子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

映画「ダーク・シャドウ」:女優陣の比類なき豪華さが作品の疵を隠してはいるものの…

2012年07月23日 23時33分32秒 | 映画(新作レヴュー)
アメリカで1966年から1971年にかけて放送され人気のあったヴァンパイアもののTVドラマを,ティム・バートンがジョニー・デップとタッグを組んで映画化する。
そんな情報には,このところ派手な SFXを使い倒してヒットは飛ばすものの,作品の内容的にはどんどん私のストライク・ゾーンから外れていく一方のバートンが,「エド・ウッド」や「マーズ・アタック!」の頃のオフ・ビートな笑いを取り戻せるかと期待させるに充分なものがあった。
果たして予告編から窺える雰囲気は,2世紀を隔てて1970年代に蘇ったヴァンパイアの時代錯誤な部分が強調されており,「パーフェクト・センス」での演技が素晴らしかったエヴァ・グリーンやクロエ・グレース=モレッツら旬のメンツに加えて,新星ベラ・ヒースコートに大ヴェテランのミシェル・ファイファーまで揃えた女優陣の充実振りからも,とうとう大人の艶めかしさをまとった新しいファンタジーの誕生かと,胸を躍らせて劇場に足を運んだ。だが,実際にスクリーン上で盛り上がっていたのはエヴァ・グリーンの胸元だけだった。

とにかく笑えない。主人公のバーナバス・コリンズ(ジョニー・デップ)の時代認識の倒錯ぶりは,マクドナルドのロゴを見て「メフィストフェレスめ!」と構えるシーンくらいしかないし,コメディ・パートを受け持つと思われたジャッキー・アール・ヘイリーに到っては,笑いにも物語の展開にも,何の役割も果たさない。
何のために出てきたかという意味では,モレッツも同様。多様な経験を積み,あれこれ悩むべき伸び盛りの今の彼女には,別にいなくても物語は進んでいくような役のために割く時間はないはずだ。

更にその筋のファンには大きな期待を持って迎えられたであろうアリス・クーパーの登場場面に到っては,躍動感のないことこの上なしという有様。1972年という時代設定を活かすための気の利いた工夫もなく,ひたすらおどろおどろしさを前面に出すだけならば,劇中で言及されるカーペンターズの合成映像でも使った方が,よほどテンションが上がったのではないかと思われた。

絵が踊っていたのは,デップとグリーンが家中を飛び回りながら組んずほぐれつするラヴ・シーンのみ。リライトを巡ってトラブルが起こったらしい脚本が,文字通り未整理のまま形になったことが一目瞭然の出来を見る限り,ティム・バートンはその若さに拘わらず,そろそろ店じまいを考える時期なのかと考え込んでしまった夏の夜。
★★
(★★★★★が最高)


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