映画とライフデザイン

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映画「黒い画集 ある遭難」 

2014-04-24 18:37:33 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「黒い画集 ある遭難」は1961年の東宝映画

これも松本清張の短編集「黒い画集」の一つだ。3作見たがこれが一番スリリングかもしれない。
「網走番外地」や東映お色気路線で有名な映画監督の石井輝男による脚本が上手にまとまっている。時間軸をずらす処理もうまい。以前原作は読了しているが、内容は覚えていない。映画を見ていくうちに、ドキドキ感が高まりどういう風に決着をつけるのかをわくわくしながらみた。傑作だと思う。

山男たちが、崖から滑落した山男の死体を引き上げている。鹿島槍で銀行員3人のパーティが、ガスで道を見失い、その一人が谷に滑落してしまった。死体が荼毘に付されているのを見つめながら、姉(香川京子)は初心者の浦橋が助かって弟が遭難したことに疑問を持っているようだ。

山岳雑誌の「岳人」に同僚浦橋による寄稿文が載る。

浦橋の回想が始まる。快晴の鹿島槍頂上には銀行員の江田(伊藤久哉)、岩瀬秀雄(児玉清)、浦橋(和田孝)の3人が映る。 その後、下山を始めると先ほどまでの好天がウソのようにガスが立ち込めてくる。「引き返そう」と江田が言うと、岩瀬は強硬に進もうと主張する。それなのに岩瀬は息苦しそうだ。目的地まではあと少しだが、やむなくパーティは今来た道を引き返した。

ガスの中をさまよいながら浦橋は同じ道を引き返していると思っていた。しかし、江田が牛首山の方に紛れ込んだようだと言い出す。黒部側で反対だ。布引岳と牛首山がよく似ているので間違えたのだ。雨は激しくなる。岩瀬はグッタリしている。江田は小屋に救援を頼みに行ってくるといい2人は残された。激しい雷雨で、岩瀬の容態が悪くなっていると浦橋が感じたとき、岩瀬が意味不明なことを言いつつ、走り出し崖から落ちていった。
今回の山登りでは、江田の好意で寝台車で行った。しかし、浦橋がトイレに起きると、岩瀬が真っ青な顔で、デッキに立っている。眠れないようだ。山に入ってからも岩瀬の体調は悪そう。江田が頻繁に休憩をとるが、かえって岩瀬は疲れていく。水を飲む量も次第に多くなっていく。小屋に泊まっても、岩瀬は眠れない様子だ。浦橋は改めてそう追想した。

銀行で勤務中の江田に岩瀬の姉の真佐子から会いたいと電話が入った。約束の場所にいくと、もう一人東北の電力会社につとめている従兄の槙田(土屋嘉男)がいた。真佐子は弟の遭難場所に花を捧げてやりたいと言う。ただ、自分では冬の登山は無理。代わりを松本高校の山岳部だった従兄の槙田に頼んだので一緒に行ってくれないかという。江田は休暇を取れたら一緒に行くと答えた。
2人は新宿発の夜行列車に乗って山に向った。列車に乗ると、槙田は「岳人」に掲載された浦橋の記事を思い起こさせる話をしてきた。槙田は夜中に寝もせずにいたりしたので、江田は不気味に感じた。
山に入ると、槙田は遭難した登山スケジュールを再現するような行動をとる。やたらと休憩を取りたがったり、同じ場所で水筒に水を入れたりする。それにしても何でこんなに休んだり、水を飲みまくるのかと江田に問う。山小屋に入っても、寝床で槙田は江田を追及する。自分の調べでは、松本の気象台が当日天気が崩れると予報を出していたと指摘する。

翌日、遭難現場で献花を終えたあと、槙田は江田に向って話を始める。寝台車で眠れなかったのは、江田がショックを与えることを言ったからではないか?天候も予報で予知したはずだし、休憩を多くとって疲れさせたのもおかしい。しかも、黒部側の山の地図を持って行かせなかったことなど意図的なものが感じられると言うのであるが。。。

最近でも名カメラマン木村大作がメガホンを取った「剣岳」など登山を描いた映画は見応えのあるものが多い。撮影の困難さがにじみ出ている。機材を運ぶのも大変だろう。監督、カメラマンはもちろん演じる出演者たちもかなりしんどい仕事だ。黒澤明脚本谷口千吉監督による「銀嶺の果て」や井上靖原作の「氷壁」という名作もあるが、この作品も登山ミステリーとして記憶されるべき作品だと思う。
前半のガスが立ち込める中の夏山登山のシーンはもとより、伊藤久哉と土屋嘉男の雪山登山シーンはCGがない時代だけによくやったなあと感じさせる。特に最後の転落シーンはおいおい大丈夫?と驚く。

メジャーと思しき俳優は香川京子だけである。撮影の困難さで断る人気俳優もいたかもしれない。最近亡くなった若き日の児玉清が遭難した岩瀬を演じる。精悍な風貌も見せるが、ここでは苦しい表情が続く。突然発狂した時は、「山月記」の虎になった男が猛然と走りだす場面を連想した。土屋嘉男は最近までTVによく出ていただけに親しみがある。香川京子の美貌は愁いがあり、いつもながら素敵だ。

映画を見ていて、リーダーの江田を槙田が責めていく構図は途中から見えていく。でも、映画をどう決着をつけるかは想像つかない。2人の間に取っ組み合いもあるのか?どういう結末になるのかをドキドキしながら見守っていった。やはり最後5分以内までドキドキさせる映画はスリリングだ。ヒッチコックの映画が製作されている時代だが、似たような緊張感を呼び起こす。
結果的に結末は原作と異なる。映倫がからんでいたのであろうか?どっちがいいかは人によるだろう。


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