自分の読んだ本や、聴いたオーディオブックや、観た映画や、聴いた音楽の感想を書いていると、それらを読書・鑑賞したときには強い印象をもたなくても、自分にとって心に残るような感想を書いてしまうことがあります。そういうときは、自分の意識の表面では多くのことを受け取ったとは思っていなくても、“書く”(キーボードを“打つ”)という作業をしているうちに、自分の内面が掘り下げられて、意識の表面では知らなかったようなことを意識の奥は対象から感じ取っていたのかもしれません。
だから、自分の接した情報については、印象に残っていなくても、なるべく感想を書くようにしています。
船井幸雄さんと神田昌典さんの対談『30年後』(ダントツ企業実践オーディオセミナー)を聴いたのは今年の4月ごろ。でも、なぜか今まで感想を書く気になれませんでした。すばらしい内容なのですが、何かテープを聴いていて違和感もあったのです。
船井幸雄さんの本は何冊か読んだことがありました。『経営のコツ』『船井幸雄の「人財塾」』『5年後』『本物時代の到来』『素晴らしい未来が見えてきた』などです。
これらの本は、船井さんの著書の中でも、比較的実践的な事柄をテーマにしていると思います。もちろん自己啓発ではあるのですが、現実の事柄に材料を取って話を展開しています。
それに比べると『30年後』は、かなり船井さんの“オカルト”的な知識を前提に議論が進められています。
船井さんの議論の趣旨は単純で、「これまでの経済活動はみんな自分の利益だけを考えて動いてきました。しかしこれからは自分以外のすべての人にとって利益になるように行動しなければ、物事は上手くいきませんよ」というものです。
船井さんが提唱する“本物”の技術というのも、「人間の体や環境にやさしい技術・食品でなければこれからは広まりません」という、とてもシンプルなものです。
そのように、「商品にしても、売り方にしても、誰にとっても利益になるものでなければだめです」というのが船井さんの主張です。
このような「誰にとっても利益になること」という命題を追求すると、「自分のことだけを考える」という“エゴ”の発想を生み出す「物質」「人間の肉体」という既存の考えを否定し、“見えないもの”を追求する方向へと進むことがあります。
このオーディオセミナーでは、船井さん自身がそのような一見“見えないもの”、常識では考えられないことをこれまで追求してきた軌跡が振り返られています。
それは例えば、既存の物理学を否定するような空中浮遊であったり、超能力であったり、前世をめぐり議論であったり、人類の歴史が転換した契機の話だったりします。
そのような船井さんの軌跡は、「誰にとっても利益になること」「博愛」というものに船井さんが目覚めたことと、もともと理系出身で探究心旺盛だったことが結びついて彼を導いてきたのだと思います。
ただ僕自身はこのテープを聴いていて、ここまで超自然的な話をする必要があるのかな?とも思いました。
前世があるかどうかは普通の人は分からないし、人類の歴史の起源も専門家以外の人には馴染みの無いことです。勉強熱心の人や専門家がそういうことを調査するのは分かるのですが、どう生きるべきかということは、そこまで専門的で超自然的な事柄に精通しなければならないことと結びついているのだろうか?という疑問も出ました。
もっともそれは僕自身の性格なのかもしれません。
船井さん自身は、かつては「ケンカの船井」と言われ、コンサルタントとして流通業界では競争相手からも恐れられていたそうです。しかし、ある事件をきっかけに、それまでの自分のやり方を反省させられ、自分のことだけを考えるのではなく、誰にとっても利益になることを考えなければならないと思い始めたということです。
そこから“エゴ”の発想を生み出す「物質」「肉体」の観念を超える超自然的なものへの探求が始まったのだと思います。
でも、なまけものの僕としては、そういう超自然的なことを知らなくても、「自分だけのことではなく、他人の気持ちも考えよう」と思うだけで、ただそれだけでいいんじゃない?と思ってしまいます。超自然的なことって、探求しなくても、信じていればそれで十分なことのようにも思ってしまうのです。
でも、船井さんの本が読まれた数を見ても、船井さんが現代の日本に及ぼした影響力は相当に大きく、船井さんの本がきっかけで博愛に目覚めた人も相当多いのかも知れません。ものすごくすばらしいことを成し遂げてきた人なのだと思います。
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