★ 死を参照することによって病はまなざしに開かれ、読まれるようになる。フーコーによれば医学的思考の中に死を統合することで、医学は個人の科学となったのだった。死というものが個に意味を与えるという経験は、まさに近代的文化の特徴なのだとフーコーは言う。ヘルダーリン、ニーチェ、フロイトの思考などを例にあげて、フーコーは近代において個性の経験が死の経験と結びついていることを指摘している。各人が死と単独的な関係を取り結び、それが各人の言葉に力を与える。人間についての科学のひとつである医学と、文学などの叙情的経験とが、18世紀以降、有限性としての人間という考え方を中心にして同じ運動に従っているとフーコーは考える。
<『フーコー・ガイドブック』(ちくま学芸文庫2006)-ブックガイド『臨床医学の誕生』(小野正嗣)>
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