馬場朝子編による『タルコフスキー 若き日、亡命、そして死』(青土社1997)を入手した。
この本は1996年5月にNHK教育テレビ「未来潮流」で放映された「タルコフスキー その初まりへの旅」にともなうものだが、ぼくはこの番組を見損なっている(つまりそういう番組がつくられたことを知らなかった)
最初にタルコフスキーの妹のマレーナさんの証言がある(タルコフスキーは1931年モスクワ郊外の小さな町ユリエベッソで生まれた);
★ そして忘れられないのは、河の光と香り。河を流れる木材の湿った香り、空を飛ぶカモメの鳴き声は格別なものでした。
★ そして待ちわびた春に続く短い夏の夕立と雷。家の前の大きな木の枝が強風でゆれて、その葉の動きがまるで人間が手で顔をおおうように見えたものです。映画「惑星ソラリス」で、クリスが宇宙へ出かける前の父と子の会話シーンでバックに雷が響きます。兄にとっては雷は我々が住む大地のシンボルだったのです。それはここで兄が発見したものでした。
★ 兄にとって子供時代は最も大切なものでした。兄の映画のすべてに子供が登場します。「子供」というテーマが好きで、子供時代がその人の性格を決定すると言っていました。子供の目というのは、すべてを観察し、記憶に打ち込んでしまうものです。そして普通の人はそれを記憶の底に沈め忘れていきますが、兄はそれを自分の作品に再生させていったのです。
★ 兄にとって「家」というテーマも大切なものでした。いつも借り住まいだったことが「家」への思いを強くしていました。そして家の中の小さな道具、アルコールランプや、水差しなど、そんな小さなものが兄の映画の大切な要素なのです。兄は、生活の中の「普通のもの」を映画の「シンボル」にしてしまいます。
*画像はタルコフスキー「鏡」
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