映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

シングルマン  コリンファース

2011-03-30 14:29:07 | 映画(洋画 2006年以降主演男性)
今年のオスカー主演賞を受賞したコリンファースの受賞作の前作である。
「シングルマン」はファッション界で名を挙げたトムフォードの初監督作である。コリンファースとジュリアンムーアの二人が写る映画ジャケットからは二人の恋物語を連想した。実際にはジャケットから想像できない男色ベースの映画であった。1962年ケネディ政権時代のゴールデンエイジといわれたアメリカが舞台。ファッション、インテリア、音楽に関しては抜群のセンスを感じさせる。


水の中を彷徨う男が映像に映し出される。なんだろう?
そして交通事故で死んでいる男の唇に自らの唇を合わせるコリンファースが映し出される。
1962年11月30日のコリンファースの一日を映像が追う。8ヶ月前主人公の大学教授ことコリン・ファースには16年間共に暮らした連れ合いの男性ことマシュー・グードがいた。彼は交通事故で亡くなった。LAの大学で英文学を教えている内省的な主人公と建築家の連れ合いとは最愛のパートナー同士であった。それ以来悲しみは癒えるなかった。そしてコリンは自らこの辛い状況を終わらせようと死を決意する。大学のデスクを片付け、銀行の口座を整理、新しい銃弾を購入。着々と準備を進めた。
しかし、最後の授業ではいつになく自らの信条を学生に熱く語った。講義に触発された教え子の少年ことニコラスホルトが、学校の外で話したいと追いかけてくる。彼の誘いを断って銀行に行くと、いつも騒がしい隣家の少女と偶然出会う。コリンは少女の可憐さに始めて気付き、彼女との会話を楽しんだ。帰宅したコリンは、遺書、保険証書、各種のカギ、「ネクタイはウインザーノットで」のメモを添えた死装束……全てを几帳面にテーブルに並べる。そして銃、とその時、かつての恋人で今は親友のジュリアン・ムーアから電話が入る。コリンは彼女の家を訪れるが。。。


トムフォード監督のファッション界における活躍はすごい。そんな彼が撮っただけに、センスある映像が続く。62年といえば、ベトナム戦争が始まっていない。ソビエトとの冷戦状態にあったが、学生運動が始まる前のキャンパスには典型的アメリカらしさが残る。そこに美少年たちを次から次へと登場させる。新宿3丁目系の人たちにはある意味たまらない映画であろう?
ニコラスホルトはこれからハリウッドでメジャーとなる存在だと思う。


最近のラブコメ系は原色系の派手な美術であるが、対照的にこの映画ではかなり色彩を落としてセピア系に近いトーンだ。いっそのことモノトーンにしても良かった気もするが、カラフルな色の外車、建築美を感じさせる素敵なロケ地を見せるにはやはりカラーなのかな?
ミケランジェロアントニオーニ監督に「夜」という不毛の愛を描いた1961年の名作がある。マルチェロマストロヤンニにモ二カヴィッティ、ジャンヌモローがからむ当時としては先端をゆく作品だ。

白黒映画の「夜」であるが、妙にこの映画に通じているところがある。ともに抜群のセンスをもつ映画の背景だ。主人公が住む家は、すばらしい意匠を見せる。FLライトが西海岸で設計した建築作品集をみたことがあるが、それに通じるセンスだ。室内空間が広がり、クロス貼りでなく木目調で小細工をきかせたインテリアがプロの建築家が見せる仕事ぶりだ。ロケハンティングも絶妙だ。


隣家の少女が街を歩く場面をみていてハッとした。
スローモーションタッチの映像の動き、バックに流れるバイオリンを基調にした音楽。私の大好きな香港映画「花様年華」でマギーチャンが歩く姿のシーンとそっくりではないか。。。さては監督コピーしたなと思った。そうしたら調べてみると、音楽がいずれも梅林茂という日本人が担当していることを知った。
私のブログのプロフィルにはずっと「花様年華」のシーンを貼ってある。ものすごい好きなのに梅林茂の存在を知らなかった。かたやノスタルジックな香港、かたやLAとまったく違う情景なのに同じようにしっくりいく音楽に感銘を受けた。ちょっと追いかけてみたい。

ただ男色映画っていうのはやはり苦手だなあ。ファッション、インテリア、音楽を楽しむにはいいんだけれど
コメント
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