フランスの東のドイツ国境に近い、ロレーヌ地方。
かって、西ローマ帝国を滅ぼした「ゲルマン民族の大移動」の混乱期に、ゲルマンの一枝族「ロートリンゲン族」が定着して出来た土豪国が『ロレーヌ』地方です。
ちなみに、ロレーヌの東、ヴォージュ山脈とライン河に挟まれた国境の地方が『アルザス』。
ここは、「エルザス族」が住み着いた土地。
ラインを渡ると、アレマン族が住み着いた、現在の『アルマーニュ』。
フランス語で、ドイツを指します。
パリを発ち、TGVで東進する事330キロ。
途中、シャンパーニュ地方を抜け、ロレーヌに至る。
ロレーヌには、中心都市が二つ有る。
ナンシーとメッス。
元来ロレーヌは、鉄鋼の里だった。
戦後の「日本の鋼鉄産業」の躍進の犠牲となって、高炉が次々と廃炉された。
60年代から70年代、多くの失業者を出し、フランスの地場産業の失墜の象徴的地方とされる。
国道沿いには、廃棄された製鉄所と、ぼた山とが続く光景は、胸に迫る物が有る。
その後、韓国、台湾と新興勢力の台頭に、日本の製鉄産業も取って代わらて行った。
栄華盛衰。
その「ナンシー」から東へ向かうと、ヴォージュ山脈に入って行く。
標高1000メートル程の山地で、鹿や猪や熊が生息している。
当地のレストランでは、冬の間「鹿」のステーキや、「猪」の煮込みが、メニューをにぎわす。
その山間を縫って進む旧街道を行くと、バカラ村に出る。
鉄道の郊外線で、ナンシーから30分。
国鉄『バカラ』駅は、殆ど人気がない
車でくれば、村に入るとほぼ同時に、お土産用のクリスタルの店が並び、本社工場がある。
駅は、村はずれ。
街道筋だが、駐車スペースを広く取って、一段高くなった敷地への斜面は、芝生で奇麗な花壇の<BACCARA>の花文字が出迎えてくれる。
敷地は宏大。
かっての経営者の屋敷が「迎賓館」としてVIPの宿泊施設に使われている。
その前の広い広場を挟んだ正面に、工場の建屋が見える。
工場は19世紀の建屋が、そのまま使われている
工場は、何棟も広がって居り、夫々の作業工程毎に分かれる。
クリスタルの製造工程は、大きく分ければ二つ。
ホット・ワーク。
コールド・ワーク。
ホット・ワークは、文字通り<火>を使う「成形」行程。
有る建屋野中は、16の火口のある円形の『炉』が、轟々と響きを立てて、火が燃えており、職人達が、夫々ガラスに火を入れて、成形している。
工場内の炉は、大小数百有るが、24時間火が絶えない
溶かしたてのガラス素材は真っ赤
型の中に入れて吹いて成形する
やや温度が下がると、本来の色が
どこかで見た様なボトルも造られていた
不要部分を切り落とし、必要なパートを熱圧着する
吹いては形を整え、再度熱を加えてまた成形
壁には、使い込んだ<道具>がズラリ
工場の壁面には、職人達が造ったステンド・グラスをあしらった窓も有る。
ホット・ワークを終えると、半日かかって冷ます。
コンベアーに乗って、冷めた素材が出て来る。
そのうち、不整形のものや、瑕疵の有る物ははねられ、また最初の行程へ戻される。
不完全な物は砕いて、再度溶かして最初の原料として
再利用される
いよいよ、コールド・ワーク。
要するに、研磨。
砥石と水と布での作業。
研磨した各パートを組み付けて、巨大燭台の脚部が出来上がる
細かな部分の研磨は最新の注意を要する
見た事の有るボトルが、売る程出来上がって来た
この、バカラ村の本社工場には、小さなプライベート・ミュージアムも有る。
典型的19世紀風カットの白ワインのグラス
ディオールの香水瓶
そして、未だに用途がはっきり分からない一品も。
まさか「尿瓶」? それともデカンター?
この工場には、800名くらいの職人が働いている。
夫婦ともに、或は親子三代に渡って働いている人も多い。
フランスは、各工芸の分野で「特に秀でた」技術を持ったプロフェッショナルを認定する、資格がある。
<MEILLEUR OUVRIER DE FRANCE >
略してMOF。
「最優秀職人」と訳される事が多い。
指物師、金属細工士、料理人、レース編み職人、寄木細工士、チョコレート職人、パティシエなど、数百の業態に渡っている。
日本には『人間国宝』というタイトルが有る。
これはいわば、功なり名を遂げてから、受け取る「名誉称号」であり、終着駅である。
フランスのMOFは、一番脂の乗り切っている、働き盛りの職人の技能を賞するもので、「生きた」最高の職人芸の持ち主の勲章である。
当然、給与等に大きく反映する。
ここバカラ工場には、ホット、コールド夫々に数十名ずつの、現役MOFを抱えている。
村の経済は勿論『バカラ』で成り立って居り、村人達は「バカラ」は村そのものであり、バカラで働いている事を、誇りにしている。
バカラの最新作で、私が一番気に入った作品を、最後にご紹介します。
<モチーフ>と<白黒>と<透明不透明>を、互いに反転させた、対のグラス8脚のセット。
このセットは、欲しくなりました。。。。
かって、西ローマ帝国を滅ぼした「ゲルマン民族の大移動」の混乱期に、ゲルマンの一枝族「ロートリンゲン族」が定着して出来た土豪国が『ロレーヌ』地方です。
ちなみに、ロレーヌの東、ヴォージュ山脈とライン河に挟まれた国境の地方が『アルザス』。
ここは、「エルザス族」が住み着いた土地。
ラインを渡ると、アレマン族が住み着いた、現在の『アルマーニュ』。
フランス語で、ドイツを指します。
パリを発ち、TGVで東進する事330キロ。
途中、シャンパーニュ地方を抜け、ロレーヌに至る。
ロレーヌには、中心都市が二つ有る。
ナンシーとメッス。
元来ロレーヌは、鉄鋼の里だった。
戦後の「日本の鋼鉄産業」の躍進の犠牲となって、高炉が次々と廃炉された。
60年代から70年代、多くの失業者を出し、フランスの地場産業の失墜の象徴的地方とされる。
国道沿いには、廃棄された製鉄所と、ぼた山とが続く光景は、胸に迫る物が有る。
その後、韓国、台湾と新興勢力の台頭に、日本の製鉄産業も取って代わらて行った。
栄華盛衰。
その「ナンシー」から東へ向かうと、ヴォージュ山脈に入って行く。
標高1000メートル程の山地で、鹿や猪や熊が生息している。
当地のレストランでは、冬の間「鹿」のステーキや、「猪」の煮込みが、メニューをにぎわす。
その山間を縫って進む旧街道を行くと、バカラ村に出る。
鉄道の郊外線で、ナンシーから30分。
国鉄『バカラ』駅は、殆ど人気がない
車でくれば、村に入るとほぼ同時に、お土産用のクリスタルの店が並び、本社工場がある。
駅は、村はずれ。
街道筋だが、駐車スペースを広く取って、一段高くなった敷地への斜面は、芝生で奇麗な花壇の<BACCARA>の花文字が出迎えてくれる。
敷地は宏大。
かっての経営者の屋敷が「迎賓館」としてVIPの宿泊施設に使われている。
その前の広い広場を挟んだ正面に、工場の建屋が見える。
工場は19世紀の建屋が、そのまま使われている
工場は、何棟も広がって居り、夫々の作業工程毎に分かれる。
クリスタルの製造工程は、大きく分ければ二つ。
ホット・ワーク。
コールド・ワーク。
ホット・ワークは、文字通り<火>を使う「成形」行程。
有る建屋野中は、16の火口のある円形の『炉』が、轟々と響きを立てて、火が燃えており、職人達が、夫々ガラスに火を入れて、成形している。
工場内の炉は、大小数百有るが、24時間火が絶えない
溶かしたてのガラス素材は真っ赤
型の中に入れて吹いて成形する
やや温度が下がると、本来の色が
どこかで見た様なボトルも造られていた
不要部分を切り落とし、必要なパートを熱圧着する
吹いては形を整え、再度熱を加えてまた成形
壁には、使い込んだ<道具>がズラリ
工場の壁面には、職人達が造ったステンド・グラスをあしらった窓も有る。
ホット・ワークを終えると、半日かかって冷ます。
コンベアーに乗って、冷めた素材が出て来る。
そのうち、不整形のものや、瑕疵の有る物ははねられ、また最初の行程へ戻される。
不完全な物は砕いて、再度溶かして最初の原料として
再利用される
いよいよ、コールド・ワーク。
要するに、研磨。
砥石と水と布での作業。
研磨した各パートを組み付けて、巨大燭台の脚部が出来上がる
細かな部分の研磨は最新の注意を要する
見た事の有るボトルが、売る程出来上がって来た
この、バカラ村の本社工場には、小さなプライベート・ミュージアムも有る。
典型的19世紀風カットの白ワインのグラス
ディオールの香水瓶
そして、未だに用途がはっきり分からない一品も。
まさか「尿瓶」? それともデカンター?
この工場には、800名くらいの職人が働いている。
夫婦ともに、或は親子三代に渡って働いている人も多い。
フランスは、各工芸の分野で「特に秀でた」技術を持ったプロフェッショナルを認定する、資格がある。
<MEILLEUR OUVRIER DE FRANCE >
略してMOF。
「最優秀職人」と訳される事が多い。
指物師、金属細工士、料理人、レース編み職人、寄木細工士、チョコレート職人、パティシエなど、数百の業態に渡っている。
日本には『人間国宝』というタイトルが有る。
これはいわば、功なり名を遂げてから、受け取る「名誉称号」であり、終着駅である。
フランスのMOFは、一番脂の乗り切っている、働き盛りの職人の技能を賞するもので、「生きた」最高の職人芸の持ち主の勲章である。
当然、給与等に大きく反映する。
ここバカラ工場には、ホット、コールド夫々に数十名ずつの、現役MOFを抱えている。
村の経済は勿論『バカラ』で成り立って居り、村人達は「バカラ」は村そのものであり、バカラで働いている事を、誇りにしている。
バカラの最新作で、私が一番気に入った作品を、最後にご紹介します。
<モチーフ>と<白黒>と<透明不透明>を、互いに反転させた、対のグラス8脚のセット。
このセットは、欲しくなりました。。。。
地震も室内に関しては心配無用なほど余分なものは置かない買わない主義の私です。引越しのたびに目をつぶっていやというほど物は「処分」してきました。
唯一愛してやまないコレクションがガラスの香水瓶。なるべく小さく薄く美しいもの。なぜか惹かれて手放せません。
地震で一発で壊れそうですがいとおしく思ってます。
白黒モチ-フ八点セット。いいですね。。。。。はぁーーー。ため息がでます。
共に日々凹んでいますね(涙)
たまには、限りない透明な輝きに視線を集めていると、怒りと幻滅とを忘れて、無心になれる様な気がします。
本文の写真では、『XO』と『LOIUS XIII』とボトルを造っていますが、香水瓶も多くのブランドの物を造っていて、今さらながら「クリスタル」の勢力図に驚かされます。