映画とライフデザイン

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天城越え  田中裕子

2011-04-28 05:45:04 | 映画(日本 1989年以降)
石川さゆりの名曲「天城越え」は去年の紅白でも歌っていた。いつもながらの熱唱は大好きだ。
直接的な関連はないのに、この歌を聴いていると松本清張の「天城越え」を思い出す。短編「天城越え」を最初に読んだときには背筋がぞくっとした。
印刷会社の社長が老刑事の訪問を受け、昔の犯罪に関する調書の印刷を頼まれる。その犯罪はまぎれもなく自分が少年時代にかかわった犯罪だったのだ。
誰しもが犯罪ではなくても良心の呵責にかかわる出来事ってあると思う。そんな話を時間がたってから突如として誰かに指摘されるとドキッとする。そういう心理が本を読んでドキッとさせたのであろう。

「天城越え」は83年の松本清張の小説の映画版である。テレビ朝日の2時間ドラマのような流れである。ひと時代前の古さを感じる。一つだけ際立つのは田中裕子の熱演である。このころの彼女は何か違うオーラがある。


静岡で印刷屋を営む小野寺こと平幹二朗のもとに、県警の嘱託である渡瀬恒彦が訪れる。「天城山殺人事件」という刑事調書の印刷を依頼しに来た。事務員から受け取った原稿を見て平は激しく衝撃を受けた。少年のころ、かかわった事件だったのだ。平は14歳の頃を回想する。
主人公は14歳のころ下田に住んでいた。家業は鍛冶屋だったが、父は亡くなって母こと吉行和子と暮らしていた。主人公は母が叔父といちゃつく姿を見て気分を害し、一人で家出する。天城越えの旅に出た。一人旅はさびしく、途中何人かの旅人とであったが、結局一人で天城越えをすることとなる。主人公は素足で旅する若い娘大塚ハナこと田中裕子と出会う。一緒に歩くあでやかな田中裕子に惹かれた。その時みすぼらしい格好した大工を見かける。。。。その後少年は下田の自宅に戻る。
下田に戻った後、少年は警察の訪問を受ける。みすぼらしい恰好をした大工が殺されている気配があることがわかる。少年が天城にいたことを知る目撃者がいたのだ。しかし、少年ということもあり、取り調べは簡単な聞き取りで終わる。その後流れの娼婦である田中裕子渡瀬恒彦刑事率いる警察の拷問を受けることになるのであるが。。。。


田中裕子は警察から拷問を受ける。その拷問がかなりの体当たり演技だと思う。渡瀬恒彦は強烈に彼女をいたぶる。彼女は妖艶さを見せると同時に、戦前の自白を導こうとする拷問をあえて表現してみたかったのだと思う。しかも、スター女優だったのにもかかわらず、ボリュームには難があるけどバストトップを見せる。この年彼女は「おしん」もテレビで演じていた。60%以上の視聴率を獲得した怪物番組の主演だった。のっているってこういうことなんだろうと思う。妖艶さにはぞくぞくする。
「夜叉」のときにも言ったが、ジュリー沢田研二が彼女に狂ったのもわからなくもない。

こうやって映画版を見ると、欠点が割と目立つ。原作に多少脚色している。事件の時期を大正から昭和にしたのには不自然さはない。しかし、殺しの場面、死体処理の場面こういう設定をすると不自然になってしまう気もする。また、印刷屋の主人が病気におかされている設定にした。あえてそうしたのであろうと思うが、自分には不自然に思えた。原作にある恐るべき余韻をなくしてしまうのではないか?

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2 コメント

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天城越え  (もののはじめのiina)
2020-02-01 12:10:41
「天城越え」松本清張を、昨年に読みました。
新聞に読んでおきたい松本清張の小説を紹介した作品集に収録されていました。

なかなか巧みな構成でした。

その天城越えをして参りました。

ありがとうございます! (wangchai)
2020-02-01 21:40:58
コメントありがとうございます!
素敵な写真のブログですね。

映画は田中裕子の絶頂時の姿が見れて、それをみるだけでも価値があります。

でも、松本清張の小説の方がすばらしい。このドキドキ感はなんともいえませんし、そこはかとない余韻があります。それがないのが映画の物足りなさです。

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