映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「ブリッジ・オブ・スパイ」 トムハンクス&スティーヴン・スピルバーグ

2016-01-11 05:02:13 | 映画(洋画:2016年以降主演男性)
映画「ブリッジオブスパイ」を映画館で見てきました。


スティーヴンスピルバーグ監督の新作は、トムハンクス主演でコーエン兄弟が脚本を担当しているという。超豪華なメンバーでつくられた作品だ。冷戦時代にアメリカで逮捕されたソ連のスパイをトムハンクス演じる弁護士が裁判で弁護するという話だ。
彼が演じるジェームズ・ドノヴァンという弁護士のことはこれまでまったく知らなかったが、すごい人だ。民主主義社会ではすべての人に公明正大に裁判を受ける権利があるということで、敵対国のスパイを弁護する。また、ソ連上空を偵察機で飛行していて爆撃を受け捕虜にされた米軍兵とアメリカで留置されているソ連スパイの交換交渉にもあたる。ものすごく行動力のある人のようだ。
スピルバーグ監督作品ならではの安定感のある映画で、無論トムハンクスも好演だが、ソ連のスパイを演じた俳優マーク・ライアンスの演技が抜群によかった。

1957年アメリカとソ連との冷戦が続いていた。お互いにスパイを忍ばせて情報収集にあたっていた。ソ連からニューヨークに来て密かに諜報活動を行っていたスパイのルドルフ・アベル(マーク・ライアンス)の身柄が確保された。民主主義国家アメリカでは弁護人をたて公明正大に裁判をやることでソ連とは違う立場をとることにした。その時保険関係の裁判を得意にしていた弁護士ジムドノヴァン(トムハンクス)に弁護の依頼が来た。いやいや引き受けたドノヴァンはアベルと面会したあとは、徹頭徹尾無罪を主張する。

陪審員からは有罪の決断がなされたが、両国における政治の駆け引きを考慮して、判事に死刑を避けるように申し出て、結果的に懲役30年の判決が出された。世論はなぜ死刑にしないのかと猛烈に反発した。しかも、ドノヴァンは最高裁に上告するということで、国賊扱いされ、自宅に銃弾が撃ち込まれる始末まであった。


アメリカ空軍はソ連の上空2万1000メートルの高さで偵察機を飛ばしていたが、ソ連軍に撃沈された偵察機のパイロットであるパワーズがソ連で捕虜にされていた。米露両国は互いに敵対していたが、アメリカの国務長官ダレスがドノヴァンを呼び出し、実際には政府の依頼ではあるが、秘密裏に民間人の立場でソ連のスパイで留置されているアベルを交換する交渉を依頼される。そしてドノヴァンは交渉のために東ベルリンへと向かう。手探りでおこなう交渉は難航するのであるが。。。

1.トムハンクス
「キャプテン・フィリップス」と「ウォルト・ディズニ―の約束」以来軽いブランクがあった。トムの弁護士役というと、エイズ裁判でアカデミー主演男優賞を受賞した「フィラデルフィア」が印象に残る。ただ、あの映画では実際にはデンゼルワシントンが弁護に立って、エイズで弱り切ったトムハンクスを助けるというやつれ役だ。ここでは堂々とソ連スパイを弁護し、米露両方に留置されている2人を交換する交渉にあたるのだ。まさに交渉人だ。正統派レジメンタルタイでスーツを着こなし、50年代の雰囲気を醸し出す。立場の違うソ連スパイであるアベルとの友情がこの映画の見どこるで、ラストに向かっていい感じだ。


2.マーク・ライアンス
いきなり自画像を描いている場面が映し出される。ふけたオヤジだ。一体誰だ?どうも彼がソ連のスパイのようだ。FBIとニューヨークの地下鉄付近で捕りもの劇を演じる。途中ボブマーレイに似ていると思ったけど、違う。履歴をみると、演劇で活躍してきた人のようだ。激情とは無縁の無表情で淡々と演じているが、実に渋い。本当のスパイって007みたいな動的でなくこんな静的な感じの人なんだろうか?各種賞レースで助演男優賞の候補になっているようだが、これはもらっても全然おかしくない。お見事というしかない。(ネタバレだが)最後の橋の場面で見せる弁護士ドノヴァンを信じる一言にはジーンときてしまった。


3.雪の降るベルリン
資料を見ると、実際にベルリンでも撮影されたようだ。雪が激しく降る中で、廃墟のような東ベルリンでのトムハンクスの交渉は難儀する。雪の降る中、貧しい東ドイツの若者にコートを奪われてしまい、寒そうに歩く場面が気の毒だ。最後の橋のシーンでは実際に交換が行われたグリーニッケ橋で撮影され、メルケル首相が見学に来ていたそうだ。東ドイツ政府がベルリンの壁をつくったのは1961年、これを越えようとして200名もの人が殺されたという。映像でも殺された場面が出てくる。


4.アメリカ史から類推すると
もともとアメリカのダレス国務長官はソ連に対して強硬な姿勢をとっていた。ところが、1956年ソ連のフルシチョフ首相が劇的なスターリン批判をおこなった以降は雪どけ政策に転換する。ソ連のスパイが死刑にならなかったのにはこういった背景もあったのであろう。でも結局ダレスは1959年4月に国務長官をやめ、翌月がんで亡くなっている。この映画では主人公ドノヴァン弁護士ダレス長官が会い、交渉を依頼されている。当然亡くなった1959年より前に会っていることなので、ベルリンでの交渉より3年ほど前ということになる。映画ではすぐさま交渉しているようにみえるが、この間、1960年5月1日のU-2撃墜事件が起きパイロットがつかまり、ベルリンの壁が1961年にでき、経済学を勉強する1人の学生がつかまるという映画の構図である。実際には米ソで交換を成立させたのは1962年民主党のケネディ政権になってからなのだ。

50年代のアメリカの映像も白黒テレビの映像も交えながらいい感じだ。いつもながら思うけど、アメリカ映画では50年代の自動車がいつもふんだんに出てくる。一体どんな所に保管されているんだろうと思ってしまう。トムハンクスの妻役のエイミーライアンがいかにも50年代の雰囲気を醸し出していて、子供の使い方では天下一品のスピルバーグらしく3人の子供たちも映画に良い味付けをしている。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 映画「真夜中のゆりかご」 | トップ | 映画「グローリー 明日への... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

映画(洋画:2016年以降主演男性)」カテゴリの最新記事