読売新聞が鳩山前首相の“言葉が軽い”と皮肉を言っている。
こういうことを、“言うまでもない”と言う。
言葉が軽いのは、誰か?
読売新聞である。
ことばが、実用品でしかないひと、ことばがアクセサリーでしかないひとにとって、言葉は、軽いのである。
この今日の読売編集手帳において、”読むべき“なのは、最初にあるジョン・ル・カレの<言葉>のみである。
鳩山前首相と読売新聞の、どっちがくだらないかを論じても、言葉は死んでゆくばかりである。
ぼくはジョン・ル・カレというイギリス人の言葉は、聞くべきだと思っている。
☆ 今日読売編集手帳引用(全文)
登場人物が言う。〈わたしは、敵はこわくない。いちばんこわいのは味方だ〉。ジョン・ル・カレのスパイ小説『スマイリーと仲間たち』(早川書房)の一節にある◆組織がこうむる失点は敵のシュートによってではなく、味方のオウンゴールによる場合が少なくない。古今東西、あらゆる組織に通用する至言だろう。余計な推測ながら、菅政権の面々はいま、渋い顔で同じ言葉を内心つぶやいているかも知れない◆鳩山由紀夫前首相が首相を辞任する際に語った「次の衆院選には出馬しない」との発言を翻し、議員をつづける方向という◆野党時代の「秘書が犯した罪は政治家が罰を受けるべきだ」。首相として普天間問題で米大統領に語った「トラスト・ミー」(私を信じて)。持病のごとき言葉の軽さには慣れたつもりでも、民主党とは言葉をかくもぞんざいに扱う政党なのか――と、世間はほとほとあきれよう。首相以下、閣僚の国会答弁を誰も真剣には聞いてくれまい。“怖い味方”がいたものである◆オウンゴールで敵(野党)に塩を送るつもりならば、その人の「友愛」精神なるものは筋金入りだろう。
<参考:ジョン・ル・カレ“スマイリー3部作”>
* ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ
* スクールボーイ閣下
* スマイリーと仲間たち
(いずれもハヤカワ文庫NV)
“スマイリー・シリーズ”によって学べるのは、“敵と味方の区別”だけではない。
官僚について、権力構造について、権力闘争について、暴力について、かけひきについて、自分の手を汚さないものについて、抜け目なく生き抜くものと、そうでないものについて。
それだけではない、孤独について、夫婦について、“友愛”について。
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