映画とライフデザイン

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映画「裸体」嵯峨三智子

2021-02-20 18:32:52 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「裸体」を名画座で観てきました。


裸体は1962年(昭和62年)の松竹映画である。永井荷風の原作を脚本家が本業の成沢昌茂がメガホンを持つ。嵯峨三智子が主演で、男のもとを次から次へと渡り歩く女を演じる。出演者は当時としては豪華で、それぞれ短いショットで映る。

B級映画というよりC級といってもいいような映画である。もともと傑作とか感動するといった映画を見れるとも思っていない。オリンピック前、すでに生まれていた自分の記憶が薄い昭和37年の東京を見てみたいのと、アバズレの印象が強い嵯峨三智子の主演作ということに関心があった。

若尾文子主演で前年昭和36年公開の大映映画女は二度生まれるは次から次へと男を渡り歩く九段の不見転(みずてん)芸者を映し出す。自由奔放に生きていく女を映すということでは、基本的に流れるムードは同じである。勤め先の税理士に手をつけられ囲われることになった若い女が、それをきっかけに秘密クラブのホステスをやって政治家に抱かれたり、好き勝手にやるのだ。

でも、成澤昌茂監督赤線地帯で描いた女のような社会の底辺で生き抜くというような暗さがない。実家で地主さんから賃料を取り立てられるシーンがあるけど、深刻ではない。嵯峨三智子演じる主人公はあっけらかんとしている。

⒈嵯峨三智子と演じる女
当時27才になるところ、なかなかの美形である。自分にはもう少し歳をとってからの妖怪じみた姿と顔つきが頭にこびりつくが、総天然色映画にも耐えうる美貌である。このスチール写真では映っていないが、映画では腋毛が映る。なんとなくエロっぽい。


漁師たちが住む船橋の海辺に近いエリアで銭湯を営む家から東京の税理士事務所に通い事務員として働いている。ひょんな経緯で、税理士の先生に口説かれ、アパートで囲われることになる。1人住まいをした後は、不動産屋の男から紹介され金物屋の二階で下宿する。昔の知り合いから秘密クラブを紹介され政治家と夜を過ごしたりもする。

若尾文子の映画と同様に、売春防止法が施行された後で、こういう感じの裏売春で男を渡り歩く女が街には溢れていたのかもしれない。

⒉豪華な出演者
オープニングの松竹の富士山が映った後に、「にんじんくらぶ」制作とスクリーンに映る。岸恵子、久我美子、有馬稲子の3人でつくった制作会社だ。この3人は出演していない。所属俳優では杉浦直樹とダンサーを演じた宝久子の2人が出演だ。脇役で出てくるのは主演級が多く、出演者はそれなりに豪華だ。アレ?所属映画会社違うのでは?という人もいる。それぞれの出演時間は短い。

昭和40年代前半にかけ、子どもだった我々もてTV番組でよく見かけた顔ばかりだ。地元船橋でサキコに好意を寄せる男に川津祐介、税理士事務所の所長が千秋実、囲われる部屋を斡旋した不動産屋が長門裕之、主人公が間借りする下宿の大家が浪花千栄子、秘密クラブのママが嵯峨三智子の母親である山田五十鈴、夜を共にする政治家が進藤英太郎である。松尾和子がクラブ歌手として色っぽい歌声を聞かせるが、まだ若い。美のピークで美形である。

傑作なのは浪花千栄子だろう。嵯峨三智子と一緒に銭湯の湯に浸かるシーンがある。そこで、ポロっと小さな乳首が見えてしまうのだ。当時55才なんだけど、昔の人は老けているから今でいうと70才に近いくらいに見える。もともと喜劇役者だったわけど、先日同様ファンキーな役柄演じているところが笑える。

今月の日経新聞私の履歴書はホリプロの堀さんだけど、これがなかなか面白い。ロカビリー時代の話で佐々木功を和製プレスリーとして売り出すなんて話が書いてあったな。ここでは主人公に誘惑されるウブな若者を演じている。

⒊永井荷風と成沢監督
永井荷風の原作だけど、当然読んでいない。独身を死ぬまで謳歌した荷風だけに女給カフェかどこかで出会った女をモデルにして書いたのであろう。途中で出てくるストリップ劇場では、全裸を見せないが、ダンサーが色っぽく踊る。戦後は浅草ロック座で、贔屓の女の子たちを可愛がるのが晩年の生きがいだった永井荷風らしい。

千葉の市川に住まいを移した荷風だけに、船橋育ちの女は描きやすかったのかな?主人公の実家付近を映すのが船橋の原風景だったのであろうか。今や埋立が多く、面影がない。

成沢昌茂溝口健二監督作品「赤線地帯」「噂の女といったいった代表作でも脚本を書いている名脚本家だ。監督作品は少ない。長野県の上田出身のようだ。そういえば、成沢という上田高校出身のやつがいたな。大学の時同じクラブの先輩と後輩に割と上田高校出身者がいてみんな真面目だった。会社に入ってお世話になった上司も上田高校出身だけど、質実剛健なイメージが強い。

でも、赤線地帯を書いた成沢昌茂はむしろ軟派なのか歓楽街で働く女性のこともよくわかっている。それだけは今までの上田高校出身者のイメージと違う。

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