映画「大鹿村騒動記」は阪本監督がメガホンをとった原田芳雄の遺作
配役がすごい。主役が張れる俳優だらけである。ある意味夢の競演だ。
主演級の俳優を脇に従えて、自分が構想した作品を撮り終わり人生を終える。
これで名優原田芳雄とお別れと思うとなんかさみしい。
長野の山奥にある大鹿村では、300年の伝統をもつ歌舞伎が演じられてきた。今年もあと数日で開催の時期となった。「ディアイーター」という鹿の食堂を営む主人公善(原田芳雄)を中心に稽古も活気を帯びてきたところであった。そんな大鹿村を15年前に飛び出した男と女が戻ってくる。
女(大楠道代)は主人公の妻であったが、ある日突然主人公の幼馴染(岸部一徳)と駆け落ちする。ところが15年たって最近妻に認知症の気が強くなってきた。亭主も新しい男もよくわからないのである。むかつく主人公であったが、自宅に2人を泊めた。
翌日から最近雇い入れた一人の少年と3人の生活がはじまる。妻はボケている。気がつけば酒屋に入って万引きをする。万引きの意識はない。万引きしたのは元亭主の好物の塩辛だ。それなのに、ときおり歌舞伎のセリフを思い出したように話すことがある。
そんな時出演者の一人のバス運転手(佐藤浩市)が事故に遭って負傷する。しかも、地元を通るリニア新幹線の是非をめぐって村の中は賛成派(石橋蓮司)、反対派(小倉一郎)で議論が二分される。2人は歌舞伎のコンビである。大ゲンカだ。役場の総務課に勤める若い女性(松たか子)も調整に大慌て、果たして歌舞伎はどうなるのであろうか。。。
(原田芳雄)7月19日に亡くなったのに7月11日の試写会に車いすであらわれたという。執念だ。自らの構想で作った映画への執着心だ。この作品にこれほどまでの主演級が集まったのも原田の人徳であろう。おそらくは彼がガンに侵されていることを知り、集まったのであろう。鈴木清順監督の作品で共演した大楠道代との名コンビも復活だ。スター集合するとそれぞれ好きにやりすぎることが多いが、みんな抑え気味だ。原田芳雄は彼らしいワイルドな部分を残す。見た感じは数作前の姿と大差ない。
自宅に原田芳雄の古い本があった。昭和57年3月発行の本「B級パラダイス」である。写真を見ると顔つきが実にワイルドだ。殺気じみた姿は男っぽい。写真と同時に今回共演の大楠道代、故松田優作、桃井かおりや宇崎竜堂との対談を含む。でも何でこの本買ったのだろう。記憶にまったくない。
(大鹿村の歌舞伎)人口は1100人の完全な過疎地である。若い人も減っているだろう。よくもまあ続くものだ。歌舞伎といっても大衆演劇の延長のようだ。チップの投げ銭が飛び交う中、演じる男たちの息は荒い。この歌舞伎で原田芳雄は最後の力を振り絞って演技する。後ろの口上は地元の人たちであろう。プロの匂いがする。
この映画のいいところは地元紹介に余計な時間を使いすぎないことだ。例えば「八日目の蝉」はいいと思うが、小豆島の地元のお祭りなどをくどく紹介する。時間がそれで長くなる。実に余計だ。ここではそういうことはなく、大鹿村の住民になりきって配役が歌舞伎を演じる。二度手間のロスがない。原田芳雄、大楠道代、小野武彦、石橋蓮司、でんでん、加藤虎之介、小倉一郎とそれに加えての黒衣が岸部一徳に瑛太だ。なんというスターたちであろう。すばらしい。現代日本映画の集大成みたいだ。
そして最後の手締めをする三国連太郎、ケガをして歌舞伎に出れない佐藤浩市親子が共演する。
執念に思わず拍手、心から原田芳雄の冥福を祈りたい。
配役がすごい。主役が張れる俳優だらけである。ある意味夢の競演だ。
主演級の俳優を脇に従えて、自分が構想した作品を撮り終わり人生を終える。
これで名優原田芳雄とお別れと思うとなんかさみしい。
長野の山奥にある大鹿村では、300年の伝統をもつ歌舞伎が演じられてきた。今年もあと数日で開催の時期となった。「ディアイーター」という鹿の食堂を営む主人公善(原田芳雄)を中心に稽古も活気を帯びてきたところであった。そんな大鹿村を15年前に飛び出した男と女が戻ってくる。
女(大楠道代)は主人公の妻であったが、ある日突然主人公の幼馴染(岸部一徳)と駆け落ちする。ところが15年たって最近妻に認知症の気が強くなってきた。亭主も新しい男もよくわからないのである。むかつく主人公であったが、自宅に2人を泊めた。
翌日から最近雇い入れた一人の少年と3人の生活がはじまる。妻はボケている。気がつけば酒屋に入って万引きをする。万引きの意識はない。万引きしたのは元亭主の好物の塩辛だ。それなのに、ときおり歌舞伎のセリフを思い出したように話すことがある。
そんな時出演者の一人のバス運転手(佐藤浩市)が事故に遭って負傷する。しかも、地元を通るリニア新幹線の是非をめぐって村の中は賛成派(石橋蓮司)、反対派(小倉一郎)で議論が二分される。2人は歌舞伎のコンビである。大ゲンカだ。役場の総務課に勤める若い女性(松たか子)も調整に大慌て、果たして歌舞伎はどうなるのであろうか。。。
(原田芳雄)7月19日に亡くなったのに7月11日の試写会に車いすであらわれたという。執念だ。自らの構想で作った映画への執着心だ。この作品にこれほどまでの主演級が集まったのも原田の人徳であろう。おそらくは彼がガンに侵されていることを知り、集まったのであろう。鈴木清順監督の作品で共演した大楠道代との名コンビも復活だ。スター集合するとそれぞれ好きにやりすぎることが多いが、みんな抑え気味だ。原田芳雄は彼らしいワイルドな部分を残す。見た感じは数作前の姿と大差ない。
自宅に原田芳雄の古い本があった。昭和57年3月発行の本「B級パラダイス」である。写真を見ると顔つきが実にワイルドだ。殺気じみた姿は男っぽい。写真と同時に今回共演の大楠道代、故松田優作、桃井かおりや宇崎竜堂との対談を含む。でも何でこの本買ったのだろう。記憶にまったくない。
(大鹿村の歌舞伎)人口は1100人の完全な過疎地である。若い人も減っているだろう。よくもまあ続くものだ。歌舞伎といっても大衆演劇の延長のようだ。チップの投げ銭が飛び交う中、演じる男たちの息は荒い。この歌舞伎で原田芳雄は最後の力を振り絞って演技する。後ろの口上は地元の人たちであろう。プロの匂いがする。
この映画のいいところは地元紹介に余計な時間を使いすぎないことだ。例えば「八日目の蝉」はいいと思うが、小豆島の地元のお祭りなどをくどく紹介する。時間がそれで長くなる。実に余計だ。ここではそういうことはなく、大鹿村の住民になりきって配役が歌舞伎を演じる。二度手間のロスがない。原田芳雄、大楠道代、小野武彦、石橋蓮司、でんでん、加藤虎之介、小倉一郎とそれに加えての黒衣が岸部一徳に瑛太だ。なんというスターたちであろう。すばらしい。現代日本映画の集大成みたいだ。
そして最後の手締めをする三国連太郎、ケガをして歌舞伎に出れない佐藤浩市親子が共演する。
執念に思わず拍手、心から原田芳雄の冥福を祈りたい。