映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「真夜中のゆりかご」

2016-01-10 19:16:59 | 映画(欧州映画含むアフリカ除くフランス )
映画「真夜中のゆりかご」は2015年日本公開のデンマーク映画だ。

これは実によく練られた上質のサスペンス映画だ。
刑事が、生まれてまだ数ヶ月で急死した自分の息子と、捜査で知り得た麻薬常習犯の息子をとっさの判断で取り替えてしまう話である。
デンマークには行ったことがない。ここで見る限り、水辺の風景が美しい。それをバックにした家族の映像と下層社会に生きる親子のドツボぶりを対比させながらじっくり映画を作り上げている。本来サスペンス映画ではないが、ストーリーは一筋縄ではいかず、次にどうなるのであろうかと画面に目をくぎ付けにさせてしまう。実にスリリングでここでは脚本のうまさが光る。

敏腕刑事のアンドレアス(ニコライ・コスター=ワルドー)は、美しい妻アナ(マリア・ボネヴィー)と乳児の息子とともに、湖畔の瀟洒な家で幸せに暮らしていた。

そんなある日、通報を受けて同僚シモン(ウルリッヒ・トムセン)と駆けつけた一室で、薬物依存の男女と衝撃的な育児放棄の現場に遭遇する。方、夫婦交代で真夜中に夜泣きする息子を寝付かせる日々は愛に満ちていた。だが、ある朝、思いもよらぬ悲劇がアンドレアスを襲い、彼の中で善悪の境界線が揺れ動いていく…。(作品情報より)

1.取り違えっ子
福山雅治主演「そして父になる」では生まれた病院での取り違えで、まったく家庭環境の違うところでしばらく育つ2人に焦点を合わせる。クリントイーストウッド監督「チェンジリング」では行方不明の子供が突然見つかるという知らせを受け会ってみると、まったく違う子だったのに、警察がそれを認めず押し付けるという話である。そういった話とは今回は違う。


刑事が通報を受けて押し入った家にいる赤ちゃんと、死んでしまった自分の子を取り替えてしまうのだ。これは犯罪だ。幼い頃に養子に入った赤ちゃんは、思春期過ぎになるまで自分が育ての親から生まれた本当の子供と思って育つ。そのまま両親が育ててしまえば、わからないんだろうなあと思いながら映画を見ていくと、アッと驚くような行動に妻が出てしまうのだ。

2.ストーリー展開(ネタバレあり)
通報を受けて押し入った部屋で、主人公の刑事はうんこまみれになっている赤ちゃんを見つける。ほったらかしにしてもちょっとひどすぎる。しかも、父親は麻薬の常習犯だ。でも子供を認知していない。幼児虐待で子供を激しくいたぶりニュースに出る父親ってこんな感じの奴なんだろうなあと思ってしまうような奴だ。この父親のセリフによれば、母親も「客に生でやらせる女だ」なんて言うわけだから売春まがいのこともしているのだ。そんな最悪の家庭環境にいる赤ちゃんなら、育児の怠慢で子供を死なせちゃったと思わせても大丈夫だろうと刑事は思い、深夜にこっそりとりかえる。両親は麻薬を打った後でぐったり寝込んでいる。


死んでしまった子供と別の子供が入れ替わったことを知り、刑事の妻は動揺するが、じきに慣れていく。それで済むなら、越したことはないけど、次から次へと事件が起こる。このあたりは念入りに伏線を置きながら不自然にならないようにストーリーを作り上げていく。実にうまい。

主人公が住む湖畔?の家が素敵だ。北欧らしい木製サッシで、壁は少ない家だ。各部屋の大きさがかなり広い。でも、単なる刑事がこんないい家に住むのかな?と思ってしまう。あくまでドツボっている家庭との対比を見せるためであろう。独特な暗いムードに包まれながら、非常に巧みに映画をつくっているという印象を持った。ドツボ側の母親がいかにもアバズレという演技をしていたが、なかなかうまかった。途中から彼女の存在感が高まる。狂っていると警察に思われ精神病院に押し込まれてしまう映画「チェンジリング」のアンジェリーナ・ジョリーを思わず連想してしまう展開である。最後に向けて、思わぬ父子の再会がある。この作り方もうまい。


正月から昨年公開の旧作DVDをかなり見たが、一番よくできている映画だった。

(参考作品)
真夜中のゆりかご
刑事による赤ちゃんの取り換え

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 映画「完全なるチェックメイ... | トップ | 映画「ブリッジ・オブ・スパ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

映画(欧州映画含むアフリカ除くフランス )」カテゴリの最新記事