たしろさんのブログ「燃え尽きるまで」の記事(噴出する妄想あれこれ)で紹介されたコンコーニ・テストについて、下記のホームページを参考に簡易な解説を試みる。
<1> Conconi Test:http://www.brianmac.co.uk/coni.htm
<2> THE CONCONI TEST:GENERAL INTRODUCTION:
http://web.inter.nl.net/hcc/j.vd.bosch/congeneral.html
1.基礎となる理論仮説について
筋肉はふつう炭水化物(グリコーゲン)と脂肪(脂肪酸)を燃焼(酸化)し水と二酸化炭素にまで分解する過程で得られたエネルギーを運動エネルギーとして利用している(=酸素性運動)。運動負荷が高くないこの酸素性運動の範囲内では、運動強度と心拍数との間には直線的な関係がある。
しかし運動強度が大きくなると酸素を必要としないエネルギー産生(=無酸素性運動)、つまりATPの分解やブドウ糖から乳酸への代謝が高まり、運動強度と心拍数との関係に変化が生じ、直線的関係からのズレが生じてくる。
そこで一定の距離ごとに少しずつ速度をあげて走り、その時の平均心拍数をグラフ上にプロットすると、酸素性運動から無酸素性運動に変換するあたりで直線が屈曲し平坦化してくる。このポイントを無酸素性運動閾値とする、というのがコンコーニ(フランチェスコ・コンコーニ、イタリアの生化学者)の考えである。
2.無酸素性運動閾値の意義
今日、無酸素性運動閾値のおおよその指標として次のものが知られている。
① 210-年齢(ただし十分にトレーニングを積んだ人の場合)
② 15km走での平均心拍数
③ PIAT-TEST
④ 乳酸濃度の測定
⑤ コンコーニ・テスト
無酸素性運動閾値は持久系競技のアスリートにとってトレーニングでの運動強度の限界を決める指標となるだけでなく、心拍数を利用したトレーニングの有用な目安ともなりうる。一般的には「無酸素性運動閾値-20」が酸素性運動閾値の良い指標とされている。
3.実際のテスト方法
A.トラックでの場合
① 5~10分のウォーミングアップ
② ハートレートモニター(HRM)を5秒ごとに記録するようにセット
③ HRMの計時を開始
④ 200m毎にタイムと心拍数を記録する
⑤ 200m毎にスピードを上げる
⑥ それ以上そのスピードで走れなくなったら終了
⑦ HRMを止める
⑧ 10分間のクーリングダウン
B.トレッドミルの場合
① 5~10分のウォーミングアップ
② HRMを5秒ごとに記録するようにセット
③ 適当なスピードでトレッドミルをスタートさせる
④ HRMの計時を開始
⑤ 200m毎にタイムと心拍数を記録する
⑥ 200m毎に0.5km/hずつスピードアップさせる
⑦ 最大心拍数に達したか、それ以上走り続けられなくなったら終了
⑧ HRMを止める
⑨ 10分間のクーリングダウン
4.データの分析
縦軸に心拍数、横軸にスピードを目盛り、200m毎のデータをプロットする。グラフ上で直線が平坦になって移行しているあたりが閾値である。
<ichanさんのコンコーニテストのデータを拝借>
5.コンコーニ・テストの問題点
① 言うは易く行うは難し!
200mごとにスピードアップさせるのは可能としても、一律に0.5km/hずつアップさせ、なおかつそれを次の200mの間一定に維持し、それを次々と繰り返していくというのは、一人で実施するにはあまりにも難しい。そうしたペース配分の設定可能なトレッドミルがあれば理想的だが、そのようなものが果たしてあるのかどうかは私は知らない。一定時間毎に頻度が上昇していく音源をウォークマンなどに録音して取り込み、その音信号に合わせてピッチを刻んで走る、という方法も考案されているようだ。
② 背景となる理論仮説は本当に正しいのか?
筋肉のエネルギー代謝については以前のブログ(修正:運動時のエネルギー代謝について(11))でも紹介したが、運動負荷が高まるにつれて最初は酸素性運動であるものが、ある一定レベルを超えると急に無酸素性運動に切り替わる、というような単純なものではないらしい。そうだとすると、かつてのエネルギー代謝仮説に基づいたコンコーニ・テストの妥当性が疑わしくなる。このテストで示される変換点がいったい何を意味しているのか、再考の余地があるのではないかと思う。