『紙屋悦子の青春』という映画を見ました。
本当なら、最近はわざわざ映画館で映画を見に行こうという気はあまりないし、もし行くとして非日常的なスペクタクルを味わえる映画にすると思います。ぱっとした気晴らしのために。
ただ、この映画は原田知世が主演だということと、新聞やテレビで何度も宣伝を見て、彼女自身がこの映画についての思い入れを語っていたので、見に行くことにしました。
原田知世との映画での出会いは、8年前の『落下する夕方』を見てから。あっ、でも彼女のCDはその一年前から聴いていたか。
『落下する夕方』からもう8年も経っているなんてなんだか信じられない。この間、時代の雰囲気も自分もあまり変わっていないような気もする。
今回の映画の原田知世も、以前と変わっていない。
映画は、特攻に行く青年がその友達に、自分の好きな女性との見合い話を設定するというもの。画面は三つから四つほどしかない、とてもこじんまりとした映画で、ほとんどが登場人物たちがお膳を囲んで座って話をするシーンです。
この映画は戦争映画なのだろうか。戦争映画なのだけど、この映画のよさは、戦争を背景にしながらも、登場人物たちの人間関係の機微を上手く表現している点にあるのだと思います。戦争という特殊な状況下で表れる、人々の日常の自然な感情を上手く捉えているのだと思います。
だから、登場人物たちの一つ一つのセリフや感情表現に、観客は感情移入できるのじゃないでしょうか。
観ていて、本上まなみという人が演技が上手なのに少し驚きました。
あと、おそらく劇の上での登場人物たちの年齢と、演じている俳優たちの実年齢はとてもかけ離れていると思うのですが、にもかかわらずその違和感をまったく感じさせないことも後から考えて印象的でした。役者が話の中にピタッとおさまっているのです。
これは、役者たちの演技がみな達者であることと同時に、役者の人たちの個性とお話の中の人物たちの性格とが、信じられないくらいにぴったり重なったからなのだと思います。
映画が終っても立ち上がる観客の人はいなくて、劇場が明るくなるまでみんな席に座っていました。
涼風
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