映画とライフデザイン

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映画「拝啓天皇陛下様」 渥美清

2013-09-07 05:51:22 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「拝啓天皇陛下様」は昭和38年の松竹の喜劇映画だ。

渥美清と藤山寛美の歴史的共演である。それだけで価値がある。この映画が放映されるとき、映画テレビの両方で第一次「渥美清ブーム」があった。この作品は名作と言われるが、そこまでの評価に値するとは思わない。腹を抱えるほど笑えるわけではないし、強烈なギャクがあるわけでもない。藤山寛美とのコメデイ演技合戦をするわけではない。その点では期待はずれだ。むしろ、人情ものでそののちの「男はつらいよ」の原型と考えた方がいい。

昭和6年岡山の歩兵連隊に入隊した棟本博(長門裕之)は同じ中隊に配属され、山田正助(渥美清)と出会う。新兵は二年兵から厳しいシゴキを受けるが、山田は不況下でも三度の飯が食え風呂にまで入れる軍隊はまるで天国だと棟本にもらす。秋になり外出で花街の中島に出かけた2人は、そこで新兵いじめ常習の原二年兵(西村晃)を、それとは知らずに襖越しにからかいビンタを食らう。 これをキッカケに山田は原が満期除隊の時に復讐するつもりであった。しかし原の除隊前夜仲間に焚きつけられ仕方なく相撲を挑むが本気で取り組まぬ原に業を煮やした山田は投げ飛ばしてしまう。痛がる(振りをする)原を寝台へ運んだ山田は懸命に謝りながら腰を揉む。

昭和7年、二年兵となった棟本と山田たちは、今度は逆に新兵をシゴキはじめるのである。ある休日外出の際、山田が泥酔し門限を破ってしまい、5日間営倉へ入る懲罰を受ける事になってしまった。中隊長の堀江(加藤)は情に熱い人物であり、山田が居る営倉に入り共に正座するのである。晴れて山田の懲罰が解けたある日、堀江は山田に読み書きを勉強させようと、入隊前に代用教員をしていた初年兵の柿内二等兵(藤山寛美)を専属の教師に付ける。乗り気ではなかった山田も次第に読み書きが出来るようになり、のらくろも読めるようになっていく。

同年11月、天覧の秋季大演習。写真ですら天顔を拝した事が無かった山田は、実際の天皇の優しい顔立ちに感激して親しみを抱く。2年間の現役兵期間が終わり近くなった12月、堀江中隊長は無一文で入隊した山田に対し、満期除隊の際に着て欲しいと紋付の羽織と袴をプレゼントするほか、果樹園で働けるように手配するなど最後まで山田に親切に接し朝鮮竜山の連隊へ転属していく。

昭和12年、支那事変に伴う招集により再び兵役についていた棟本と山田は、南京が陥落したことを知る。仲間の兵隊たちは「これで戦争が終わる」と喜ぶが、帰るところがなく軍隊が天国だと思っている山田は自分だけは軍隊に残してもらおうと「ハイケイ天ノウヘイカサマ…」と手紙を書き始める。しかし、天皇に直訴することは不敬罪に当たるとして書きかけの手紙を棟本に取り上げ破り捨てられてしまう。結局、日中戦争は終結せず棟本や山田も戦地へ赴いた。
昭和13年、中国では昔の中隊長であった堀江はすでに戦死し、棟本も台児荘の戦闘で重傷を負う。負傷除隊後、自らの経験を出版し人気作家となった棟本は昭和16年、九州で講演した際に、炭鉱夫として働く山田と再会する。その後、戦局の拡大のため棟本は従軍作家に、山田はまたも招集され兵士として、堀江が戦死した中国で終戦を迎える。

戦後、作家としての仕事を失い土浦で困窮生活をしている棟本夫妻のもとに浮浪者のような姿の山田がひょっこり現れる。買い出しに行った山田は土産と称しニワトリを持ち帰るが、出所を聞かれ棟本は日本人同士で盗みを働くことに烈火の如く怒り山田を追い出してしまう。その後、児童文学作家として再出発した棟本は、取材中の日光で喧嘩別れした山田と出会い再び交際が始まる。奥日光開拓のため入植していた山田はたびたび棟本夫妻を訪ね、同じ長屋の戦争未亡人手島国枝(高千穂ひづる)に片思いで惚れ込んでしまう。高給を得るため華厳滝から自殺者を収容する職につき、子持ちの手島と暮らす日を夢見る山田だ。でもあえなく振られてしまうが。。。。

日本軍版「フルメタルジャケット」と考えればいいだろう。(フルメタルジャケットの方がずっと後であるが)最初いじめられた後、手のひらを返したように自分たちがいじめる。初年兵を二年目以降の人間がいじめる姿がいやらしい。
小林信彦に言わせると、森繁久弥と違い、渥美清に大卒の人間を演じさせるのは無理だという。自分の大学を出るような役をやらせると、抜群なんだけど。一人称で映画をリードする棟田を演じる長門博之はもともと喜劇役者でないし、キャラ的にインテリ崩れが出来る。
映画では藤山が文盲の男渥美に国語を教える設定、これには無理があると思う。2人は同類同士なのに
それによって、藤山らしさがまったく見えないのが残念だ。
世紀の天才藤山寛美については別のコラムでじっくり語りたい。

脇役が懐かしい。「男はつらいよ」のマドンナに通じる高千穂ひづるが美しい。没落未亡人役が適役だ。棟田の妻役である左幸子がよたっていない。山下清が突如出てくる。一言はなすだけなのにこれは滑稽
桂小金治が懐かしい。自分が子供の頃には寄席番組というと彼のイメージが強い。日活にもずいぶん出ていた。

渥美清のパフォーマンスはいずれにせよ楽しめた。
コメント
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