川上未映子 文芸春秋 (hontoによる電子書籍)
ちょっと季節が過ぎてしまったけど、物語の設定とだいたい同じ季節、学校の夏休みが始まっった暑い頃に読み始めた。きっかけは例の村上春樹氏へのインタビュー(「みみずくー」である。
いいですね。
リズム感というか、すこしぬめるような文体は、普通なら読みにくく感じるものだが、不思議と心にとけこんでくる。
川上氏は「みみずくー」で自分はフェミニストだと公言して、文学界における女性作家の立場についてかなり苦言を呈しておられた(この本を手にするきっかけでもあった)が、まあたしかにこれは、男性が書くのは難しいんじゃないかな。
ではあるが、誰にでも自分の中に男性と女性はいるものだし、たまにそういうところを刺激されると気持ちいいという感じはあるんじゃないかと思う。ので、読み進んでいくとだんだん自分とこの女性が融合してきて、変身願望がかなえられたような気持になれる。。テレビ等で見かける、女性姿で活躍している学者さんもこんな気持ちを味わっているのかもしれない。。
子供時代は仲が良かったが、いまは大人になり、ふだん違う環境で暮らしている(同性である)姉、難しい年頃の姪、それぞれの微妙な距離感、という設定も、すごく面白い。当然こういう経験はないが、どこか懐かしい、自分も経験した世界のように思えてくる。親族同士の関係というのは、男女関係なくどこかに共通するものあるのだろう。
これと線対称なアプローチとして、男同士の世界、兄と弟と甥という組み合わせで物語を作ることもできると思う。ただし、よほどうまく書かないと、ごく平凡なホームドラマになってしまい、あまり印象に残らないだろう。そう考えると、本作はやはり女性性に負うところが多いことはまちがいない。
まあそれにしても夏が間に合ってよかった。このまま涼しくなっちゃうのものねえ。。