下手の横好き日記

色々な趣味や興味に関する雑記を書いていきます。
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歌野晶午『白い家の殺人』

2008-09-12 23:59:59 | 
急に思い出して、読んでいなかった「家」3部作の2作目を読んでみました。


一之瀬徹は、家庭教師をしている猪狩静香の冬休み特訓のために、
猪狩家の別荘で一癖も二癖もある猪狩家の面々と共に年末を過ごすことになった。
その最初の夜、ドンという大きな音が静香の部屋から聞こえる。
駆けつけた部屋は中から鍵がかかっており、ドアを壊して入ってみると、
そこには天井から逆さづりにされた静香の絞殺死体が・・・
絶対に警察には届けず、犯人を自分達で見つけて制裁するという猪狩家の当主。
徹は、友人の信濃譲二を探偵として呼び寄せることにするが、
信濃が到着する前に、第2の殺人が!!


何というか、「新本格!」と言ってた頃の熱い空気が、というより、
そこに乗り遅れまいと必死に頑張っている歌野氏の気概が感じられます。
魅力的な謎、驚天動地のトリック、意外な動機・・・
そういう「本格」ミステリの要素をたっぷり詰め込んだ感じ。

ただ、謎解きが終わっても「そうだったのか~」とは思うけれど、
やられた!という感覚は少なかったかな~。
ある程度、色々予想しながら読んでいたからだというのがあるのですが。

そこがもどかしいのですよ。
色々考える思考を停めてしまうぐらいの物語の力とか、
こちらの思考をあざわらうようなトリックとか、
そのどちらもが、ここには欠けているように思われるから。

こんなに熱意を持って書かれた作品なのに何故なのかな~・・・と考えてみました。
それはやっぱり、これがトリックのための物語に終始しているからだ、
というのが私の思いついた答え。

私は歌野氏の文体はもとより、そのストーリーテリングぶりも大好きです。
(そんなに胸張って言えるほど歌野作品を読みきってるわけではないけど)
この作品はデビュー2作目だから、ミステリ作家・歌野晶午の創成期とも言えます。
まだ彼の特性が明らかになる前に基本形を踏襲しようとした結果が、
この少しぎこちない作品世界になってしまったのかな~とも思います。
ちょっと辛口の感想になってしまったけど、文字通り「本格」ではあります。
その後の歌野氏を知ってるから、違和感があるだけで。

さて、名探偵役の信濃譲二は、シリーズものなのにイマイチ人気がないですが(^^;
私はこの作品に出てくる信濃を見て、結構好きになりました。
トリックを解明する存在としてだけの探偵・信濃の、キャラクターとしての萌芽が、
そこここの表現に垣間見られる気がするからです。

信濃が探偵役を務める短編集があるみたいなので、
ぜひ読んでみたいと思います。