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2012年TVドラマ夏シーズン・レビューNO.2:「トッカン -特別国税徴収官-」

2012年07月14日 19時12分20秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
今月から始まった2012年夏シーズン・ドラマの主演に,井上真央を持ってくる。これは勿論,理解できる。若手の中でも癖のない演技で幅広い層に人気のある彼女を,ゴールデンに持ってくるというのは極めて真っ当な判断だろう。だが,その相手役が「北村有起哉」と聞いて驚いた。
何かの間違いかと思ったが,番組表を見ても,駅の構内に貼ってある「お金なんかで死なないで」という台詞が書かれた大きなポスターにも,井上真央の次に書かれているのは「北村有起哉」という,顔はどこかで見たことがあるけれども,北村和夫の息子という肩書きすらもほとんど知られていない(多分),渋い役者の名前だった。

先週初回を観て,トッカンと呼ばれる腕利きの徴収官が黒いサングラスを外した瞬間,それがやはり間違いではないことが確認された。
粘着気質を絵に描いたような顔,滑舌良いのか悪いのか分からないけれど,妙に気になる癖だらけのあの北村有起哉が,ゴールデンの主役を張っている。うーむ。
だがこれで特別国税徴収官を主役に据えた「トッカン」が,どうやら「恋愛」や「現代の若者の気質」などよりも,「お仕事」を中心に据えているらしいという,ドラマの輪郭の滲み出しは済んでしまったように見える。その意味では,実に合理的なキャスティングと言えるだろう。

物語自体は,今のところ至極真っ当な「若者の成長譚」だ。ビジネスの裏を知り尽くした厳しい鬼教官に跳ね返される,若くて元気で純粋なルーキー。よくある設定,かっちりとした枠組みを利用しつつ,税徴収という視点から現代社会を解析してみる,という雰囲気もあり,出だしは快調だ。
お仕事ものには欠かせない「専門用語」の解説の入れ方も的確で,お約束の「現場とキャリアの衝突」エピソードがちゃんと用意されているらしいのも,抜け目がない。

だがオーソドックス一辺倒かと思いきや,ロケーション撮影のショットで,被写体以外の焦点をぼかして,ミニチュア的効果を出す「トイカメラ」っぽい撮影にトライしているのには驚かされた。デヴィッド・フィンチャーの「ソーシャル・ネットワーク」のボート・レースのシーンは見事だったが,日本のTVドラマで撮影技法の拡がりの実証例が見られるとは思わなかっただけに,まさに虚を突かれた。テクニカルなチャレンジという観点からも,注目していきたい。


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