
黒澤明と三船敏郎のコンビで初めて作られた作品。戦後の焼け跡の中、たたずむ一人の医者志村喬とヤクザ三船敏郎との心のふれあいを描く。まだ若くエネルギッシュな三船が際立つ。脚本もよく、セリフの一つ一つが心に残り、古さを感じさせない傑作だ。 医者である志村喬のところを、手を負傷した三船敏郎が診察に来る。どうも手はピストルで撃たれた跡のようだ。咳き込む三船が調子悪そうなので、問診をすると結核の疑いがある。その話をすると、三船は怒って診療所を出る。焼け跡の町の顔役である三船が昼からダンスホールに入り浸りという話を聞き、結核の治療にあたるよう説得をしにダンスホールに行くが聞く耳を持たない。そんな時、志村喬の医院を手伝っている中北千枝子の元の情夫で三船の元兄貴分がお勤めを終えて刑務所から戻ってきた。三船は病気を自覚して付き合い酒を断ろうとするが、ちょっと一杯のつもりが量が多くなり、そのままダンスホールへ行く。そこには三船の情婦木暮実千代がいた。三船が兄貴分に木暮と踊るように言うが、兄貴分は木暮に一目ぼれ。その後二人は女の取り合いをするようになるが。。。。。
三船敏郎がぎらぎらしている。戦後間もない時代背景もあるだろうが、脂ぎっている。その彼が結核の症状が悪くなり、弱っていく。そこに医者である志村喬がからむ。志村が老練な姿を見せるのは「生きる」の後で、ここではまだ普通の中年飲んだくれ医師を演じる。その志村が痛烈にヤクザの悪口をいう。そのセリフが非常に印象的だ。脚本がうまい。それ自体、ヤミ商売が横行する社会に対する黒澤明監督の痛烈な現代批判である。
もう一つ印象に残るシーンがある。笠置シヅ子の「ジャングルブギ」の場面である。この映画を観るのは多分3回目だと思うが、最初に笠置の歌を観た時にはその迫力に本当にびっくりした。三船が兄貴分を連れてきたナイトクラブで笠置が歌う。歌のワイルドさもすごいが、それをとらえるカメラワークも効果的に彼女をアップで撮っている。昭和40年代から50年代にかけて日曜日の昼間に漫才師てんやわんや司会で「家族そろって歌合戦」という番組をやっていた。人気番組だった。その審査員の中に笠置シズコがいた。当時もいかにもオバサンで、この人何やっている人なのかと子供心にずっと思っていた。それを覆すのがこの映画だった。ジャングルブギの作詞が黒澤明というのも面白い。
その他脇役も中北千枝子、飯田蝶子とまだ初々しい久我美子がでている。最近「家庭教師のトライ」のCMで二谷英明と一緒に出てきて、大声でわめき回るもう少し年をとった中北千枝子が目立つ。「ニッセイのオバサン」のCMで一世を風靡したころの中北だ。黒澤映画だけでなく、小津、成瀬と巨匠にこれだけ愛された女優もめずらしい。飯田蝶子は戦後間もないのにおばあさん役、老け役をこんな早い時期からやっていたのかと思うとすごい気がする。華族出身で学習院女子部出身の久我美子はいかにも気品がある。たしか現天皇の姉上と同窓と聞いた気がする。 そんな俳優を自由に使いきった黒澤にとって、この映画は会心の作品だったに違いない。娯楽性を重要視しながら、少ないながらも世相批判する脚本がいい
三船敏郎がぎらぎらしている。戦後間もない時代背景もあるだろうが、脂ぎっている。その彼が結核の症状が悪くなり、弱っていく。そこに医者である志村喬がからむ。志村が老練な姿を見せるのは「生きる」の後で、ここではまだ普通の中年飲んだくれ医師を演じる。その志村が痛烈にヤクザの悪口をいう。そのセリフが非常に印象的だ。脚本がうまい。それ自体、ヤミ商売が横行する社会に対する黒澤明監督の痛烈な現代批判である。
もう一つ印象に残るシーンがある。笠置シヅ子の「ジャングルブギ」の場面である。この映画を観るのは多分3回目だと思うが、最初に笠置の歌を観た時にはその迫力に本当にびっくりした。三船が兄貴分を連れてきたナイトクラブで笠置が歌う。歌のワイルドさもすごいが、それをとらえるカメラワークも効果的に彼女をアップで撮っている。昭和40年代から50年代にかけて日曜日の昼間に漫才師てんやわんや司会で「家族そろって歌合戦」という番組をやっていた。人気番組だった。その審査員の中に笠置シズコがいた。当時もいかにもオバサンで、この人何やっている人なのかと子供心にずっと思っていた。それを覆すのがこの映画だった。ジャングルブギの作詞が黒澤明というのも面白い。
その他脇役も中北千枝子、飯田蝶子とまだ初々しい久我美子がでている。最近「家庭教師のトライ」のCMで二谷英明と一緒に出てきて、大声でわめき回るもう少し年をとった中北千枝子が目立つ。「ニッセイのオバサン」のCMで一世を風靡したころの中北だ。黒澤映画だけでなく、小津、成瀬と巨匠にこれだけ愛された女優もめずらしい。飯田蝶子は戦後間もないのにおばあさん役、老け役をこんな早い時期からやっていたのかと思うとすごい気がする。華族出身で学習院女子部出身の久我美子はいかにも気品がある。たしか現天皇の姉上と同窓と聞いた気がする。 そんな俳優を自由に使いきった黒澤にとって、この映画は会心の作品だったに違いない。娯楽性を重要視しながら、少ないながらも世相批判する脚本がいい
三船敏郎という、戦後を表現する俳優を得たことも大きかったと思う。藤田進では、時代遅れですから。
また、ここには彼の贖罪意識は出てきません。『明日を創る人びと』『わが青春に悔いなし』と、この作品の時、東宝はストライキ中で組合が強い時でした。黒澤は、明らかに組合側に立って「新日本文学」に論文も書いています。そうした撮影所全体の盛り上がりの上に、この傑作も出来たのだと思います。
また、反戦を描くことで戦時中に戦意高揚映画を作ったことは贖罪されると思っていたかもしれません。
『酔いどれ天使』って本当は志村喬のことなんですが、私は長い間三船敏郎のことだと思っていたほど三船は凄かったですね。
お気持ちはよくわかります。残念ながら、自分のベストは「天国と地獄」なので違いますが、「野良犬」と並んで大好きな1本です。
この映画での三船敏郎の荒々しさと渋い兄貴分のパフォーマンスと最後の格闘、笠置シズコの「ジャングルブギ―」にはいつも感動しっぱなしです。
あとはまだ若き木暮実千代も印象深いです。動画を追加で加えましたが、兄貴分が一気に惚れてしまいます。
私の母親が若い頃お世話になった人をモデルにした大佛次郎原作の映画があって、この2年後木暮実千代が主演で演じています。そんなこともあって小さい頃から気になった俳優さんでした。自分が年を重ねるまでさすがに魅力はわからなかったですが、素敵ですね。
『用心棒』や『椿三十郎』も面白いのですが、これらは黒澤映画というよりも、むしろ菊島隆三映画とでもいうべきで、豪快で男らしい人間像は、菊島のもの(『兵隊やくざ』『おれについてこい!』などが典型)で、本来女性的である黒澤の感性ではないのです。木下恵介との比較で「自分は女々しいセンチメンタリストだ」とは黒澤自身が言っていることです。
今はTOCになった星製薬の廃墟のような跡地の隣に、東宝の映画看板があって父親に何度かこの映画が見たいといったのですが、ダメだといわれました。今はない、映画と映画の間に流れるニュースで「吉展ちゃん事件」のニュースがでて、犯人の顔があまりに怖くてトイレに行けなくなった記憶があります。
記事にも書きましたが、「横浜」を舞台している映画でも、際立って良くできている映画だと思っています。特に後半、仲代演じる警部が、山崎努演じる犯人に横浜の町を泳がせる場面が大好きです。
パートカラ―の煙突の煙を最初見たときに背筋がぞくっとしましたが、そのあと何度見てもゾクゾクします。見るたびごとに違った感動があるまれな映画だと思っています。
結構良い映画で、アプレゲール役が岩井半四郎(仁科周芳)と意外でした。
大仏次郎は、戦後派の連中が不愉快だったようなのはわからないでもない気もしますが。
これは日活で西河克己監督でも作られていて、ここでは主役の夫人は、皮肉にも木暮のライバルの高峰三枝子でした。
モデルとなったというご婦人は元々お姫様のような出の方で、由緒ある名家に嫁いだ後、息子と別れ、男に走ってしまう情熱的で自由奔放に生きた方です。鎌倉のある有名な方の二号さんとして戦前から鎌倉で過ごし、のちに東京の社交界に携わっていました。鎌倉文化人のことは大佛次郎のみならず誰でも知っていました。
母がたいへん可愛がってもらったので、私が生まれた時から30になる前くらいまでたいへん世話になった人です。晩年は文京西方にいらっしゃいました。その名前を言えばだれでも知っている今も現役の芸能人の母上も鎌倉にいてモデルのご婦人の親友でした。その母上がエッセイを書いた時には実名が出ていました。
日活で西河克己監督高峰三枝子主演でやっていた話は初耳でした。私の母が生きていれば、知っていたのか聞いてみるのですが。6年前に亡くなりました。
私の知っているモデルの方の役を演じたのは母親役の高峰三枝子でなく、愛人役の渡辺美佐子のようです。このリバイバルは昭和25年版からかなり変えて作ってあるみたいですね。もともと津島恵子が演じた役を当時人気絶頂の吉永小百合がやっているので、それに合わせて脚色をし直しているようですね。
当時、五反田にも日活があったけど、母は見てないだろうなあ。いずれにせよ見てみたいです。