うさぎくん

小鳥の話、読書、カメラ、音楽、まち歩きなどが中心のブログです。

さがしもの

2019年02月20日 | 本と雑誌

角田光代 新潮文庫平成20年

角田光代をここで取り上げるのは2度目。人生ベストテンは3年ほど前に読んだが、かなり重苦しい作風ながら傑作だという印象を持った。

この「さがしもの」も先の「人生ベストテン」とほぼ同じころに書かれたようだが、正直なところ完成度はやや落ちるように思える。9作品すべてが本をテーマにしたものだが、自分が売った古本と旅先で再会したり、自分が気に入った本を、今の恋人も読んでいた(しかし、だれの何という本かについては語られていない)など、なんとなく不自然、あるいは説明不足な感じがして、どうも感情移入できないのだ。

ただ、タイで病に臥せっていたとき、宿に置かれていた片岡義男の本をみつけて、どんな男がこの本を置いて行ったのかという妄想にふける(「だれか」)、というお話には吹いた。。

マラリアにかかった主人公は、退屈しのぎにと旅行者が置いて行った本を読みふけり、その本を置いて行った旅行者のことを思う。

・・片岡義男がどうこうではなくて、なんで彼は片岡義男を選んだのだろう。読みやすそうだと思ったのか。開いているところをだれかほかの日本人旅行者に見られても恥ずかしくないと思ったのか。あるいは、昔別れた恋人が、片岡義男を好んで読んでいたことを思い出したのか。

彼女は、本の内容そっちのけで、この本を持ち込んだ男のことを妄想する。男が高校時代に愛読していた片岡義男だが、大人になって現実とのギャップに気づくようになると、本を読むこと自体をやめてしまう。やがて恋をして結婚を考えるがあえなく失恋、南の島へ旅に出ようとする。旅行代理店の帰り、本屋で再会した片岡義男の本を手にして、旅の道連れとする。。

片岡義男氏は今でも文筆家、写真家として活躍中かと思うが、この作品を見たらどう思われるだろうか。。なんとなく、青筋たてて怒り出すような方には思えない。。かすかに苦笑いする程度かな、という気もするが。

そのうち、イタリアかどこかを旅したら、この文庫本を泊まった宿屋に置いていこうかしら。後に手にした日本人はきっとこう思うだろう。「しかし・・なんで角田光代なんだろう。。なんか鬱屈した心を抱えて、傷心旅行の途中でこの本を置いて行ったのかな・・」

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