気ままにフィギュアスケート!

男子シングルが好きです。

Swan Lakeの振付

2008-02-11 22:21:24 | 高橋大輔プログラム
Swan Lakeで連続3回目。しつこいと思うけれど、振付について全く書いていなかったので、もう少しだけ書きます。

頭上で右手を左手に重ね合わせ、音楽を待つ。音楽が始まり両手を合わせたまま体をくねらせる。閉じたまぶた、厚い唇、ものうげな表情が色っぽい。
ジャンプへ入る前にステップを踏み、両手を翼を広げるように真上に上げてから、リズムを取るように2回右手を振る。
ジャンプとジャンプのつなぎで、曲げた腕が鳥の翼のように見える。鳥が片翼ずつ広げて伸びをし、飛翔の準備をしている動作のようだ。
スピンをはさんでリズムが激しさを増す。ここまではビートの効いた『白鳥の湖』であったのが、ヒップホップの世界へと移る。
翼を脱ぎ捨て、ヒップホップを氷の上で表現することのみに専念する。
激しく腕、肩、体躯をくねらせ、踊りながら細かいステップを踏み、観る者の目を奪い釘付けにする。誰もこれまで見たことのない世界へと引きずり込む。サーキュラーステップは誘惑への序章のようだ。
再びスピンの後にストレートラインステップ。俺を見ろ、とでも言うように後ろを振り返り激しくステップを踏み出し、両手を体の前でクロスさせる。狙いを付けるかのように2本指での指差しポーズ。
サーキュラーステップで誘惑を仕掛けるなら、ストレートラインステップで畳み掛けるかのように魅力に溺れさせる。
そのままスピンで一気に絡めとり、両腕を高々と上げて外側に向けた指先に表情を付けてフィニッシュのポーズ。広げた大きな翼が見える。

湖に一羽の黒鳥が降り立ち、美しい人間の青年の姿に変わるとひとしきり踊り狂い、再び黒鳥の姿に戻って飛び立つ、そんな展開のように思う。
湖はアイスリンク、黒鳥が誘惑するのは観る者全て。黒鳥はなぜ誘惑するのか。黒鳥は自分の能力を、そして魅力を最大限に発揮し、誘惑しずにはいられないのだ。持てる力を振るわずにはいられない、魅了することそれ自体が目的なのだ。
『白鳥の湖』のストーリーは全部無視して、彼の創り出す世界に溺れるのが正解だ。
風になびく黒髪と黒い羽との見分けも付かないほど幻惑されたその瞬間、彼の世界から抜け出すことはもはやできない。

かなり偏った見方のものになってしまったかと思います。見る人それぞれのSwan Lakeがあるのでしょう。あくまでも踊り狂う黒鳥路線で書きましたが、実はちょっとばかり大ちゃんが悪魔ロッドバルトに見えます。

Swan Lake ~ヒップホップの衝撃

2008-02-11 18:45:00 | 高橋大輔プログラム
10月7日、日米対抗戦EXで初披露されたSwan Lake ~Hip Hop Versionの衝撃は大きかった。あらかじめ@niftySportsの記事を読んで、白鳥の湖とヒップホップを融合させたとんでもないプログラムが披露されるらしい、ということは知っていたが想像もつかない。期待と不安の入り混じった気持ちでテレビ放送を待った。
新SPプロが披露されるというアナウンスが流れ、会場に喜びの悲鳴が響く。バチェラの衣装に身を包んだ彼が氷の上で音楽に合わせてセクシーに動き出す。3本のジャンプ(3F,3A,3Lz)を跳んだ後、固唾を呑んで見守る観客の前でステップが始まる。

こんなの見たことない!上半身と下半身が別のリズムをとっていると解説の八木沼純子さんが語っていたが、彼は自分の身体を自由自在に操り上半身と下半身が別の動きをしている。こんな動きがスケートで可能なのだと、改めて彼の能力の高さに驚いた。
よく使われた言葉だが、革命的なプログラム、これを見たら世界中のスケート関係者が度肝を抜かれるだろうと思った。そしてスケートに本格的にヒップホップを取り入れたのが彼が初めてであること、自分が彼のファンであることに感謝した。

インタビューで何度も彼がヒップホップの難しさ、そしてそれを氷の上で演じることの困難さを口にしている通り、これは並大抵の努力と能力でできることではない。
ダンサーに比べれば自分はまだまだという彼の謙虚さからくる妥協なき努力が、陸上のダンスであるヒップホップを氷の上で再現させたのだ。それは誰よりも速いステップを踏むことのできる彼の能力があってこそ可能だったわけで、他の選手が簡単に真似のできることではない。

最初の公式戦スケートアメリカ、彼は斬新なプログラムがジャッジに受け入れられるのかが気になっていたようだが、観客にもジャッジにも大好評で迎えられた。
その後日本はもちろんヨーロッパでもこのプログラムは熱狂的に受け入れられる。
ジャッジも人の子、同じようなプロばかりではなく、目を覚ませてくれるような斬新なものを見たいのだ。今期このプログラムはどの選手のSPよりも高いPCSを毎試合叩き出した。

このプログラムは2人の天才、ニコライ・モロゾフと高橋大輔の組み合わせでしか生まれ得なかったものであると思う。
ところで、競技にヒップホップを初めて取り入れるにあたり、なぜ『白鳥の湖』の音楽を使ったのか。あえてポピュラーすぎるほど有名なクラシックの曲を取り入れたのは、ジャッジに与える衝撃を和らげるためだったのではないだろうか。
世界初の斬新なプログラム、戦略家ニコライ・モロゾフのことだから十二分に勝算はあっただろうが、100%の確信は持てなかった。有名なクラシックというワンクッションを置くことにより、頭が固いと思われたジャッジにマイナスの評価を受ける可能性を避けたのではないかと思う。だが、ジャッジは思われていたより遥かに頭が柔らかだったのだ。

今後、フィギュアスケートでヒップホップと言えば高橋大輔のSwan Lakeだと語り継がれるだろう。
だが人間とは贅沢なもので、どんなすごいものも見慣れてしまえばそれほどの驚異だとは思えなくなってしまう。再度ヒップホップに挑戦するならば、これ以上のプログラムを用意せざるを得ない。
2人は来シーズンはどんなプログラムであっと言わせてくれるのだろう。



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