりにも情けなかった。
それでも技術的に充分に取り返せるレヴェルにあったにも拘わらず,無抵抗でメダルを譲ってしまった最大の原因は,決勝戦のなでしことは両極にあったと言っても過言ではないくらい,コンディショニングが悪かった点が大きく影響している。
とにかく予選リーグの突破を,と願った結果なのはある程度理解できるが,韓国チームが日本人のフィジカル・コーチを活かして延長戦を含む連戦から見事な回復振りを見せたことに比べると,「もっと闘えたはず」という思いを抱えたままで終戦を迎えた悔しさは大きかったはずだ。

予選も通っていない段階で議論するのも何だが,南米の各チームがより一層力を入れて臨んでくるであろう次のリオでは,男女ともに日本へのマークが厳しくなることを想定しなくてはならないだろう。
急速な少子化が進む中,競技人口を保つためのきっかけとして,依然強い求心力を持っている五輪を重視することは,日本協会にとっての重点課題であり続けるはずだ。A代表へとストレートに繋がるようなしっかりとした(少なくとも今回の男子のようなゴタゴタのない)指導体制を早急に組んで,高校3年生のスカウティングに走って欲しい。英語の諺ではないが,4年間は大津のミドルシュートよりも速く飛ぶのだから。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。