映画「とべない風船」を映画館で観てきました。
映画「とべない風船」は瀬戸内海の孤島を舞台にした人間ドラマだ。不倫事件で干されてから、ひっそりと映画キャリアを積み上げている東出昌大と「ドライブマイカー」のドライバー役でハマり役をつかんだ感じの三浦透子の共演、ベテランの小林薫と浅田美代子が脇を固める。
瀬戸内海の孤島にいる元教員の父(小林薫)を東京で派遣事務をしている娘の凛子(三浦透子)が訪れる。妻を亡くし一人住まいの父は島の港で働く若者から慕われている。居酒屋の女将(浅田美代子)のたまり場の店で、漁師仲間がワイワイ飲んでいる中で一人だけ影のある男憲二(東出昌大)がいる。憲二には妻子を豪雨による土砂崩れで亡くしたつらい過去があり心を閉ざしていた。そんな憲二に凛子は関心をもつ。
のどかな瀬戸内海の周囲に小島が浮かぶ孤島の風景が美しい。大画面いっぱいに海が広がる映像を観ると、心が豊かになる。宮川博至監督の出身地広島の離島でのオールロケで、時間がゆったりと流れる人々を映す。
東出昌大、三浦透子いずれも好演、小林薫が円熟味あふれる演技で渋い。浅田美代子も永瀬直美監督「朝がくる」に引き続きいい味を出している。しかし、この狭い島での逸話だけではネタづくりに限界がある。大きくは動かない。島以外のエピソードを交えた変化がないので、傑作という領域までには届かない。でも、心地よい時間を過ごせた。
「とべない風船」という題名は、東出演じる憲二の家にある黄色い風船だ。その黄色は「幸せの黄色いハンカチ」からとっているそうだ。
⒈東出昌大
世間の週刊誌ネタでは相変わらず悪者扱いだが、東出昌大は映画界で引き続き活躍している。この映画は、2018年に中国地方を襲った豪雨の影響もテーマの一つにしている。東出演じる憲二の妻と子が、豪雨の中父親の様子を見に行ったときに土砂崩れで亡くなった。その余韻で失意のあまり閉じこもっている。
過去を振り返って東出昌大が号泣する場面もある。実際に不倫で杏と子どもと別れざるをえなかった実生活にもつながる。配役のオーダーがあったときどんな気持ちだったであろうか?一見クールに見える東出もこの映画に感情移入している気がした。
⒉三浦透子
つい先日「そばかす」を観たばかりである。結婚や恋愛に関心のない30歳の女性を演じる。喫煙者ドライバーの「ドライブマイカー」と同じようなキャラクターの女性に見えた。今回は瀬戸内海の孤島でのロケで、広島の海辺を悠々とドライブしていた「ドライブマイカー」に近い場所だ。父親同様に教員になったけど、うつで教員を辞めて派遣の事務をやっている。もう一度教員の道に進もうかと考えているのも父親に会おうとするきっかけだ。
現代の若者にはたまにいるタイプである。その独自のキャラクターで今後も起用されるだろう。それにしても、男性共演者がいるんだけれど、恋愛とは無縁の映画が続く。そろそろ大恋愛物語があってもいいかもしれない。
⒊小林薫
妻に先立たれた元教員だ。ここで死にたいと妻が選んだ島で、もともと住んでいたわけではない。ここでの小林薫の演技はいぶし銀という感じでよく見える。前作の阪本順治監督の「冬薔薇」は犯人捜査が絡むストーリーなのに現代のIT捜査の要素がうまく織り込まれていなかった。難ありの映画ではあったが、小林薫は良かった。時々、痛みで胸を押さえる。心臓疾患にかかっているようだが、病院に行かない。その健康状態の悪化も映画の題材になる。
うつで教員を辞めた娘に、「自分が長く教員を勤められたのも、適当にサボっていたからだ」と言う。たしかにそうだよね。その気持ちはよくわかる。いい感じだ。
⒋浅田美代子
浅田美代子の顔をみていると童心に戻れる。デビュー時に生まれた人でも今年50歳だ。「時間ですよ」での大フィーバーを知っている人は少ないだろう。当時中学生の自分の仲間たちはアコースティックギターを弾きながら「赤い風船」を歌った。目をそわそわしながら歌う仕草がモノマネ芸でずいぶんとマネされた。最初は西城秀樹と噂されたけど、結局吉田拓郎と結婚、その後離婚で芸能界復帰。元祖天然ボケキャラはさんまとのコンビでずいぶんと活かされる。
「朝が来る」も広島の海辺の施設が舞台だった。望まぬ妊娠をして産んだ子どもを斡旋する施設で働く役柄をみて、自分より年上ながら、浅田美代子も大人になったなあと思ったものだ。ここでの居酒屋の女将役もうまい。かわいい東京女学館の制服が似合う東京育ちの浅田美代子が、地方を舞台とした映画で味のある役柄で活躍している。気がつくといい役者になっていて個人的にはうれしい。
映画「とべない風船」は瀬戸内海の孤島を舞台にした人間ドラマだ。不倫事件で干されてから、ひっそりと映画キャリアを積み上げている東出昌大と「ドライブマイカー」のドライバー役でハマり役をつかんだ感じの三浦透子の共演、ベテランの小林薫と浅田美代子が脇を固める。
瀬戸内海の孤島にいる元教員の父(小林薫)を東京で派遣事務をしている娘の凛子(三浦透子)が訪れる。妻を亡くし一人住まいの父は島の港で働く若者から慕われている。居酒屋の女将(浅田美代子)のたまり場の店で、漁師仲間がワイワイ飲んでいる中で一人だけ影のある男憲二(東出昌大)がいる。憲二には妻子を豪雨による土砂崩れで亡くしたつらい過去があり心を閉ざしていた。そんな憲二に凛子は関心をもつ。
のどかな瀬戸内海の周囲に小島が浮かぶ孤島の風景が美しい。大画面いっぱいに海が広がる映像を観ると、心が豊かになる。宮川博至監督の出身地広島の離島でのオールロケで、時間がゆったりと流れる人々を映す。
東出昌大、三浦透子いずれも好演、小林薫が円熟味あふれる演技で渋い。浅田美代子も永瀬直美監督「朝がくる」に引き続きいい味を出している。しかし、この狭い島での逸話だけではネタづくりに限界がある。大きくは動かない。島以外のエピソードを交えた変化がないので、傑作という領域までには届かない。でも、心地よい時間を過ごせた。
「とべない風船」という題名は、東出演じる憲二の家にある黄色い風船だ。その黄色は「幸せの黄色いハンカチ」からとっているそうだ。
⒈東出昌大
世間の週刊誌ネタでは相変わらず悪者扱いだが、東出昌大は映画界で引き続き活躍している。この映画は、2018年に中国地方を襲った豪雨の影響もテーマの一つにしている。東出演じる憲二の妻と子が、豪雨の中父親の様子を見に行ったときに土砂崩れで亡くなった。その余韻で失意のあまり閉じこもっている。
過去を振り返って東出昌大が号泣する場面もある。実際に不倫で杏と子どもと別れざるをえなかった実生活にもつながる。配役のオーダーがあったときどんな気持ちだったであろうか?一見クールに見える東出もこの映画に感情移入している気がした。
⒉三浦透子
つい先日「そばかす」を観たばかりである。結婚や恋愛に関心のない30歳の女性を演じる。喫煙者ドライバーの「ドライブマイカー」と同じようなキャラクターの女性に見えた。今回は瀬戸内海の孤島でのロケで、広島の海辺を悠々とドライブしていた「ドライブマイカー」に近い場所だ。父親同様に教員になったけど、うつで教員を辞めて派遣の事務をやっている。もう一度教員の道に進もうかと考えているのも父親に会おうとするきっかけだ。
現代の若者にはたまにいるタイプである。その独自のキャラクターで今後も起用されるだろう。それにしても、男性共演者がいるんだけれど、恋愛とは無縁の映画が続く。そろそろ大恋愛物語があってもいいかもしれない。
⒊小林薫
妻に先立たれた元教員だ。ここで死にたいと妻が選んだ島で、もともと住んでいたわけではない。ここでの小林薫の演技はいぶし銀という感じでよく見える。前作の阪本順治監督の「冬薔薇」は犯人捜査が絡むストーリーなのに現代のIT捜査の要素がうまく織り込まれていなかった。難ありの映画ではあったが、小林薫は良かった。時々、痛みで胸を押さえる。心臓疾患にかかっているようだが、病院に行かない。その健康状態の悪化も映画の題材になる。
うつで教員を辞めた娘に、「自分が長く教員を勤められたのも、適当にサボっていたからだ」と言う。たしかにそうだよね。その気持ちはよくわかる。いい感じだ。
⒋浅田美代子
浅田美代子の顔をみていると童心に戻れる。デビュー時に生まれた人でも今年50歳だ。「時間ですよ」での大フィーバーを知っている人は少ないだろう。当時中学生の自分の仲間たちはアコースティックギターを弾きながら「赤い風船」を歌った。目をそわそわしながら歌う仕草がモノマネ芸でずいぶんとマネされた。最初は西城秀樹と噂されたけど、結局吉田拓郎と結婚、その後離婚で芸能界復帰。元祖天然ボケキャラはさんまとのコンビでずいぶんと活かされる。
「朝が来る」も広島の海辺の施設が舞台だった。望まぬ妊娠をして産んだ子どもを斡旋する施設で働く役柄をみて、自分より年上ながら、浅田美代子も大人になったなあと思ったものだ。ここでの居酒屋の女将役もうまい。かわいい東京女学館の制服が似合う東京育ちの浅田美代子が、地方を舞台とした映画で味のある役柄で活躍している。気がつくといい役者になっていて個人的にはうれしい。