子供はかまってくれない

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第80回アカデミー賞の結果について

2008年02月27日 23時49分02秒 | Weblog
作品賞,監督賞(コーエン兄弟),助演男優賞(ハビエル・バルデム),脚色賞:「ノーカントリー」
主演男優賞(ダニエル・デイ=ルイス),撮影賞(ロバート・エルスウィット):「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」
主演女優賞:マリオン・コティヤール「エディット・ピアフ~愛の讃歌」
助演女優賞:ティルダ・スウィントン「フィクサー」
脚本賞:「JUNO」
編集賞,録音賞,音響編集賞:「ボーン・アルティメイタム」
(主要賞のみ掲載)

一騎打ちと言われた「ノーカントリー」と「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」の対決は,やはり貫禄の差がものを言ったのか,「ノーカントリー」の圧勝という結果となった。
コーエン兄弟は,デビュー作の「ブラッド・シンプル」で打ちのめされて以来の贔屓だったが,まさか血塗られたスリラーでオスカーをねじ伏せる瞬間が訪れるとは予想出来なかった。これは決してコーエン兄弟の変節などではなく,アカデミーが時代の流れを読む謙虚さを身につけたということの証なのだろう。純然たる独立系のフィルム・メイカーとハリウッド資本の理想的な融合を素直に喜びたい。

同じく独立系の星,ポール・トーマス=アンダーソン(P.T.Aって学校かっ?)は,懸念されたとおり若さが敬遠された可能性は否めない。どちらも観ていないので偉そうなことは言えないのだが,Macのダッシュボードの一つである「Movie Theater」で観た予告編の感じでは,意識的に作風を変えようとしている気配も感じられて,期待は募る。ダニエル・デイ=ルイス2回目の戴冠は,羨望の眼差しを相当浴びたに違いない。

助演女優賞のティルダ・スウィントンは,「オルランド」でブレイクして以来身につけてきた技のデパートみたいな人だから,箔と重みがついても良い頃合いだったかもしれない。
それにしても,主演女優賞のマリオンも含めて米国人ゼロという結果は,なんだかんだ言っても世界中から人材を集め,彼らにきちんとした評価を与えるというアメリカの持つフェアネスの証左になっている訳で,事実上人材の流入に関して鎖国状態が続く何処かの国に取っては,眩しいことこの上ない。

撮影賞はP.T.Aとのコンビの他,カーティス・ハンソンとも組むことが多かったロバート・エルスウィットが獲得したが,その他の主要技術系は3部門まとめて「ボーン・アルティメイタム」がさらった。映画特有の技術部門における洗練された高度な技が,観客を画面に釘付けにするというシンプルかつ至高の目標に向かって動員され,見事な成果を挙げたという点で,3部作の掉尾を飾る本作こそ裏作品賞と言える出来だった。アクション作品に冷たいと言われたオスカーは,こういった面でも変わりつつのかもしれない。

「ノーカントリー」は3月中旬,「ゼア・ウィル・ビ~」はGWの公開が予定されているが,受賞によって興行成績が飛躍的に伸びるということは期待出来ない,という過去の実績は,昨年の「ディパーテッド」によっても再確認された。そんな訳で,日本には「受賞作が儲かる」という幻想にすがる興行会社は,多分存在しないだろう。
ただこの結果を受けて,既にヒットが約束されているのも同然の状態ながら,受賞(脚本賞)で更に一層の弾みがつくかもと期待している会社が在るとすれば,「JUNO」を制作したFOXだろう。予告を観た限りにおいての判断だが,アメリカ版「14歳の母」は化ける,と断言出来る。うーん,やっぱり米国は侮れない。


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